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「反ワクチンさん 死亡診断書の偽造に手を出してしまう」は本当に偽造か?

Marre氏の1月11日のTweetが話題になっています

大学病院の正式な「死体検案書」の死因にはっきりと「ファイザー2回目接種」と書いてある‼️それなのに国は認めない。いよいよ新たな薬害裁判が始まる。これは「勝てる」可能性が高い戦いになるだろう。

というTweetと死体検案書がUPされている。このTweetに対して「これは偽造だ!」「通報する!」などのリプライであふれています。果たしてこの死体検案書に問題はあるのでしょうか?

上記togetterにてまとめられていますが、その中で取り上げている捏造だとする医師のコメントがほぼ間違っています。

結論

この死体検案書が偽造であるという指摘は全て的外れであり、偽造という根拠はありません。

死体検案書ではなく死亡診断書だという意見

死亡診断書と死体検案書のどちらで書くかですが、救急搬送された患者に対して蘇生を行います。
一度も心拍が再開しなかった場合、病院前で死亡していた(死体が搬送されてきた)という判断になります。その際は死体検案書を記載することになります。一度でも心拍再開した場合は死亡診断書となります(生きていたという判断になる)。この点は多くの医師が誤解してます。

男女に丸がついていない点がおかしいという意見

男女に丸がついていないので、この書類は発行されたものではないという意見が多く見られます。これも誤解です。
男・女とありますが、その左側に1と2という番号が振られています。そしてその1、2のどちらかに丸をつける形式です。その番号をわからないように黒枠で隠しているのです。

Twitterで提示されてい文書は黒枠で隠されている部分にその番号と丸がついていると推察されます。

存在しない病名だという指摘について

急性肺動脈血栓塞栓症」という病名が存在しないとか、ICDに準拠していないなどという意見がありますが、死亡診断書/死体検案書に記載する傷病名はICDに準拠しなければならないというルールはありません。そのため急性肺動脈血栓塞栓症でも全く問題ありません。
ただ、死亡の原因の3段目に「Pfeizer社製新型コロナワクチン接種(2回目)」と記載されてますが、あまり会社名までは書かないかな?とは思います。ファイザーのスペルも間違ってます。ただ、これをもって捏造であるという根拠にはなりません。「下肢深部静脈血栓」の原因として挙げられるのがワクチン接種であると診断した医師が確信したのでしょう。
2段目と3段目をまとめて「ワクチン接種後下肢深部静脈血栓」と書いた方が良かったかもしれません。

発症から死亡までが「短時間」とは記載しない?

短時間」という記載はしないという意見がありますが、急死した場合はこういう記載になります。
5日(推定)」というところで推定と書かないという意見もありますが、そもそも病院前に死亡していた場合は死亡時刻も推定で書きますので全く問題ありません。

診断書の書類自体が変ではないか?

死亡診断書/死体検案書にあるはずの注釈がないという指摘があります。同書類の様式は国が提示していますが、国からこれを使えと書類が送られてくるわけではありません。国が示した様式に従って各病院が印刷業社に依頼して書類を作成していたように思います。以前は手書きだったので複写式の書類が大量に発注されてました。様式を整えれば問題ないと思います。注釈がないのは省略したためかもしれません。
 現在では電子カルテ上で記載できるようになってますので、各電子カルテベンダーが様式を作成しているのではないでしょうか?
枠の高さが違うという指摘もありますが、これも同様の理由です。
これらをもって捏造という根拠にはなりません。

死亡診断書は手書きが主流?

そんなことは全くありません。今の時代は電子カルテ上で作成して印刷し署名して提出します。全く的外れな意見です。

死体検案書ということは心肺蘇生をしなかったのか?

大学病院に搬送されたのに、心肺蘇生を施されなかったのでしょうか。もう死後硬直が起こっていたのでしょうか?大学病院の救命救急センターに搬送されたら、わずかな可能性にかけて全力で心肺蘇生をしませんか?それなのに死亡診断書でなく、死体検案書ということは、何もしなかったのでしょうか?

Twitterより

死体検案書と死亡診断書についての知識が低いためにこういった誤解をうんでいます。救急搬送された患者がすでに死亡していた場合でも心肺蘇生はよほどのことがないかぎり行います。それでも心拍再開しない場合に死体検案書として記載します。

死亡した場所は大学病院ではないのか?

自宅で亡くなったので、施設の名称は斜線を引いているのですね。すでに亡くなった患者さんを大学病院に救急搬送しますか?先程指摘した点を重複しますが、心肺蘇生が行われ、大学病院で亡くなったという流れが普通と思います。その場合、施設の名称は●●大学病院となるかと。

Twitterより

これも多くの医師が間違って理解している点です。心肺蘇生が行われても心拍再開が一度もなければ、死亡した場所は院外(おそらく自宅)となります。

結局この診断書は本物か?

厳密にいうと本物か偽造かということはこの画像だけでは分かりません。しかし偽造であるという根拠はありません。
私の印象ではこの診断書は以下の点で本物だと思います。

死体検案書で記載、かつ死亡したところの施設名称に斜線が引いてある点

これは自宅で死亡したという書類であり完璧です。ここは多くの医師が間違えて記載している(病院で死亡したと記載してしまう)点です。

発症から死亡までの時間:短時間/推定などと記載している点

これもかなり死亡診断書/死体検案書に精通した医師が記載したものと推察します。偽造ではこんなことは書かない(思い付かない)と思います。

以上、死亡診断書/死体検案書偽造疑惑に対して考察させていただきました。一点この書類でいまいち感があるのはファイザーの綴り間違いとその傷病名です。それ以外には問題ありませんし、その点がいまいちだからといって偽造だと決めつけることはできません。

以後追記

ツイッターで捏造と断定している医師を名乗っているアカウントに対して、「なぜあなたはこの検案書が捏造と断定するのですか」と質問すると
⒈ どうしてワクチンが原因だと断定したのか
⒉ どうやって肺動脈血栓塞栓症を診断したのか?

などなど診断についての言いがかりばかりです。
そもそもこの死体検案書だけでは担当された医師がどのような検査を行い、傷病名を記載したかはわかりません。その点をいつまでも争点にしたがるのですが、診断方法に疑念があってもそれは捏造であるという根拠にはなりません。診断学の議論は無意味です。しかしどうしてもワクチンが原因と認めたくないためにネチネチと絡んでくる輩ばかりです。そしてこの患者に対して解剖が行われたのかどうかも我々にはわからないのですから。
最後には誹謗中傷になってきてます。医師であると公言しているアカウントにも関わらず品性のない発信をする輩と議論しても意味がないため、今後は即ブロックすることとしました。

Marre氏は法的手続きを開始したそうです

解剖では肺動脈血栓塞栓症はわからないという意見

医師と名乗る人物から「解剖してもPE(肺血栓塞栓症)はわからない」などという書き込み/反論がありました。
いやいや、さすがに解剖したらわかるでしょうよ・・・
この症例で解剖が行われたかどうかが限られた情報からはわからないので、自分としてはその点強調してませんでしたけど。

これは急性肺血栓塞栓症に係る死亡事例の分析(2017年8月)というPDFで日本医療安全調査機構が分析しているPDFの一部です。
急性肺血栓塞栓症で死亡した8例の報告が掲載されていますが、3例は死亡後の解剖によって確認されています。

急性肺血栓塞栓症に係る死亡事例の分析(2017年8月)

https://www.medsafe.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=50

発症から死亡までの期間が「短時間」や「推定」がダメだと言っている意見

これも、死亡診断書/死体検案書を書いた経験が浅いと思われる医師からの意見ですが、全く的外れです。
死体検案書なので正確に死亡した時間は分かりようもありません。そのため(頃)とか(推定)などと記載するのです。受傷(発症)から死亡までの期間も正確には分かりかねますので、急死の場合は「短時間」と記載するしかないのです。

「実践 外傷初療学―生死を分ける最初の1時間 救命救急センター:石原 晋著」では以下のように例を挙げて解説されてます。

実践 外傷初療学:石原 晋 著


間違いのある書類は受理されないはずだという意見

診断名についておかしいとか、ファイザーの綴りが間違っていることから、本件の検案書が役所に受理されるわけがない。だから捏造だという意見があります。
遺族は死亡届と病院が発行した死亡診断書/死体検案書を添えて役所に提出します。その際に役所の受付で病院/医師が発行した書類に対して名前の間違いや生年月日の間違い等はチェックしているようです(実際に訂正を要求されたことはあります)。しかし、医師が診断した傷病名に注文をつけることは経験上一度もありませんし考えられません。役所に医師が常駐してチェックするなど聞いたこともありません。スペルミスがあるから受理されているはずがないというのは現状を知らない方々の意見です。

死亡診断書/死体検案書の間違いは多い

業務上、救急搬送死亡例に対する死亡診断書/死体検案書を、全例事後にチェックしています。記載間違いで多いのは

①死体検案書で書くべきところを死亡診断書で記載している。またはその逆
②死亡した時刻を死亡確認時刻で記載している
③院外で死亡しているにもかかわらず、死亡した場所を病院にしている
④異状死報告をしていない


などです。ただ、すでに発行されて遺族に渡していますので、事後に訂正することはまずありません。
以前はこのような間違いが頻発していましたので、その後院内で講義等を繰り返し改善されてきました。しかしいまだにポツポツと間違いは発生しています。

ただ、このような間違いがあっても名前の間違いなど以外で役所から突き返されたことはありません。また、多くの医師や看護師が勘違いして理解しているため、それが間違いであるとすら認識されていません。これらが問題になるのは訴訟案件になった場合でしょう。

以下その2です


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