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駒方検事 証人尋問再現(統合版)

駒方和希検事は、2021年4月に東京地検公判部に着任し、前任の加藤和宏から事件を引き継ぎました。既に弁護人側の実験で測定口の温度が上がりづらいこと明らかにされ、経産省の捜査メモの開示を求められている厳しい状況でした。証人尋問では、経産省の捜査メモの内容、及び公訴取消の理由が焦点となりましたが、駒方検事は、経産省の捜査メモは公訴取消の理由にはなっていないと証言しつつ、その内容については記憶にないと繰り返し述べました。また、起訴をした塚部貴子検事の判断については、やむを得なかったと庇いました。

以下は、被告東京都、原告による各主尋問をベースに、原告主尋問、被告国反対尋問、被告東京都再主尋問、裁判所補充尋問を統合して、論点ごとに整理したものです。
各尋問及び証言は、当事務所の弁護士のメモをベースにしているため、一部再現に不十分な点がある可能性があることをご了承ください。


1.導入

<被告国主尋問>
丙37(陳述書)に訂正はありますか。
→訂正なし。

 あなたは前任検事から本件事件を引き継ぎでいますが、その際、争点がどこかと引き継ぎを受けましたか。
→条文の文言の解釈で複数の点が争点となっている。実機の構成要件該当性、特に定置した状態で滅菌殺菌できる機器の性能がどのようなものか。

 要件ハの立証方針はどのような引き継ぎを受けましたか。
→経産省の担当者に、経産省としての解釈を確認して、それを前提とした種々の確認をしている。

<原告主尋問>
あなたは令和3年4月に東京地検に着任してから、一件記録の精査や弁護人から出された主張証拠等の検討を行ったんですよね?
→はい。

 2.法令解釈について

<被告国主尋問>
証人は経産省の法令解釈で問題ないと考えましたか。
→はい。

 殺菌の方法について乾熱殺菌も含まれると判断しましたか。
→はい。一番の理由は、法令の文言上殺菌方法は限定されていないことである。経産省からその旨の説明を受けたと聞いている。

 法令の趣旨に関する話はありましたか。
→法令の趣旨は、結局内部の殺菌滅菌が可能だと、生物兵器の危険な菌を製造した後に再度利用出来てしまうので、規制する趣旨である。すなわち、内部に残った菌の殺菌が必要との趣旨だと理解した。であれば、結果的に内部の殺菌ができれば方法を限定する必要はないと考えた。

実際にどのような解釈をしていましたか。
→前任の検事から、経産省からの菌のリストがあってそのうち1種類でも殺菌できればいいと訊いており、私もその理解をしていた。

 その解釈が妥当だと判断した理由はなんですか。
→生物兵器への転用を制限することが法規制の趣旨なので、複数の菌でなくても1種類でも製造可能ということであれば規制することは合理的と考えた。

 曝露防止構造を備えているかについてはどう判断しましたか。
→曝露防止構造を備えていることは要しないと聞いていたし、その判断に合理性はあると思った。

 その解釈が合理的だと考えた理由はなんですか。
→形式的に曝露防止構造が条文で要求されていない。また、曝露防止機能を備えていなくても結果的に曝露防止ができて、再利用が可能であればいいと思っていた。

<原告主尋問>
弁護人から、噴霧乾燥器内に粉体が堆積した状態で乾熱実験を行うと、乾燥室測定口の温度が30度台となる旨の実験報告書が証拠請求されていましたね?(甲17及び甲18)
→はい。

 それを踏まえ、あなたは、要件ハを充足するために、噴霧乾燥器内に粉体が堆積した状態で殺菌される必要があるのかを検討したのですね?
→はい。

 経産省とも協議して検討したのですよね?
→はい。

 あなたの陳述書によると、その見解の理由として、「(繰り返し細菌兵器を製造できる性能のものが規制対象となるという考え方からすれば、)通常の噴霧乾燥運転後に殺菌できる必要があること」という点が挙げられていますね。
→はい。

粉体が堆積した状態で殺菌できなければ、繰り返し細菌兵器を製造できない、すなわち規制対象にならない可能性があると考えたということでしょうか?
→いいえ。

 噴霧乾燥器の操作者が、細菌に曝露しないよう細菌兵器を製造できることが必要という認識だったということでしょうか?
→最終的にはそうなると思う。

 操作者が細菌に曝露しないよう細菌兵器を製造できる性能のものが規制対象となるという考えだったということですね?
→そうだと思う。

 運転中や、運転後に製品である粉体を回収するとき、操作者が粉体に曝露するなら規制対象外ということですか?
→そこは法令上要求されていない。定置して滅菌又は殺菌できるという要件は、そうしないと大きな曝露が生じるという話なので、その限度で曝露しなければいいと思っていた。

 今回問題となった各噴霧乾燥器は、運転中や、運転後に製品である粉体を回収するとき、操作者が粉体に曝露するのですが、そうであるなら規制対象外ということですか?
→曝露の程度が小さいなら規制対象になると考えていた。

<原告主尋問(高田)>
大きな暴露と先ほどおっしゃいましたが、どういう時に生じるものですか。
→イメージしていたのは、粉体の製造の後、開放状態にした時に、曝露が生じる。これが分解だと考えていた。

 なぜそう考えたのですか。
→定置して、とは分解しないでと理解していた。分解した時に粉が多く舞ってしまうという認識だった。

 製品から回収するときは曝露しないのですか。
→多少はあるかもしれないが、回収ポットで製品を回収するので。

 塚部検事は、ダンパーがついているとポットから回収しても曝露しないんだと言っているという話は認識していますか。
→言われればそういう説明があったかもしれない。私は、その説明を受けてそういうものだと認識した。そこで、殺菌滅菌ができるかについて注力していた。

 3.温度実験の補充

<被告国主尋問>
本件噴霧乾燥器が要件ハに当てはまるかどうかが問題となったわけですが、弁護人から噴霧乾燥機の要件ハの該当性に関する証拠は請求されていましたか。
→されていた。空焚きで噴霧乾燥運転した場合の温度上昇の実験、内部に粉体が残存した状態で噴霧乾燥運転した場合の温度上昇に関する報告書、粉体が付着した状態の報告書。

 噴霧乾燥機内に何もない状態で実験した結果とは違っていましたか。
→捜査段階は温度測定の対象になっていない箇所についても測定されていた。それがいずれも捜査段階で想定していたより低い温度だった。

 捜査機関による補充捜査はやりましたか。
→私の着任時点でやっていた。コードヒーターで空焚きすると高い温度になるかどうかの実験。

 弁護人と同様の状況で追加実験は行いましたか。
→行った。

弁護人と捜査機関で実験に違いはありましたか。
→細かな違いはあるが同程度の温度上昇であった。

 外部にコードヒーターを設置する温度測定実験で、測定口の温度が110度になった場合に、立証ができると考えましたか。
→最終的には考えなかった。

 それはどうしてですか。
→外為法案件で、原告会社の製品を扱うことは、初めての経験だったが、コードヒーターを巻き付けても噴霧乾燥機自体の性能と言えるかは疑問だった。

<原告主尋問>
コードヒーターは本来の機器の性能ではないと考えたのですね。
→はい。

 <被告国主尋問>
起訴後の補充実験では50度が最低温となったわけですが、この温度を前提として細菌の死滅に関する補充実験を行いましたか。
→はい。このくらいの温度でも乾熱で死滅する菌がいるかについての捜査を警察にお願いした。

 千葉大学の清水准教授にO157が50度で熱処理できるかについての意見聴取を依頼したことはあるか。
→あった。

 清水准教授から、O157が100時間で殺菌可能との回答はありましたか。
→あった。噴霧乾燥器の測定口でも50度以上になるのであれば、大腸菌は殺菌できるとのことだった。

 であれば問題ないと判断しましたか。
→はい、

 弁護人の粉体が残った状態での実験結果を受け、粉体を付けた状態で殺菌できるかについてはどう考えましたか。
→最初分からなかったので、滅菌殺菌はどのようにするのか、経産省の当時の担当者に問い合わせた。通常の噴霧乾燥の運転後、内部の粉体が残った状態での殺菌が必要と報告を受けた。

 その報告を受けて、補充捜査はしましたか。
→した。

 何をしましたか。
→噴霧乾燥した状態で空焚きをした時にどうなるか、実験した。ただ、L8iは行ったがRL5は行っていない。

 粉体が堆積した状態での実験はL8iしか行っていませんが、なぜRL5では行わなかったのですか。
→RL5の実機の所有者で協力を了承する人がいなかった。

 実験で配慮した点はありますか。
→弁護人側から開示された証拠を見たが、内部に残存した粉体が少ない場合は、温度が上がると思った。噴霧乾燥機にはエアノッカーの機能があるので、内部の粉体の量が減る。そこで、エアノッカー機能を作動させた状態で運転をした。噴霧乾燥の際に濃度が濃いほど粉体量が増えるので、低い濃度のものを実験した。

 弁護人の実験ではエアノッカーは作動していましたか。
→していない。

 乾燥室測定口の温度は何度になりましたか。
→58度近く上昇した。

 令和3年6月21日、粉体状態の大腸菌が50度・9時間で殺菌できなかった実験結果を見ましたね。
→はい。

 補充捜査は行いましたか。
→可能であれば同様の実験、大腸菌を用いた実験をできればと考えたが、実現しなかった。粉体となっている菌について加熱実験を行い死滅するかは確認したかった。

 それはなぜですか。
→粉体の大腸菌の実験をお願いできる協力者はいなかった。

 代替策は考えなかったですか。
→乳酸菌が同程度の耐熱性だったのでそれで加熱実験できないか検討したができなかった。

50度での熱処理で粉体状態の菌が死滅するのか、実験は行いましたか。
→はい。実験の結果、50度96時間で死滅しなかった。乳酸菌が96時間の乾熱で死滅しなかったのが確認できたことと、RL5についてもL8i同様実験の実現可能性が乏しかったので、客観的な立証が困難と判断した。

 測定口の温度上昇状況の存在を知り、起訴時点からは証拠構造が変わってしまったということですか。
→はい。

<原告主尋問>
4月に着任してから、7月30日に公訴取消しを申し立てるまでの間に、一件記録の性差と要件の検討をして、粉体が堆積した状態での乾熱実験と、粉体の乾熱実験を順次行って、要件ハの該当性を立証することは困難という結論に至ったんですね?
→はい。

 4.起訴取消の理由

<被告国主尋問>
起訴取消しの理由は警察に説明しましたか。
→はい。私と副部長が説明しました。

 起訴取り消しの理由は何と説明しましたか。
→一番は警察も実験結果は把握していたので乳酸菌の実験でも乾熱で死滅は困難であったこと。噴霧乾燥機内が高い温度になることの立証も困難であるため、構成要件該当性が認められるという立証が困難であると説明した。

 法令解釈を裁判官に説明するのが困難だと説明したことはありますか。
→ない。

 <原告主尋問>
出廷にあたり、検察と警察の打ち合わせメモを確認しましたか。
→していない。先ほどの供述は記憶に基づくものである。

 警察に法令解釈の点は指摘していないという記憶ですか。
→はい。絶対に言っていないという記憶もないが、言った記憶もない。

 結局記憶がないということですね。
→はい。

 場所は東京地検で説明を行ったということでよろしいですか?
→はい。

 地検側の出席者はどなたでしたか?
→小長光副部長、私

 捜査メモには、法令解釈を裁判官に説明できないとの記載があるようですが。その場で説明したかどうかはともかく、当時そういった話は検察内部でありましたか。
→捜査メモと言っているものが分からないが、意図的に立証方針をねじ曲げたというような議論は当時検察内でした記憶がない。

 前回の警察官の証人尋問によれば、2つめの理由について、あなたからもコメントがあったようなのですが、あなたからどのような説明をしたのですか?
→記憶にない。

 「現在は「capable=(結果的に)殺菌できれば該当」と解釈しているが、もとは「designed=殺菌するように設計されたもの」という解釈があった」と説明をした記憶はありますか?あなたが言ったかどうかはともかく、捜査メモにそのような記載があったことは事実ですか?
→議論はあり得ると思うが、説明した記憶はない。どこかで議論があった記憶はあるので、捜査メモを見たのかもしれないが、記憶にない。

 「捜査メモの開示請求に対し、一部黒塗りとしたところで、その可否について判断するため裁判官は必ず読む。そうなれば裁判官の心証が悪くなる。」と説明をした記憶はありますか?あなたが言ったかどうかはともかく、当時のあなたないし東京地検において、そのような認識はありましたか?
→記憶にない。原告の主張にも相応の理由があると裁判所が判断しうるということで不利になるという認識はあったと思う。

<被告国再主尋問>
警察が捜査メモを作っていたことを知らないということですか。
→はい。
捜査メモが正確かも確認していないということですか。
→はい。
 公訴取消しの申立てが令和3年7月30日の時期になった理由はなぜですか
→最終的に公訴に取り消しを判断したのは、乳酸菌の乾熱実験で50度96時間で殺菌出来ず、客観的に機器がそういう性能を有していると立証できないと判断してからであった。公判審理で無罪論告をするよりは、第1回公判期日までに公訴取消しをした方がよいと思った。もっとも、庁内での決裁があるので、第1回公判期日直前になってしまった。

<原告再主尋問>
起訴取消しの報告の際、メモの黒塗り部分に弁護側の主張の根拠があるというように裁判官に思われるといった話はいつしたか
→どの時点かは記憶にない。
 弁護側の開示請求の根拠はなんですか。
→類型証拠開示。
 黒塗りなのは弁護側の主張のどの部分ですか。
→法令解釈の部分であるが、詳細は申し訳ないが覚えていない。殺菌滅菌なのか、暴露防止なのかも覚えていない。ただ、弁護人の主張と沿う供述をしている経産省の職員がいたとの記憶がある。

 <左陪席裁判官補充尋問>
起訴取り消しは、通常起きないという理解でいいですか。
→はい。私は初めてである。
 なぜ起訴してしまったのか検察内部で話し合ったことはありますか。
→私は関与していない。
 検証には関与していないということですか。
→はい。

 5.公安部と経産省の打合せの捜査メモ

<被告国主尋問>
公安部と経産省との打ち合わせの捜査メモは見ましたか。
→はい。

 裁判官への法令解釈の説明が困難になるとは思わなかったですか。
→立証は楽観視していた訳では無いが、打ち合わせメモで状況が大きく変わったわけではない。

 経産省内部で、経産省の解釈と異なる見解はありましたか。
→法令解釈は経産省内部で違うことを言っている人はいた。

裁判所がどちらの解釈を採用するか分からないという思いもありましたか。→元々、法令解釈はこちらが依拠したものとは違う解釈を弁護人から提示されていた。我々の解釈が正当であり、弁護人の解釈に問題があると裁判官が判断するとまでは当時は思っておらず、最終的に裁判で判断するものだと思っていた。検察としては、当初は経産省内部で違う解釈をする人もいたが、最終的に回答した解釈になったのだと、証人尋問等で立証できると考えていた。

 <原告主尋問>
甲151号証(期日報告書)5頁を示します。こちらは令和3年6⽉23⽇の期日に関する弁護人作成の期日報告書です。この期日の時点で東京地検は捜査メモの提出について経産省を調整していて、経産省からは全面不開示の回答だったが駒方検事としては全面不開示は相当でないとの考えだという発言がなされたと記載されているのですが、実際の状況に間違いはありませんか?
→間違いない。

 この捜査メモには、それまで検事として認識していた前提と異なる事情が相当にあったと思いますが、このようなこと、すなわち公判維持に影響与えるような不利な情報が、警察が入手していながら、検察官に送致されていないという事態は、公判担当検事としての職務経験上、ありましたか?
→質問の趣旨が分からないが、記憶にはない。

警視庁と経産省の打合せについて、あなたが確認した捜査メモに記載されていた事実を大きな流れとして教えていただきたいのですが、打合せが開始された当初、具体的には2017年10月から11月にかけての時期は、経産省は「殺菌」に関しては明確な定義や解釈がなくて判断できないという姿勢を示していましたね?
→よく覚えていないが、明確に規定した文書がないという記憶はある。

 従って、ハの要件に該当するという実証実験については、滅菌の基準を満たすように、具体的には日本薬局方に記載された芽胞形成菌を死滅できるという実験が必要だという考えが示されていましたね?
→覚えていない。

 警視庁公安部が有識者の意見を経産省に提出したのは、2018年1月ころですね?
→覚えていない。

 経産省からは、曝露防止が必要だとの考えも示されていましたね?
→はい。

 他国とのバランスが重要で、日本で突出して輸出規制とすることは意味がないといったコメントもありませんでしたか?
→あった。

 ところが、警視庁から渡辺警視が出席し、経産省から笠間課長補佐が出席した2月8日の打合せで、笠間課長補佐から、警察による捜索差押に協力するという姿勢が打ち出されましたね。
→記憶にない。

 笠間課長補佐は、その前に出席した2017年11月7日の打合せでは、慎重な姿勢でしたね?
→記憶にない。

 記憶にないと言っているけど、あなた本当に捜査メモ見たの?
→すべてを記憶するほど読み込んでいない。

 経産省とあなたで、打ち合わせメモをどこまで開示するか、開示の範囲でやり合ったのに記憶ないの?
→ない。

 丙25号証を示します。この訴訟で経産省が殺菌解釈について回答したものです。第2項に、省令所定の細菌等のうち一種類以上、これには芽胞形成菌だけでなく大腸菌など熱に弱い細菌も含まれるのですがそのうち一種類以上を、殺滅できれば殺菌できると言ってよいと書いてあるのですが、あなたがご覧になった2017年10月から2月までの捜査メモで、経産省から、このような見解が警視庁に示されたものは、ありましたか?
→対象菌についてやり取りがあったかも含め、記憶にない。

 <被告国再主尋問>
公安部経産省との打ち合わせメモを最後に見たのはいつですか。
→約2年前。
 メモについてはどのような位置づけですか。
→全部目は通しているが、この時点では開示請求を受けて、開示対象文書がどうかを確認する観点で確認したにすぎず、それ自体を立証に使うつもりはなかった。最初はどの範囲を不開示にするかといったこともなかった。打ち合わせの部分が多く、開示がどのような弊害をもたらすのかはわからないので、経産省に検討をお願いしたい、例えば日付や出席者等を個別にどうするのかということでした。私がざっとみた限り、一般的な話であるとの印象だった。
 メモの内容が正しいか精査は行っていないということですか。
→解釈要件に注目して読み込んでいないということ。解釈について異なる解釈を述べている人も経産省にいるという程度のことは把握したが、それ以上に詳細に記憶する程度に見ていない。

 6.冤罪の原因

私どもからすると、起訴の段階、あるいは逮捕前から検事相談のある事件では検事相談の時点で、不利な事情、証拠が隠れていないかについて確認するのが当然ではないかと思うのですが、検事の立場からどう思われますか?
→やむを得ないと思う。

 本件では、結果的に、逮捕されるべきでない人が逮捕、勾留され、起訴されるべきでない人が起訴され、11ヶ月間もの身柄拘束がなされ、うち1名は死亡しています。まさにあってはならない事態です。公判を担当した立場として、立件に不都合な証拠について捜査メモとして公安部内部にとどめ、検察官に送致しないという、警視庁公安部の捜査の進め方については問題なかったと受け止めていますか?
→捜査は担当しないのでなんともコメントしようがない。

 他方で、警察が不利な証拠を出さないリスクについて、検事の側ではいかんともしがたいものなのでしょうか?
→補充捜査の段階では、温度についての聴取結果を共有してくれていると認識していた。本件においては存じないが有利不利を問わずきちんと提出してもらっていたとは思う。

 捜査段階で不利な証拠を送致していない可能性もある中で、ないのかと確認しないのですか。
→することもあると思う。

 本件についてはどうですか。
→本件についてはわかりません。

 本件は、相当長期間の検事相談を経て、検察官自ら逮捕状請求にゴーサインを出しています。規制当局による告発もない特殊な事案です。検事において、より慎重かつ積極的に、不利な事実がないかの検証を行う必要があると感じたことはありますか。
→ありません。

 

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