人を感動させる音楽には2種類ある話
コータローまかりとおる!という漫画がありましてね。はちゃめちゃな高校の中で空手がすごい主人公がいろんなトラブルを解決したり、空手大会で勝ち上がっていくというストーリー。
そう書くとスポ根とかヒーローものっぽく見えるけど全然そんなことなくて下らないエロ話は多いし長いし、1つのストーリーがワンピース並に長いのでだれるし、ボクも最終巻の59巻までよく読んだなと感心する。
続編の柔道編や女流忍者物のLというのがあるんだけど、基本路線は同じなので途中で読まなくなった。
そんなコータローなんだけど、本編最後の方(36巻以降)で突如ヘビメタバンドの話になる。ヘビメタ好きのボクとしてはこのエピソードが大好きなんだけど、その中でこんな言葉が出てくる。
「人を感動させる音楽には2つある。1つは人の心を鋭くえぐるもの、もう1つは人の心を優しく包み込んでくれるもの」
正確な言葉は忘れたけど、こんな感じだったと思う。
要は1つは「ぐさっ」と人の心に入ってくるもので、もうひとつは全身を温かく包み込んでくれるものということ。
映画で言うと前者がサイコホラー映画で、後者がロマンス映画?違う?
ボクはヘビメタとかさだまさしとか好きなアーティストは多々あれど、神と崇めるのがシンセサイザー音楽のヴァンゲリス。彼だけは別格。
昔レンタルレコード屋で(もはや死語だね。レンタルCDすら見かけなくなったものね)ジャケ借りしたのがヴァンゲリスの「天国と地獄」というアルバム。
A面とB面に1曲ずつの2曲しか入っていないアルバムで、1曲が20分前後あるという「クラシックですか?」という構成。
そのA面、ラストで今までの騒々しい雰囲気が一転して静かなピアノソロになるんだけど、そこから徐々にストリングスが重なってきて、まるで無重力の宇宙に漂っている自分の体を温かい何かが優しく包み込んでくれるような感覚に陥る。
そのアルバムを聞いたのは高校2年の時で、ちょうど初めて付き合った女性と別れた直後だったもので、音楽で初めてこれでもかというほど泣いた。
いやー、泣いた泣いた。後から後から涙が出てくるの。
音楽ってこんなに力を持っているのかと驚かされたアルバムだった。
それ以来、ヴァンゲリスを神と崇めるボクの人生は始まった。
彼の音楽って、まるでメロディが意志を持っているかのように動く。そしてそれを支える和音であったり、サブメロディあったりがいちいち温かい。
でももう1つの「ぐさっと突き刺さる」タイプの曲もあるんだよね。「Suffocation」とか。この曲は今聞いても、体の中でいろんなものがぐるぐるしちゃう。
今はストリーミングサービスで気軽に聞けるヴァンゲリスだけど、当時は絶版になっているレコードやCDばかりで、土日になれば難波に行って中古レコード屋を漁ったものです。
そして、そんな中で見つけた衝撃のアルバムが「動物の黙示録(L'Apocalypse des Animaux)」
そのアルバムの6曲目に収録されている「世界の創造(Création du Monde)」という10分ほどの曲があるんだけど、この曲を初めて聞いた時「あぁ、もう死んでもいいな・・・」とマジで思ったのを今でも覚えてる。高校3年の時だったかな。
若い時ってあまり死に対して執着がないことあるよね。今この年で初めてこの曲を聞いてもそこまで思わないと思う。まだ死にたくないからね・・・。
この音楽こそ求めていたもの、この曲聞いたらもう人生に未練ないわ。
あの時は真剣にそう思ったんだよね。
Gメジャーで始まる分厚いシンセサウンドから始まって、一瞬にしてヴァンゲリスワールドな温かい世界が脳内に広がる。
そして広い海の上をひとり漂うような浮遊感。
人も動物も悩みも欲もなにもない、ただ浮遊しているだけの感覚。
ボクは毎日家で昼寝をする時この曲をかけてるけど、この曲がかかった瞬間本当に1cmほど体が浮いているんじゃないかと錯覚するほどの浮遊感を今でも味わう。
その気分はまさしく「かもめのジョナサン」
あの小説って最初から最後まで不思議な浮遊感があるよね。
数年前リチャード・バック自身の手によって続編というか完結編が出版されたけど、あの小説は「飛行機乗りの話」とバック自身が言ってる。
「イリュージョン」と似た気分になるのはそういうことなんだろうね。
ジョナサンもイリュージョンも時々読み返したくなるのは、あの独特な浮遊感を味わいたいからなのかもしれない。
今はアップルでもアマゾンでもspotifyでもgoogleでもストリーミングサービスでこのアルバム、この曲を聞けるので興味ある人はぜひ一度。
この曲はまぁ優しく包み込み過ぎてボクは「死んでもいいかな」と思わせるほどの曲だったんだけどね。
なお、もし天国と地獄Part1を聞くなら、最後のピアノソロまで我慢して聞いてくださいw
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