丸山千枚田経由で入之波温泉


5月4日(金曜日)祝日
天気:はれ


ルート:
紀和町の丸山千枚田経由で入之波温泉、高見峠走行距離:300キロ余程度(8時から夕方5時まで)


京都に出かける母娘を7時40分の特急に乗せた後、荷物をバイクに積んで即出発。R42経由で荷坂峠方向に行く。1日には雨に降られて退散してきただけに今日の晴れは格別に嬉しい。南に向かうバイクや南から帰ってくる荷物満載のバイクを見ると浮き浮きだった。


今日の目標は入之波(しおのは)温泉だ。上北山村方面から攻めよう…と決めて家を出た。荷坂峠では、水平線がやや霞んでいるけど、雰囲気はまずまずで、十津川温泉にも寄りたいなあ…なんて浮気心も出てる。あれこれ考えながら尾鷲まで来て、矢ノ川峠の手前から山に入ろう考えていたのにガソリンスタンドが無い。ああ、コスモのカードを持ってくればよかったな…というわけで、上北山村方面に曲がる交差点を通り過ぎてもまだ現れない日石or出光スタンドを求めて七里御浜海岸沿いを走ってゆくこととなった。


熊野市の七里御浜のこいのぼりが見える堤防で持ってきたアンドナッツを食べて小休止をした。紀和町に行ってみようかな…と思って、阿田波というところから風伝峠を目指す。蜜柑の花が咲いている。とてもいい香りが漂う。好きな匂いだなー。ぽつんぽつんと家が建っている以外は殆んどが蜜柑の畑である。しっとりとした集落で古い家が目立つ。そしてどの家もが胸ほどの高さまでに積んだ石垣で周りを囲っている。その石垣が苔蒸している。大水が出るわけでもなかろうし、山賊が襲って来るわけでもなかろうに、何故だろうか。そこで、風伝トンネルの手前で野菜や果実を売っている露天ふうのお店の可愛い子ちゃんに質問した。けど、わからんと言う。もう少し年配のじいさんなどが良かったかな。不明のまま風伝峠の旧道に曲がった。


この峠は風がいつも激しいため「風伝峠」と名がついたという立札が茶屋の前にあった。それほど風もきつくないのに「風列なため」ってあった。まだ信じられないな。この峠は雲海でも有名らしく「風伝の朝霧」と呼ぶらしい。高さは257メートルだが、結構な味わいがある峠だった。「風伝餅」も旨いらしいというのは、通り過ぎてから知ったので、また行く時の宿題とする。峠を越えて「通り峠」方面を目指す。風伝峠から丸山に入る道は、トンネルの上を横切って、想像以上の急斜面の山の景色を見下ろしながら尾根を伝っている。狭いのだが雰囲気が良く快感だ。寂しさもほどよい。道の真ん中に苔が生えている。これが新緑に萌えているから驚く。「丸山千枚田」の道しるべが出ていたので急転回して村落に寄ってみる。


丸山の千枚田は、聞いて想像していたよりも綺麗だった。ちょうど水が降りてきたばかりの様子で、高い所(上の方)では田植えが始まっている。もしも田んぼが100枚あってそこでお米が10俵獲れたしよう。1俵あたり1万5千円で売れたとしても15万円。企業の部長の年収が1千5百万円としたら100倍になる。ここに田んぼがどれだけあるのかまでは未調査だけど、この区域だけで売り上げる総生産高を大雑把に計算しても、はっきり言って小額にしかならない。国内は一部の優遇はあるにしても均一税制だし、介護保険、年金など現金が移動するシステムは同条件であることを考えると、この地に住んでいるメリットは、ここで生まれたから…くらいしか見当たらない。人が減るのも当然で、国政への猜疑が高まるばかりである。議員の定数是正と言う声もあるが、果たしてそのような論理をこの地に適用したら国家が基盤から崩れるような気がしてならない。プロ野球に巨人軍だけがあっても成り立たないのと同じ事であるが、危機が来ないと認識されないのが情けない。


強者、多数賛成者を尊重してきた結果が今の社会の歪みだろうと私は思う。民主主義は、少数派を入れて議論をすることに意義があるのであって、多数決という論理は単なる採決のひとつの手段だったはずだ。多数派が少数派を理解し相互に成長しなければいけない。何なら多数派だけがひとつの国家をつくってみた時の事を想像したら自明である。


さて、千枚田を後にして、山の中を北へと急ぐ。どうやら、このあたりで一揆があったらしい。大阪の陣のころだという。所々に山城のの跡などが残る。その頃にあの石垣が出来たのかもしれない。400年と言う風月を経ていたのならもっとじっくり見て来るべきだった。やっぱし、また来よう。月末頃は田植え祭りをしてるかもしれない。


峠の尾根を快走する時にふと感じたのは、なるほど風が強いかな…って事だった。千枚田の展望台から谷を見下ろした時もこうして峰を走っているときも、北にある峰の方角から風が吹いている。何と言うか…揺るぎない重さを風に感じる。風が通る谷なんだろうか。ナウシカの映画を思い出した。


入之波温泉を目指す。ちょっと内緒にしておこうかなと思いたくなるような温泉だった。単純炭酸泉で神経痛・肝臓病・動脈硬化症に効果があるらしい。飲用は胃腸病に良いらしい。


R169から大迫ダムを渡って山の中に入ってゆき、入之波という在所で湯元「山鳩湯」に入った。連休の真ん中で車も多いけど、湯舟の中はそれほど混雑していなかった。温泉宿には休憩施設もあり、山小屋風の建物で、ぼろい感じ。


玄関から急な階段を下りて行き、途中に休憩室がある脇を通ってまだ階段を下りるとお風呂がある。露天風呂もあってダム湖の景色が見えたような…気がする。


湯量は豊富なようで、沸きっぱなしのお湯が打たせ湯のように湯舟に落ちており、赤みを帯びたお湯がタオルを真っ赤に染めてしまった。湯舟の中に段差がありそうだが、全く見えないので恐る恐る足を突っ込んでいく。結構、ぬるくて私好みだった。


帰りは、東吉野村へ抜ける峠(足之郷越)を通って高見峠。