通常03

じゅうねんご どうしてる?

チャオ、ワダチイチロですよ。
キャラクター(広義)のみなさん、お元気してますか?

今回はちょっとしたシミュレーションをしてみたいと思います。
肩の力を抜いて、気軽に想像してみて下さい。

問題
『あなたは現在、精力的に活動しているキャラクターです。
さて、10年後はどうしてますか?』

どうです?考えたことありますか、10年後。
「ずっと先の未来じゃないか」って?いやいや、案外あっという間ですよ。

えっ、「10年後も活動してる」!?すごいなあ!どうしてそう思ったんですか?
「やる気があるから」…「確固たる意志があるから」…ほうほうなるほど。つよメンタルで尊敬しちゃいますね!
でも、強い気持ちだけで、はたしてやっていけるのでしょうか。

キャラクターが精力的に活動を続けていくには「裏方さん」のたゆまぬ支えが必要になってきます。
裏方さん、つまり作者さんや演者さん、またコンテンツホルダーさんなどですね。キャラクターと裏方さんは一蓮托生なのです。
もしその、裏方さんの身になにかあったら…?

なにかというのは事故や病気だけじゃないですよ。人間って生きてて、成長してて、10年もあればライフステージが変わっちゃいますから。進学、就職、転職、結婚、出産、育児、エトセトラエトセトラ。

「うちの裏方さんはバイタルやばいから大丈夫」ですって?あら〜頼もしいこと。
それじゃあ、裏方さんご本人じゃなくて、裏方さんの身近な方ならいかがでしょうか。裏方さんのごく親しい方になにかあった時、裏方さんはまったくの無関係でいられるのでしょうか。

それに、無事でいられるかは人間だけの問題じゃありません。たとえば、あなたが活動拠点としているプラットフォーム、10年後もまだ存在してますかね?仮に存在していても、運営状況はどうなっているでしょうか?
その頃にはもしかしたら、人気に陰りが出てユーザーの大移動が起こってるかもしれません…。あなたも移動されます?登録数ゼロからの仕切り直しですけど。

…ちょっといじわるでしたかね、すみません。
しかしまあ残念なことに、少し挙げただけでもこれだけ大きな障壁がありますから、10年後にもキャラクターとして活動するのは極めて難しいと考えた方がよさそうです。あるいは、相当に緩やかで断続的な活動に切り換わっているかも。城春にして草木深し。

これから先、キャラクターとしてのあなたは徐々に消えゆくのみなのでしょうか?

いいえ、それは違います。
なぜならば、あなたは、あなたのファンの中で生き続けていくことになるからです。

キャラクターの終わりには段階があります。
まずは物語上の終わり(物語の展開で死ぬなどして登場することがなくなった場合)。
そしてコンテンツの終わり。
最後に忘却による終わりです。

キャラクターは人々から忘れ去られたらそれで本当の本当におしまいですけど、逆をいえば覚えていてさえもらえればその分だけ生き長らえることができます。
たまにSNSで見かけませんか?アニメファンやゲームファンのつぶやき、そこで語り継がれるあなたの知らないキャラクター、あなたが生まれるよりずっと前に生まれて愛されてきたキャラクター…。あなたがあれになります。

10年後のあなたの命はあなたのファンの心の中に存在している。

ではここでもう一度、最初の問いに戻りますね。

『あなたは10年後、"ファンの心の中で"どうしてますか?
いつもニコニコ笑っていますか?
それともシクシク泣いていますか?
わけもなくプンプン怒っていますか?
今のあなたは、10年後のファンにどんな姿を遺せますか?
じゅうねんご、どうしてる?』

【こぼれ話】
「人々の記憶に残れれば生きていることになるのは、なにもキャラクターに限らないんじゃないか?人間だってそうじゃないか?」と聞かれると、そこはかなり微妙なところです。
人間には「生命倫理」という考えがあって、現代において語られた故人は故人本人とはみなされませんから。
その辺の議論が進むのは、もっともっと先の未来ではないでしょうかね。

参考: