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A警部補 証人尋問再現(統合版)

A警部補は、島田さんの取調べを担当したほか、四ノ宮教授、清水准教授といった有識者の聴取を担当し、捜査幹部による殺菌概念の考案に最も寄与した捜査員です。訴状では、島田さんへの取調べの違法性について独立項目で取り扱うなど、原告側としては事件の捏造に対する帰責性は捜査幹部と比肩するものと捉えてきました。
この統合版は、被告東京都、原告による各主尋問をベースに、原告主尋問、被告国反対尋問、被告東京都再主尋問、裁判所補充尋問を統合して、論点ごとに整理したものです。
各尋問及び証言は、当事務所の弁護士のメモをベースにしているため、一部再現に不十分な点がある可能性があることをご了承ください。


1. 導入

<被告東京都主尋問>
陳述書(乙10)訂正箇所はありますか?
→P3イのア。A社(注:同社からの要望により匿名化しています)からの聴取の際に、「原告会社の噴霧乾燥器の図面を見せながら」とあるのは、正しくは「原告会社の噴霧乾燥器ではなく一般的な噴霧乾燥器の図面を見せながら」です。まだ特定の会社へ捜査していることは明かしていなかったので。

<原告主尋問>
本件の捜査で、各捜査員の作成した捜査メモは、部内での共有前に、捜査幹部の決裁を受けていたましたか?
→はい。係長(M警部)や管理官(W警視)の確認をとったあとで配布していた。

具体的に誰の決裁を受けていましたか?
→決裁は受けていない。係長や管理官に渡した後に、他の捜査官に共有していた。

本日の出廷にあたり、捜査メモに目を通してきましたか?
→はい。ある程度ですが。


2.捜査の端緒、及び初期的な聴取

(1) 端緒

<原告代理人 主尋問>
大川原化工機の捜査が開始された当初から捜査を担当していましたか?
→はい。

事件の端緒は、2017年3月に、公安部の捜査員が、CISTECの貿易講習会で輸出管理に関する講習を受けたことですね? 
→はい。

講習の後、4月から5月にかけて数回にわたり、公安部の捜査員が、CISTECを訪問して、噴霧乾燥機の規制要件について話を聞いたことがありましたか? 
→はい。

あなたやT警部補もCISTECに聴取に行きましたか? 
→はい。

当初CISTECは、噴霧乾燥器内部を滅菌・殺菌する手法について、蒸気や化学薬品による滅菌・殺菌のみを挙げ、「空焚きによる滅菌殺菌」については言及していましたか? 
→(言及はしていないが)滅菌殺菌の方法を限定していたことはない。

空焚きにより滅菌・殺菌することができるのではないか、と最初に言い出したのは誰ですか?
→ユーザー。

当初CISTECの方は、滅菌・殺菌のうち、滅菌については定義があるが、殺菌については定義がなく曖昧な概念だということを言っていましたか? 
→記憶にない。

甲160(藤井回答書)1頁「(2)について」の部分を示します。
CISTEC藤井さんはこの裁判で「殺菌に関しては省令制定当時から明確な解釈が示されておらず、曖昧な概念のままであった」と述べています。CISTECを訪問した当時も言っていませんでしたか?
→藤井さんは「殺菌」の定義は明確な定義はないと言っていた。ただ、方法を限定するということは言っていなかった。

公安部は、捜査の対象として、数あるメーカーの中から大川原化工機を選びましたね?
→はい。

警視庁は、経産省から、大川原化工機の不正輸出を捜査してほしいといった要請を受けたことはありましたか?
→いいえ。

(2) ユーザー、メーカーからの聴取

<被告東京都主尋問>
証人は、ユーザー、メーカー何社くらいから聴取しましたか?
→10社ぐらい。

聴取の結果、何が分かりましたか?
→噴霧乾燥器は内部に熱風を送ることで殺菌できる、熱風は内部に行き渡る。ヒーターで殺菌できると認識した。噴霧乾燥器は構造装置上内部を殺菌出来る装置であると分かった。

<原告主尋問>
①メーカーからの聴取(藤崎電機)

捜査を進めるにあたり、公安部から経産省に対し、噴霧乾燥器の輸出許可に関する実績について問合せをしましたか?
→しました。

経産省からは、輸出許可実績は藤崎電機について1件あるだけである、と回答がありましたか?
→はい。

その問合せは、警視庁が経産省と打合せを始めた2017年10月よりも前でしたか?
→詳しい時期は思い出せない。

公安部は2017年6月に藤崎電機に行って、許可申請をした経緯を聴取していますが、それよりも前ですか? 経産省の情報があって、藤崎に行ったのでしょうか?
→そのはず。

乙8の19(藤崎電機捜査メモ)を示します。藤崎電機が許可申請を行った経緯について2017年6月23日に聴取したメモです。(経産省への問合せは)この聴取の日よりも前ですか?
→ほぼ同じ時期。

ということは、経産省から藤崎電機の1件しか輸出許可申請の実績がないとの回答を得て、それで、藤崎電機の聴取を行うことになった、という流れでしょうか? 
→藤崎電機が許可を受けているという経産省の情報があって聴取に行った。

乙10(A警部補陳述書)1頁最終行から2頁を示します。あなたは陳述書で、藤崎電機から「空運転すれば機器内部を殺菌できるため経産大臣の許可を受けて輸出している」と聴取したと書いていますが、間違いないですか?
→はい。 

ここでいう「殺菌」とはどのような意味ですか?
→芽胞を形成しない一般的な細菌を殺すこと。特定の細菌を全て殺すこと。

乙8の19(藤崎電機メモ)を示します。捜査メモの4ア「滅菌殺菌について」の項目。第1段落「殺菌の概念が曖昧。加熱すればある程度殺菌はできるため、一応該当とした方がいいと判断した」と記載されていますね?
→はい。

藤崎電機の言う「ある程度殺菌ができる」とあなたの言う「内部からすべての細菌を死滅させる」と同じ意味ですか?
→いいえ。意味は違うと思う。藤崎としてもどこまでできれば殺菌かはっきりと分かっていなかった。藤崎電機は100度が出るので一般的な細菌は死ぬと思っていたとのこと。

第2段落「殺菌の概念が曖昧だったため、可能性という表現を用いた」と記載されていますね? 
→はい。

第3段落「殺菌の概念がそもそも曖昧であるほか、殺菌の方法についても当時調べたが明確な規定がなかった」とありますね?
→はい。

2頁目のアの最後の段落「熱風が出るから熱殺菌できるというシンプルな解釈で該当と判断している」とありますね? 
→はい。

乙8の23を示します。藤崎電機から2017年12月6日に聴取した捜査メモです。「熱風の温度によっては殺菌と捉えられます。ただ殺菌の定義が曖昧なので、弊社としては殺菌ができる可能性があると判断した」とありますね? 
→はい。

これらが藤崎電機から聴取された内容です。あなたの陳述書(乙10)の「空運転すれば、機器内部を殺菌できるため経産大臣の許可を受けて輸出している」という表現は、藤崎電機から聴取した内容を正しく要約したものといえますか?
→はい。

「殺菌概念が曖昧なので熱風が出る以上殺菌できる可能性があると判断した」という供述を、「空運転すれば機器内部を殺菌できる」と整理しても問題ないというのが、捜査官としてのあなたの考え方ということですね?
→違う。藤崎電機の考える言葉の意味と自分の考える言葉の意味も違う。

そうすると日本では、藤崎電機を除く全てのメーカーが規制要件に該当しないとして輸出を行っていて、唯一の藤崎電機にしても、概念が曖昧だから該当の可能性があるとして許可を得て輸出した例が1件あっただけ、そういう状況だったということですね?
→いいえ、藤崎は、経産省から「殺菌できるなら許可申請を」と言われてちゃんと許可申請していた。

②ユーザーからの聴取
大川原化工機の噴霧乾燥機のユーザーへの聴取の結果、実際に洗浄工程を経ずにいきなり熱風を送り込んで内部の殺菌を行っているというユーザーはいましたか?
→いいえ。

(2) 有識者からの聴取

<被告東京都主尋問>
大学教授への聴取はなぜ行ったですか?
→条文が意味する内容や殺菌に対する意見、見解について知りたかった。

乙3(運用通達の文言)を示します。四ノ宮教授からはハの殺菌について何か聞きましたか?
→運用通達に記載されている内容が噴霧乾燥機に準用されると聞いた。

他は?
→経産省の貨物等省令に列挙されている細菌は全て毒性が強いから該当する。1種類でも殺菌できれば該当する、と聞いた。

乙8の33(四ノ宮教授捜査メモ11/15)2枚目を示します。4・⑵の一番下の「千葉大の教授も同じ見解である」というのは四ノ宮教授の発言ですか?→これは私の認識です。千葉大学の清水教授も同じ見解であったので、自分のメモとして注意書きをした。

捜査メモに注意書きを書くこともありますか?
→ある。

供述調書に注意書きを書くこともある?
→ある。

メモは聴取した内容を網羅的に記載していますか?
→要点のみ。

清水准教授からは何を聴取しましたか?
→省令のうち、特定の菌を全て殺して感染能力を失わせることが殺菌と聴取した。

清水准教授から洗浄しないで空焚きすることは聴取しましたか?
→噴霧乾燥器で粉体が何層かになってこびりついても100度程度であれば殺せると聴取した。

浦島教授からは何を聴取しましたか?
→同じく、経産省発出の省令のうち特定の菌を殺すのが殺菌と聴取した。

<原告主尋問>
丙A128(清水准教授聴取結果報告書)を示します。2017年11月2日と11月22日に清水准教授から聴取した内容について11月24日にあなた作成の報告書です。6頁〜7頁にかけての「(6)」に、殺菌の解釈について長い記載がありますが、捜査メモにはこれに対応する記載がありません。陳述書によれば、四ノ宮教授と同見解であったためメモへの記載を省略したに過ぎず、実際にはこのような内容を聴取していたということですか?  
→はい。

乙8の33(四ノ宮11/15メモ)を示します。(2)殺菌の定義のところに、「この(2)の内容は千葉大の教授も同じ見解である。」と書かれている。あなたが同じ内容を聴取していたというのはこのことですか?
→メモへの記載は省略しただけ。

丙A128(四ノ宮教授捜査メモ)6頁を示します。「(2)殺菌の定義」に書かれている内容と合致するのは、11行目〜13行目「殺菌は明確な定義はありませんが、これは、細菌によって人体に害を与える菌数が異なるため、一律に1000分の1等と数で定義することが難しいからです。」という部分だけです。そのほかの文章は、四ノ宮教授のメモに記載がないのですがどこから持ってきたのですか?
→捜査メモには記載していないが、自分用のノートに記載していた。ノートに従って記載した。

あなたの陳述書にはそのようなことは記載したとは書かれていないが、実際にはノートを参照して記載したということか。
→そうだ。

<被告東京都再主尋問> 丙A128、乙8の32(2)を示す。滅菌または殺菌について記載の返答を清水教授はしたが、メモには要点のみを書いているということか。 →はい。

乙8の34(清水11/22メモ)を示します。むしろ、清水准教授からこの日聴取した内容を見てみると、大腸菌は経口感染する菌であって曝露しても人体への実害は発生しないと書いてあります。曝露によって感染するのは省令に網羅されている細菌の中でも炭疽菌とペスト菌だけだとある。この記載からすると、清水准教授の見解は、省令の列挙された細菌のどれでも1種類でも死滅できれば殺菌できるものと解してよいとの見解とはやや異なるのでは?
→意味がわからない。

ロの要件として平均粒子径10マイクロメートル以下の粉体を製造できる噴霧乾燥機のみが規制対象となっているが、その趣旨は理解しているか?
→粉体となった細菌を口から吸い込んで肺に入ると危険だから

危険な経気道感染を来たす装置を規制している以上、省令に列挙された細菌の中で炭疽菌とペスト菌以外を死滅できても意味がないのでは?
→それとこれとは違うと思う。

丙A127号証を示します。2017年11月15日に四ノ宮教授から聴取した内容としてあなたが作成した報告書です。5頁11行目に「以上のことから、ハの解釈は、機器を分解しないで、製造した省令2条の2第1項第2号記載の病原性微生物を殺して、その感染能力を失わせること」との法解釈が展開されているが、四ノ宮教授は、微生物学の科学者であって、法律家ではないですよね?
→はい。

四ノ宮教授自ら解釈論を展開したのですか?
→私から条文等を示して確認してもらったもの。

あなたは四ノ宮教授にAG原文を見せたうえで聴取を行いましたか?
→いつかは分からないが見せた。

甲3号証(AGの規制文)を示します。2頁目のテクニカルノートの囲み。四ノ宮教授がいうには、AG原文の「through the chemical agents with a germicidal effect」の訳が抜け落ちていると指摘したとあるが、事実ですか?
→いいえ。

AGの定義文を見れば抜け落ちていることは明らかではないですか?
→化学物質に限定する合理的な理由はないと言った。化学物質は滅菌殺菌の方法の例示だと説明を受けた。

乙8号証の38(2017年12月8日四ノ宮メモ)を示します。「(2)芽胞形成菌のみを規制対象とすることについて」と題して、「経済産業省が芽胞形成菌のみを規制対象とすることについて、私は合理的な理由にはならないと思う。」。この面談に先立って、経済産業省から公安部に対して、芽胞形成菌を死滅できる性能を証明しないと規制該当といえないという指摘がなされたのではないですか? 
→経産省は芽胞形成菌だけでなく大腸菌等についても規制の対象であるとの考え方であった。

ではなぜ、このような聴取がなされているのですか?
→経産省の中には、芽胞形成菌のみを対象とすべきと言う人もいた。そのため捜査の幅を広げて、このような聴取を行った。

<被告東京都再主尋問>
経産省の職員から芽胞形成菌のみを対象とすべきということを聴取したことはあありますか?
→そういうような見解をしている人もいるようなので、という程度。

この日の面談は、規制対象とすべき細菌が芽胞形成菌に限定されないという見解を四ノ宮教授から取得するために行ったものですね?
→記憶にない。

丙A142聴取結果報告書を示します。この捜査メモに対応する聴取結果報告書です。4頁結論部分に、結論として・・・と判断します。と書かれています。この日の面談は、この部分の獲得ではないですか?
→分からない。

この日の聴取をするように指示したのは誰ですか?
→M警部かもしれないがはっきりしない。

3.最低温箇所に関する聴取 

<被告東京都主尋問>
A社(注:同社からの要望により匿名化しています)から最低温の箇所を聴取してますが、なぜA社から聴取したのですか?
→ネットで調べたところ噴霧乾燥器を設計製造していたから。

RL5型噴霧乾燥器の最低温箇所について、A社は何と言っていましたか?
→装置末端の排風機のダクト サイクロン下部 バグフィルタの下部が最低温であると聴取した。末端には加熱する装置がないし、温風は上に上がるからという説明でした。

聴取の際、図面は何を見せましたか?
→はっきり覚えていないが一般的なパンフレットかネットで拾ったものかを見せた。

L8i型噴霧乾燥器に関する聴取の際は何を見せましたか?
→原告会社のL8iの図面を見せた。温度を上げる装置はないため、排風口とサイクロンの下部の2箇所を測定すれば最低温を特定できると聴取した。聴取の際、L8iの図面を提示した。

原告会社から指摘があるような箇所(測定口)についてA社(注:同社からの要望により匿名化しています)から指摘ありましたか?
→ない。

<左陪席裁判官補充尋問>
平成30年のA社からの聴取で一般的な噴霧乾燥器の図面を見せましたか?
→はい。
そのときに温度の低くなる箇所を指摘したか。
→していない。
令和元年は原告会社の噴霧乾燥器の図面(L8i)を見せましたか?
→見せた。
RL5について再度そのものの図面を見せたことはありますか?
→見せていません。

あなた自身は測定口は認識していましたか?
→詳しくは知らない。起訴後に原告から指摘があって知った。

取調べで、原告会社の従業員、元従業員は何と言っていましたか?
→内部を殺菌する方法として熱風を入れることが考えられる。一般的な細菌なので100度ぐらいの熱風を入れれば殺菌できる。原告会社の製品は該当する。原告会社の管理は杜撰。ということを言っていた。

<原告主尋問>
警視庁は、2018年10月に捜索差押を行い、その後12月には、大川原化工機の役職員に対する任意の取調べを開始しましたね? 
→はい。

任意の取調を開始してまもなく、複数の従業員から、大川原化工機の噴霧乾燥器の内部には、温度の上がりづらい箇所が存在する旨の指摘がありましたか?
→知らない。

従業員のFさん、Iさんは、測定口にあたる場所は袋小路になっていて熱風が流れないため温度が上がりづらいと言っていませんでしたか?
→分からない。

捜査メモが作成されていると思われますが、共有されていませんか?
→知らない。

大川原化工機の従業員からの指摘があった時点では、警視庁は、すでにRL5の温度実験を実施していましたか? 
→はい。

警視庁が実施した温度実験では、測定口の温度は測っていませんね? 
→はい。

なぜ、測定口の温度を測っていなかったのですか? 
→気づかなかったから。

複数の大川原従業員から指摘を受け、再実験をしようとか、実機を見るだけ見てみよういうことにはなりませんでしたか? 
→ならなかった。

A社(注:同社からの要望により匿名化しています)は大川原化工機の噴霧乾燥器を取り扱っている業者ではないですね?
→はい。

大川原化工機の従業員の方が、自社の噴霧乾燥機の構造についてはよく知っているのではないですか?
→A社も詳しい。

L8iの最低温となる箇所についてA社から聴取を行ったのは、あなたの陳述書によると令和元年7月5日ですね? 
→いきなり言われても思い出せない。

あなたの陳述書にそう書いてあるが。
→それならそうだと思う。

あなたは、この時の聴取結果について同日付で聴取結果報告書を作成していますね?
→はい。

出廷にあたりその内容を確認しましたか?
→はい。

この聴取の際ですが、測定口の温度が上がりづらいという大川原化工機の従業員からの指摘について、A社に確認しましたか? 
→していない。

なぜ確認しなかったのですか?
→最低温ということと温度が上がりづらいというのは別だと。

<右陪席裁判官補充尋問>
大川原化工機の中で3名逮捕されたが、3名の役割はどう認識していましたか?
→社長は会社のトップで全てを指示。相嶋専務は島田さんの上司でナンバーツーの権限。島田さんは輸出部門のトップ。

記録を見ると、相嶋さんは専門知識を有しているように思いますが、警察もそう認識していましたか?
→はい。

捜査機関としては、客観的要件を満たすことを前提に本件の噴霧乾燥器が主観的要件を認識していたか、共謀があったかの取調を行っていましたか?
→はい。

役職員からの聴取は、主観面(故意・共謀)を明らかにするために実施したということでいいですか?
→はい。

ハの要件は、主観は、その定義に該当することを認識していないといけないと思いますが、警察も同じ考えですか?
→はい。

相嶋さんを取り調べていた捜査員は誰ですか?
→M。

お互いに担当している被疑者の供述は情報交換していましたか?
→はい。

その中で、あなたの言っていた殺菌の定義、特定の菌の全ての感染能力をなくす、というのは、あなたの中で、何度が必要ですか?
→100度。

故意を明らかにするには、この機械のすべての部分について100度にならなければいけない、それを認識していないと故意がない、ということでよいいですか?
→はい。

今回の機械の中で、一番温度が低くなるところについてA社(注:同社からの要望により匿名化しています)から聴取したとのことですが、相嶋さんには聞かなかったのですか? 他の捜査官から聞いていないですか?
→具体的に指摘はなかったはず。あれば当時話題になっていたはず。

相嶋さんは、逮捕前の内部メールで、測定口と言っていたが、それは取調では出なかったですか?
→出なかったと思う。測定口などは捜査官のなかでは問題になっていない。

もう1点。A社(注:同社からの要望により匿名化しています)からの聴取の際、Li8の構造について、サイクロン下部と製品容器の接合部分にダンパーが標準装備されていると聴取しましたか?
→記憶なし。

あなたの聴取結果報告書に書いてありますが?
→よく分からない。

4.島田さんへの取調べ

(1) 供述調書の取り方

<被告東京都主尋問>
島田氏への供述調書は、なぜ白紙に印字したのですか?
→内容が多岐に亘るし、島田さんの供述が客観的事実と異なるところがたくさんあったので、その方法が分かりやすいと思った。

調書内容の修正はどのように進めましたか?
→交互に見ながら、指摘があったところに私が印を付けて、摺り合わせていく形で進めた。

修正が終わった後はどうしましたか?
→供述調書の書式に転記した。

修正事項を反映した上で転記したのですか?
→はい。完全に直した内容にして供述調書の書式に添付していた。

その後、転記したものを再度島田さんに確認させましたか?
→はい。

島田さんは確認していましたか?
→はい。1枚1枚じっくり。

「読み聞かせ」は行いましたか?
→白紙の時点で。パソコンの画面上で読み聞かせを行い、その後印字した。

供述調書に変更を全て反映させていましたか?
→はい。

島田氏が署名・指印を拒否したことはありましたか?
→ない。

あなたは島田さんが納得していると認識していましたか?
→はい。

それはなぜですか?
→島田さんが「はい、これで大丈夫です」というようなことを言っていたから。

ペンの使用はなぜ断ったのですか?
→自傷防止のために、普段からむやみに渡さないようにしている。

机の上にペンを置くことは?
→自分に近いところ。

<原告主尋問>
あなたは大川原化工機の島田さんの供述調書を少なくとも14通作成していますが、すべて、事前に調書を作成してきて、取調の冒頭で島田さんに確認させて、署名させていますか?
→ある程度作成したものを使っている。

その島田さんの供述調書にしても、捜査メモに書かれていない内容、表現が多く見られる。あなたは取調において、供述者が言ってもいない内容、使ってもいない表現で調書を作成しても、最終的に署名をもらえれば構わないと考えているのですか?
→供述調書にないものをメモに残すなりもしており、全く合わせる必要はない。

(2) 供述調書への記載拒否

<被告東京都主尋問>
CIP機能付きが対象で、乾熱殺菌を発想したことはなかったと、島田さんは言っていましたか?
→言っていた。

あなたはそのことを調書に記載するのを拒否しましたか?
→はい。

それはなぜですか?
→島田さんが100度で殺菌できると経産省に言っていたり、経産省から方法にかかわらず乾熱を含むと言われていたり、という様々な事実と矛盾するので調書に記載することはできなかった。

島田さんにはその旨を説明しましたか?
→した。

島田さんは納得していていましたか?
→それはそうですね、と言って納得していた。

CISTEC発行のガイダンスに従って該非判定を行っていたとの供述を調書に取らなかったのは何故ですか?
→他と矛盾するから。島田さんもそれはそうですと言った。

供述したことを書かない理由について島田さんにどのように説明しましたか?
→明らかに資料と矛盾することは書けないと言った。

<原告主尋問>
乙6の1を示します。2018年12月11日の取調に関する捜査メモです。島田さんは、取調べの当初からハの要件は、曝露防止の設計がされた、CIP機能付きの薬液による滅菌・殺菌が可能なものであると考えていたと話していましたか?
→何回か言っていました。

この日だけでなく、12月20日、26日、2019年1月10日にも、島田さんは毎回のようにCIP機能付き薬液消毒が該当するものであるとの考えを述べていましたね?
→記憶にない。

しかし、あなたは殺菌概念に関する島田さんのこの認識を供述調書に取らなかったのですね?
→はい。

その理由は、あなたの陳述書によれば、客観的事実と矛盾している供述であることが明らかだったからということですね?
→はい。

丙A83号証、2019年1月29日作成の島田さんの供述調書・資料4を示します。あなたのいう客観的事実のひとつが、この打合せの日のCISTEC側議事録(14)に「入口温度から出口温度までを100度等高い温度で保つと滅菌、殺菌できる。」との記載があることですね?
→はい。

しかし、この打合せが行われたのは、2012年1月24日で、オーストラリアグループの文言すらない状態。仮に島田さんがこのような発言をしたとしても、規制要件に関する発言とはいえないのではないのではないですか?
→規制要件は大体決まっていたので。

資料2を示します。こちらは同じ打合せの大川原化工機側の議事録。こちらには、滅菌殺菌については一言も触れられていません。あなたはその理由について島田さんから聴取しましたか?
→訊いていません。

丙A86号証、2019年2月22日作成の島田さんの供述調書・資料1を示します。あなたのいう客観的事実のひとつが、経産省新地さんからこのようなメールが来ていたことですか?
→はい。

新地さんの2012年3月12日付けメールに「デンマークの返答にあるとおり」と記載されています。デンマークの回答は、蒸気滅菌に限定されない理由として、「乾熱滅菌(蒸気滅菌の反対)は微生物を最低限log6の滅菌を誘発する類似の信頼できる滅菌方法であるため、蒸気滅菌に限定したくない」とある。つまりこれは、付属ヒーターによる乾熱殺菌のことを言っているものではないですよね?
→乾熱殺菌のことだと思います。

新地さんは島田さんにこの翌日3月13日にアメリカからの回答もメールしてきています。甲129号証の1を示します。このメールは知っていますか?
→はい。

甲129号証の2。アメリカの回答です。問3に対する回答に「蒸気滅菌の代わりに我々が見たシステムは、洗浄液を注入して漂白剤を含めて消毒する内部スプレーシステムを使用していた」と書かれている。これは島田さんが当初から供述していたCIP機能のことです。取調の際、島田さんにこのアメリカの回答のメールを示しましたか? 
→いいえ。あくまで日本の規制なので、アメリカの回答を見せる必要はないかと。

乙6の6を示します。H24.5.7業務運営会議で島田さんが、ハの要件として「分解せずに薬液・蒸気滅菌できる装置」と発言しています。これも島田さんの当初供述と合致するのではないですか?
→分かりません。

(3) 虚偽の殺菌概念を示した誘導

<被告東京都主尋問>
殺菌の概念についてどのように言っていましたか?
→菌が少しでも死ねば殺菌と言ったことはない。。全て殺さないと感染力が残るため殺菌にならない旨を伝えた。経産省記載の特定の1種類を全て殺せば殺菌に当たると言った。

<原告主尋問>
丙A83号証を示します「噴霧乾燥器が発する熱風で、ある程度の菌を殺すことができると理解していました。」との記載されています。打ち合わせメモにも「ある程度」という言葉はないですが、これも島田さんが言ったということか。
→そうです。島田さんの方から「ある程度菌を殺せれば該当するのではないか」と質問を受けました。
 
結局、当時の認識としては、島田さんは熱風である程度の菌を殺せるくらいの認識しかなかったということになるのではないですか?
→はい。

あなたは島田さんに、「少しでも菌が死ねばハの要件の殺菌に該当するんだ」と伝えたのでは?
→伝えていません。

<被告東京都再主尋問>
島田さんから殺菌とはどういうことか訊かれましたか?
→島田さんから噴霧乾燥器の内部に温度が行き渡るから殺菌できるのは当たり前だと言われた。

<左陪席裁判官補充尋問>
専門家に聴取しはじめた際に殺菌の定義は警察内にはありましたか?
→なかった。聴取する間に段々とできた。
島田さんの取調べ時は?
→そのときにはあった。捜索差押えの時にはあった。

索差押え以降、捜査メモの殺菌は全てその定義を使用していましたか?
→はい。
島田さんには説明した?
→はい。
いつ説明しましたか?
→少しでも殺菌できれば殺菌になるか訊かれて、残っている菌があるということは感染能力があるということであると取調の時3~4回目ぐらいで説明した。

(4) その他の取調べ態様

<被告東京都主尋問>
原告会社の製品が中国の「あってはならないところ」にありましたか?
→あった。

<裁判長補充尋問>
中国の「あってはならないところ」から出てきたというのはどこ?
→原告会社が中国に作った合弁会社からある場所に持ち込まれた。具体的には答えられない。私の方からはお答えは差し控えさせていただく。

セイシン企業の上田さんみたいになりたいんですか、と言ったことはありますか?
→ある。

なぜ言ったのですか?
→島田さんが「え、なんですか?」と繰り返して、まともに答えてないように見えたので、そういう形で説得した。

あなたの島田さんに対する言葉使いは?
→常に「さん」付けで、かつ、敬語。

島田さんは?
→島田さんも敬語。

乙6の2(捜査メモ)で問答が敬語で記載されていないのは何故ですか?
→あくまでメモだから敬語部分は記載する必要はないと思った。メモは全て網羅的に記載するものではないから。

修正にあたって交換条件を出したことはありますか。
→ない。

5. 逮捕後の弁解録取

<被告東京都主尋問>
弁解録取の際、逮捕状を示した後、何と言いましたか?
→この事実で間違いないですか?といった。島田さんは「はい」と言った。何か言いたいことはありますか、と聞くと、島田さんは「逮捕ですか?」と言った。

それ以外は?
→ない。

白紙にベタ打ちした弁解録取書の内容に対する島田さんの指摘は?
→社長や相嶋さんから指示された等、大川原社長と相嶋さんと話し合って届出を出さなかったという箇所が違うと指摘があった。

島田さんはこれまでの取調べでそのようなことは言っていましたか?
→いいえ。これまでの供述と矛盾すると感じた。(これまでは)会社として非該当とする方針は3人で決めたことに間違いない、社長が社長室で該当としなくていいと言った旨を述べていた。

あなたがそう答えたのに対し、島田さんは何と言いましたか?
→確かにそれはそうですと言った。

弁解録取書は「読み聞かせ」を行った上で閲覧させましたか?
→はい。

そのときの島田さんの様子は?
→納得した様子で署名押印しているように見えたが、しばらくしてやはり内容が違うのでこの書類はなかったことにしてもらいたいといってきた。M係長には報告した。

係長には弁解の内容を報告しましたか?
→はい。M係長はおかしいけどしょうがないかと言った。

弁解録取書を見せて報告しましたか?
→見せていない。

丙A107号証。弁解録取書を見て島田さんは何と言いましたか?
→じっくりと読み直して、はいこれで大丈夫ですと言った。先ほどの書類はなかったことにしてほしいと言われたので不要文書の茶箱に入れて裁断した。その後は最初にとった弁解録取書のことは頭の中になかった。

弁解録取の後に取調は行いましたか?
→行った。

そのときの島田さんの様子は?
→いつもの落ち着いた様子に戻っていた。

<原告主尋問>
丙A125(被疑者弁解録取状況報告書)を示します。3頁(5)。当初の弁解録取書の裁断について、報告書には「弁解録取書を不要文書用の茶箱に入れていることを失念し、本職の過失により裁断機で裁断してしまった」と書いてあります。つまり、裁断行為時において弁解録取書を裁断する認識がなかったということです。他方、今回の陳述書には、「送致不要であるとの誤った認識で裁断してしまった」、つまり、茶箱に弁解録取書が入っていることを認識しつつ、弁解録取書を裁断しても構わないと考えて、裁断したと書かれています。当初の報告書に記載は誤りということですか?
→よく分からないが陳述書の方が正しいと思う。

当初作成し島田さんが署名をした弁解録取書について、島田さんから訂正要望が反映されていないと文句を言われた後、取調室を退席し、別室のM警部に相談に行きましたか?
→はい。

M警部は、作成済みの弁解録取書について、どうしろと指示しましたか?
→特段指示を受けていない。

M警部の指示は受けていなかったが、自ら裁断しても構わないと判断したのですか?
→最初にとったものは頭の中から抜け落ちていただけ。

いったん文書として完成した以上、公用文書となりますから、これを破棄すれば刑法258条に定める公用文書等毀棄罪の実行行為ではないですか?
→はい。

当時あなたはその知識がなかったのですか?
→なかった。

島田さんの弁解録取書を破棄したことを、その日のうちにM警部に報告ししましたか?
→報告していない。

6. 検事相談

主尋問なし

<右陪席裁判官補充尋問>
殺菌の解釈が問題となるので、捜査機関としても難しい事件でしたか?
→はい。
立証のことを考えないといけないので、捜索差押えや逮捕の前に、検事と協議しましたか?
→捜査本部や上司が頻繁に行っていた。
いつ頃から?
→平成29年から平成30年ぐらい。捜索差押え前からあった。捜索差押え後に頻度が増えた。
捜査メモや報告書を検事に持って行きましたか?
→当初は供述調書と捜査報告書の主要なものを持っていっていたと思う。メモまでは持ち込んでいなかった。
供述調書・捜査報告書の抜粋したものということですか?
→はい。
捜査について検事からどのような指示があったか覚えはありますか?
→湿度も測るよう指示があったという記憶がある。

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