不動産流通とAI

不動産分野でのAI活用となると「物件価格の推定」がまず想起されます。一番有名なのは、アメリカのzillow社のzestimateでしょうか。興味深いのはアメリカは成約データを始めとして様々な不動産情報が集約されているので、余程すごいアルゴリズムとかではないと違いが出ないところ、zestimateという機能を上手にマーケティングすることでzillow社はアメリカで最も集客出来るポータルサイトになったことです。

https://www.mlit.go.jp:8088/totikensangyo/const/content/001475998.pdf

イギリスのrightmoveも確か「物件価格の推定」機能を上手にマーケティングしてイギリスNO.1のポータルサイトになっていた気がします。

そうした「物件価格の推定」を更に発展させて、アメリカのopendoorなどは「物件の即時買い取り」とかもしています。彼らのエンジニアブログを見ると、色々な機械学習アルゴリズムを適用していることが分かります。ただ、opendoorが必ずしも利益が出ていない点からも、「物件価格の推定」の精度には限界があるような印象です。

一番の問題点は、推定されるべき物件価格はx年後の価格であることだと思います。そのx年間の様々な不確実性を考慮すると、今この瞬間に手に入ったすべての情報を駆使しても、x年後の物件価格は結局は良く分からないとなるのでしょう(opendoorは確か平均半年ぐらいで転売しています)。
恐らく、そのときに重要なのは、x年後に購入する人は、売り主の購入プロセスを再体験する点にあると思われます。そうした意味でなんとなく今AIが物件価格がこれぐらいと言っているというような根拠ではなくて、「子どもの学校」「通勤」「その他公共財」「物件のスペック」などなどが価格を形成することがx年後に購入する人にとっても納得出来るものであるべきなのでしょうし、そのような購入体験を今出来るようにするべきなのでしょう。

そのときのAI活用のイメージは契約書レビューのようになる気がします。それは「〇〇に関する説明を受けていない」「△△は潜在的なリスク」「□□はフェイク画像の可能性がある」などでしょうか。
買い手側がそうしたAIを活用して説明を求めるような不動産流通市場が生まれ得るのかは良く分かりませんが、今の重要事項説明書に記載されている内容の多くは事前に分かるようにはなる気はします。

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