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正直は人の宝

 ウクライナ旅客機の墜落で、イランは当初否定していましたが3日後、

「ウチが人為的なミスで攻撃してもた」

 と、一転して旅客機を撃墜したと認めた声明を発表しました。アメリカ機と誤認したとも……。

 亡くなった乗客は、イラン国籍の82人、カナダ国籍57人、その他ウクライナ、スウェーデン、アフガニスタン、ドイツ、イギリス国籍等で、180人近くになる大惨事です。自国であるイラン国籍の被害者が一番多いのも複雑なとこです。

 どうやら最高指導者ハメネイ師が事実を公表するよう指示したというやないですか?
 良心の呵責か宗教的理由か政治的か……それはわかりませんが、いずれにせよ、私はびっくらこきました!

 そこで頭をよぎったのが、33年前に起きたテロ事件、大韓航空爆破事件です。その指導者との歴然たる差です。

 若い人は知らんでしょうが、1987年11月29日、日本国の偽造パスポートを持った北朝鮮の2人の工作員が機内に時限爆弾を仕掛け、乗客乗員115名全員が死亡しました。
 乗客のほとんどは中東に出稼ぎに行った帰りの、なんの罪もない一般の韓国人でした。ホンマにかわいそうな話です。

 犯人と思われた2人はバーレーンで身柄を拘束されますが、用意していたタバコに仕込んだカプセルで服毒自殺をはかります。ところがそのうちの1人は一命をとりとめたのです。

 それが蜂谷真由美という日本人になりすましていた金賢姫(キムヒョンヒ)でした。

 さて、本題。

 現在も北朝鮮は事件への関与を否定していて、さらにいつものように開きなおり、この事件は韓国による自作自演の捏造だと主張しているのです。ここがイランとの決定的な違いでしょう。

 指揮した黒幕は、当時No.2だった故 金正日で、動機や目的は南朝鮮(韓国)に対する嫉妬から発したソウルオリンピックの妨害でした。ほとんど子供やヤンキーの発想です。

 大韓航空機が原因不明の空中分解をすれば韓国が国際社会で信頼を失うにちがいない。それに便乗して、翌年にソウルで行われるオリンピックを、同盟国だった東側社会主義諸国といっしょに仲良くボイコットしよう! という稚拙なものでした。だからオリンピックのエントリー締切の寸前の、このタイミングで実行したのです。

 結果としては、日本国の偽造パスポートで足がつきました。
 金賢姫がハンガリーに北朝鮮パスポートで入国し、そこから日本の偽造パスポートで出国したので、ハンガリー当局はすぐに、「これは北朝鮮のしわざに違いない」と判断し、その場で親分だったソ連へチンコロ(報告・タレコミ)したのでした。

 結果、本来身内であったはずの東側社会主義国全体からも、あまりにアホで卑劣なテロ国家だとあざけ笑われ、それを機にそれまでソウルオリンピックへの参加を曖昧にしていたソ連や中国が心機一転参加を表明し、それに従い他の東欧諸国も次々と参加を決めました。
 結局参加しなかった……出来なかったのは北朝鮮だけ。

 金正日の目論見は最悪のシナリオを描いてしまい、その後「アメリカや韓国と戦争の瀬戸際だ」と騒いで、中ソ両国に有事の際の支援を要請しましたが、けんもほろろに塩対応され、さらに翌年、金日成が中ソ両国を訪問した時にその場で

「これ以上オリンピックの妨害工作をするんやったら、北朝鮮が1989年に開催する世界青年学生祭典に参加したれへんからな」

 とかまされ、キャン! となり、国際社会での四面楚歌状態になってしまったのでした。

「正直は人の宝」とは良く言ったことばです。さらに、天罰覿面、身から出た錆、因果応報、人を呪わば穴二つ、などもサービスで付け加えておきましょう。

 そして最後に、昔の日本人が愛した広沢虎造の浪曲のセリフ、

♪「バカは〜死ななきゃ〜あぁぁ〜治ら〜な〜い〜……」

 どんな理由があっても、人を殺してはいけません。アメリカもイランも日本もね。

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