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一本のネジ

ネジというものは、普段あまり気にしないものだ。しかし、ひとたびネジがないと大変なことになる。
腹話術教室の翌日、ノブちゃんをお稽古しようとした。瞬間、異変に気がついた。
口がおかしい?
あっ!
えっ?
うそ。嫌だ・・。
ネジが一本なくなっていた。
急いでスーツケースの中を探した。すべてのものを出した。
ないない・・。
冷や汗をかいた。
気持ちを落ち着けるために、深呼吸。
はー。
ふー。
ひー。
ノブちゃんを包んでいた布をみた。
やはりなかった。
カルチャーセンターへ電話しようとしたが、営業時間が終わっていた。急いでメールを送る。
すぐに返信が来た。探してくれるとのこと。
なくなったネジがないと、ノブちゃんの口が・・・。入院して元気になったばかりなのに。
確かどこかに、ネジがあったと思い、クリップが入っている缶を見る。
あった。大きさが合うようだ。
早速確認。
なんとぴったりあった。
やった!
父がよく、ネジは大事だから捨てるなと言っていた。そのおかげで、偶然ぴったり合うネジがあった。捨てなくてよかった。
ノブちゃん、とりあえず大丈夫。
ほっとした。
スマホをみるとカルチャーセンターからメールが来ていた。
写真付きだった。
写真の感じから、ネジが大きいと感じた。でも見つかったのだから、行ってみようと二日後に行った。
やはり違っていた。
でももしやと思い、家へ持ち帰った。
やはりもしやということはなかった。
後悔しても仕方ない。
すぐに、郵便でネジ一本を郵送する準備をした。
ネジなので、封筒が出っ張りがある。
念のため、郵便局に行った。大丈夫とのこと。
確認を怠ったせいで、ネジはどこかに吹き飛んでしまった。違和感を感じたのに・・。
ノブちゃんも、もう私のところ来て28年。ネジも劣化していたのかもしれない。
たかがネジ一本、いや大事なネジ一本。
ノブちゃんにとって非常に重要なネジ一本だ。
数日後、実家に行った。ネジについて父に相談した。すぐに探してくれて、ぴったりのネジを何本かくれた。
長年、職人をやっていた父は、やはりすごい。ネジぐらいと言われるかも・・。

ノブちゃん&わがし

ノブちゃん:もうネジなんて書かないっでよ。
わがし:だって。
ノブちゃん:骨にしといてよ。
わがし:骨?
ノブちゃん:ノブちゃんが生きていないみたいじゃない?
わがし:そんなことないわ。
ノブちゃん:でもよかった。
わがし:うん。
ノブちゃん:これからは、いつも以上に気をつけて。
わがし:はーい。ネジいっぱいあるから。
ノブちゃん:もう・・。











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