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たけぞう

 同窓会……私は落ちこぼれですから、比較的大人しくしていました。

 それでも高等部の時の芝川せんせが、わざわざ私のテーブルに来てくださり、

「お〜クボ〜」

「あっせんせ、お久しぶりです、お元気ですか?」

 すると、

「いつも《たけぞう》が、お世話になってるそうで……いやぁ……ありがとうな……ホンマにありがとう……」

「お世話なんかなんもしてませんよ、たまに山口に遊びに来たり、米を送ったったりするくらいです」

「この前な、たまたまキャンパスで《たけぞう》にバッタリ会うたんやわ、アイツいま神学部に通ってるんやてな?   牧師になるために……それで、1学年上のクボさんにえらいお世話になってるゆうから、クボってあのクボか?   野球部やのうてサッカーの方やな? ゆうたらそうですとゆうからな、次にクボの顔を見たらひとこと礼を言いたいと、ずっと思ってたんや、いやぁ今日クボに会えて良かったわ」

「せんせ、いったいせんせはどんなけエエ人なんですか?」

 その後しばらくすると、今度はあまり昔も今も付き合いがない同窓の友人が寄ってきて、

「ちょっとちょっとクボくん。 いつも《たけぞう》がめっちゃ気にかけてもろうて、お世話になってるそうで、ありがとう」

「なんもお世話なんかしてへんてや」

「《たけぞう》とは俺、教会がいっしょやってん」

「縁があって、なんかこんど甲陽園のええとこに引っ越ししたみたいやなぁ?」

 そのやりとりを聞いていた、またほかの友人が、

「《たけぞう》……ゆうたら、1年下の《たけぞう》やろ? サッカー部とちゃうやろ?  なんで付き合いがあるねん?」

「……わからん……なんでやろ?  忘れた。 もしかしたら元は弁論大会かな? ……山口でやった父親の偲ぶ会にも、太田と北島と川崎せんせと《たけぞう》と、4人で来てくれたんやで、福住せんせは昔から山口におられるから、関学系が5人も揃ってん、感動的やったわ」

「ホンマか?」

 また終盤……「クボぉ、たけぞう》が……」

 高等部、学年単位の同窓会で《たけぞう》の名のもとに、私には「とても良い人間」「いい子ちゃん」のレッテルが張りつけられました。めでたい、めでたい、実に都合が良い。

 いやぁ……それにしても《たけぞう》……恐るべし存在感です。

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