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エッセイ ジャップ!

 世の中には、たしかに発言の自由がある。

 ところが、それがひとたび槍となって自分に向けられれば、その被害者感情が一気に盛り上がる。

 戦時中、非人間的な日本人……軍人が少なからず存在したことは、日本人の私でも容易に想像がつく。

 いかに日本人の気質が温厚であっても、組織の中には、アホで自意識過剰で、立場を誇示して愚かな自己主張をする人間が、必ず混入する。残念ながら、それもまた日本人なのである。

 そもそも戦争というものは、それ自体が非人間的なものだけに、個々の人間性をも非人間的になるように煽ってしかるべきものなのかもしれない。

 だから、日本軍の捕虜になった英国人の恨みは、わからないでもない。だから最近、そういう書物を読んでみた。

 それでも、「原爆投下は当然だ!」というのは、根本的に違う。レベル……いや、次元が異なる。

 非戦闘員に対する無差別爆撃は、明らかなるハーグ条約違反である。

 さらに、英国を含める白人国家が、それまでさんざん、アジアやアフリカの有色人にやらかしたことは、いったいどう言い訳できるのか?

 決して擁護するつもりはないが、ヒトラーだけを非難して、本当にいいのか?

 まあ、そんなことを考えながら、今日、ドーナツとコーヒーを楽しもうとしたら、店の看板に、「ジャップ!」と、書いてあるやないか!

 言うまでもなく、「ジャップ」とは、日本人に対する、侮蔑の呼称である。

「ミスタードーナツ、そらアカンやろ?」
「いくら温厚なワシでも暴れるで」

「なんやて? ジャピオカ? 余計にわからんがな! 怒るで、しかし」。

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