見出し画像

エッセイ 蒲鉾職人

 蒲鉾の歌、「恵みの旅人」 の撮影で、早朝から萩の 三好蒲鉾 さんにおじゃまして、手づくりの製造過程をバッチリ カメラにおさめた。

 これを編集すると、来月の「山口でうまれた歌」が出来上がるのである。

 私は関西出身なので、蒲鉾とか竹輪という練り物は、庶民の保存食の代表で、うどんや煮物や焼き飯にも刻んでいれるという、どちらかと言えばありがたみに欠ける食材だったのだが、

 山口に来て、360° ……もとい、180° 考え方が変わった。

 なにしろ、原材料の魚が新鮮でうま過ぎるのである。

 こちらでは、蒲鉾は高級品。
 刺身醤油で、生でいただく。

 保存食という概念は、あまりない。
 場合によっては、生の鮮魚よりも手がこんでいる分、値打ちがあるのだ。

 板のまま焼きあげる「焼き抜き蒲鉾」は、萩が発祥とのこと。

 プリプリにふくれた蒲鉾の表面に、冷めるに従いシワが寄る。
 これを「チリメンじわ」と呼ぶ。
 なんとも風情があるではないか。

 さて、一仕事終えて、蒲鉾工房から歩いて3分の、海水浴場のそばの海が見えるレストランに入った。

 そらあんた、都会生まれの地方生活、これだけはとうてい、やめられまへんで、ほんまにもう……。

【恵みの旅人】

作詩 久保研二
作曲・うた 落合さとこ

 海の恵みの 白い夢
 波に泡立つ 恋の色
 頑固一徹 父親ゆずり
 板に付いたる 蒲鉾職人

 練って練られて 光る肌
 みんなの笑顔に会いたくて
 綺麗な箱に 勢ぞろい
 遠くの町まで 旅をする

 お祝いごとの その席で、
 花嫁さんの すぐそばで
 見守る写真に 寄り添って
 花見や祭りの お弁当

 ひとくち食べて 言いました
 誰も彼もが 言いました
 なんて優しい 味でしょう
 まるでお刺身 たべるよう

 ふたくち食べて 言いました
 顔を見合わせ 言いました
 世の中いかに 変わろうと
 美味しいものは 美味しいね
 美味しいものは 美味しいね

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?