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みんなと、芸劇に、行きたい

この1年間、いや、2年間、この思いだけで生きてきました。

1年前の2月末、突然の定期演奏会中止。
慣れ親しんだ教室でその決定をみんなに伝えました。あの景色ははっきりと憶えています。あまりに突然のことだったため、直接顔を見て伝えることすら叶わない仲間たちもいました。
まだ20年も生きていませんが、あれほど悔しくて、やるせない思いをした経験はなかったし、これからもまずないと思っています。
そう思えるのは、私にとって、高校ワグネルは、高校3年間そのものだったからに違いありません。

だからこそ、悔し涙で終わらせたくない。
自分たちの手で、失われた演奏会を取り戻しに行きたい。

この1年間、たくさん悩んで、たくさん迷いました。
もちろん、嬉しいこともたくさんありました。
会えなくても、一緒に悩んでくれた幹部。
忙しい中、参加を決めてくれたたくさんの仲間たち。
この場を借りて、いつもありがとう。

今年3月、待ちに待った初練習。
みんなと顔を合わせて、音楽を奏でる。指揮棒を振り下ろしたら、音が出る。これがどんなに幸せなことか。存分に噛みしめながらのリハーサルでした。

突然ですが、このオーケストラを運営する代は現在大学2年生です。みんな、自分の夢に向かって、歩み始めています。それが、何を意味するか。

これが、ラストチャンスなのです。

このオーケストラは、8月17日をもって、解散となります。
もし、仮にこの演奏会が中止になったら、次はないということです。

私たちのオーケストラには、様々なバックグラウンドを持った人がいます。全員がこれからも音楽を、オーケストラを続けるわけではありません。
私を音楽の世界にいざない、育ててくれた高校ワグネルを、みんなに「楽しかった」と胸を張って終えてほしい。
1つ下の代なんて、3年次にほとんどオケができずに引退となってしまった。この演奏会は私たちだけでなく、2年間を共に過ごした大切な後輩たちにとっても、引退公演なのです。
2つ下の代は、一度も定期演奏会を経験していないまま、3年生になりました。高校ワグネルの音楽を、心と身体で体験してほしい。
先輩たちや、新しい仲間もこのオーケストラに参加してくれています。たくさんの方の力を借りて、このオーケストラに参加してくれたすべての人の心に残り続ける演奏体験をつくりたい。
これらは全部私のエゴでしかありませんが、この演奏会を行うことこそが正指揮者としてできる最大の恩返しになると考えています。

芸術劇場の指揮台からみんなを眺めたときに、私ががむしゃらに追い求めてきた「青春の答え」が見つかるはずだと、信じています。

だから、みんなと、芸劇に、行きたい。

お付き合いいただき、ありがとうございました。

正指揮者 久保田誠吾

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