転 - 2002年1月 下旬号

昔に書いた『一月』を掘り起こす

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転 02/01/29

▼手を着かずに後ろ向きに宙返りするのをBACK転と呼ぶが果たしてこれで字は合っているだろうか。ジャニーズ系の若いタレントさんなら難なくやってのけるが、おじさんには相当に難しい。前に回るのを空中回転と呼んで、これなら若い頃だったら出来たけど、運動音痴の私は後転は出来なかった。

▼森末慎二さんがあるTV番組で若い子を指導していたのを見たことがある。とても後ろにひょい!と回れそうにはない子だったが、結局は見事に技を身につける。森末さんが言う。

▼「怖がって眼をつむったら、手を着くところが見えない。しっかり眼を開けて、しっかりと地面を見なさい。」

▼なるほど。怖いので「えいっ!」と後ろに振り返った瞬間には眼を閉じている。手をついて回る前に眼を閉じてしまわない訓練をなさっている。恐怖感を取り除き目を開けたままで後ろに転がってしっかりと「地面を見ろ!」と言うのだ。

▼地面はすぐそこにあり、決して移動しない。つまりこれほど安定したものに手を着くことなど、考えてみたら、なんて簡単なことなんだろう。

▼眼からうろこのような話は他にもあって、自転車に2時間で乗れるように子供を訓練する方法というのを知人に教わったことがある。地面にべったりが足を着くほどサドルを下げて、ペダルを取り去って、両足で自由に歩き、後に足で蹴って走り回らせるだけだと言う。バランスを掴んだ子はペダルが着いた自転車も難なく、昔からのように乗り始めると言うから不思議だ。しかしこれも考えれば当然の理屈だ。

▼起承転結の「転」を迎えた。さあ、どこを見つめるのか。地に足をしっかり着けて、眼を大きく開けねばならない。

【銀マド:塵埃秘帖】

2002年1月29日 (火曜日) 【随想帖 秘】