人生は短いか、四月の初めに考える - 清明前夜篇 (裏窓から)

人生は短いか、四月の初めに考える
- 清明前夜篇 (裏窓から)

人生は短いか

七十一歳で坂本龍一さんが亡くなった

「芸術は長く、人生は短し」という言葉を遺している

人が集まれば「早いなあ」と惜しみ、歳の早さを振り返りその姿を偲ぶ

長生きの時代であるゆえに、生活習慣病や癌に侵されなければ「すぐに死ぬ気がしない」と言葉にして 自らに生きる勇気を向けている

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漠然と「長生きをしたい」と考える反面には 死んでしまうことの惜しさがある

怖いかというと自問し そうでもないと答えつつ 安楽の道を選択できない恐怖が付きまとう

『死なずに生き続けることは 果たして大切なことなのか』という命題じみたことが頭に浮かぶ

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「死んでもあの世で」「新しく生まれ変わって」という概念は 今の世では希薄になっているのだろうが、人々の心の中には清く息づいている夢でもあるかもしれない

『短い』と 明確に表現してみるものの その奥には収まり切らない複雑な思いが存在し、幸せであった日々、苦難な日々、努力の数々、勇気に溢れた日々、失意に打たれた日々が走馬灯のように甦る

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時間には密度がある

それらを『短い』とひとことで言い切って 簡単に済む命題ではないのだ

『短い』と納得してストンと消えてしまいたい

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捨てる

🔖嘘つきの自分を遠くに吐き捨てる

自分の人生をそう簡単には捨てられない、と考えたことがある

人を騙したりするような事はしなかったが 見栄を張ったりしたことはあったな と苦笑もする

捨てることは難しいのだ

諦める

🔖散る花や約束があるこのあとに
🔖いつか死ぬいや死にとうないと桜一句

元々 意志が弱いし 勝負にも弱いので 受験を例外するが、負けるとわかっていて勝負には挑まないことが多かった

ゲームや博打には手を出さない

だが

『実らぬ恋にも手を出さない』というのは当てはまらなかったか

受験と恋で 人生をしくじってきた人間なのだ

ひとり

🔖花筏話せぬドラマを載せてゆく

心を開けていても どうしても打ち明けられないことがある

ある人が
『本当に大事で掛け替えのない友人や知り合いには 重大で深刻なことは 打ち明けられないものだ』
と話してくれたことがあって、これほど大きく頷いたことは 長い人生の上で一度もなかった

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自分の弱さを感じるなら、思い切って他人に告白なぞできぬくらいに徹底してひとりになってみなくてはならないと思う。 そして、その時に心の底からわき上がってくるのは、他人に甘えたい気持ちではなくて、どんなお涙頂戴とも無縁な、ひとりで生きてゆこうとする静かな勇気だと思う。

〔歌人・文明評論家:村上一郎〕

座右に置いている言葉を思い出した

つまり 誰にも打ち明けられないことがこの世にはある
それはじっと噛み締めて自分と向き合うことなのだ

近回り

メモ用紙の隅に『近回り』と書き残してある

人生は短くも長くもない、近回りも遠回りもない
それが今を生きる感想である

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自分のためのウォーキングであれば サボって近回りをする人はいないだろう
誰かに命じられ 嫌々に片付けねばならない課題があれば 近回りを考えることはあろう

近回りを思いつくことはニンゲンの知恵だし 知性の結集でもあるから 悪いと責めてばかりもおれない、だが 言葉のイメージには「狡さ」が伴う

近回りをしたいと思うことが何度もある
成功を勝ち得るための近回りか

京大に三人の息子を入れた知人の言葉も甦る

近回りして 先手を打って勉強をして合格しても それから何をするかや、そこからが肝心なんや

失意泰然

人生を近回りして終了せさる友だちもいた
今のところ 私には 近回りも遠回りもズルもサボりもない

無事澄然 得意澹然 失意泰然 でありたい