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化物園/恒川光太郎 ★★★ 


 七つの短編から成る。
 どの作品も、仄暗くてやや湿り気を帯びた、冷えた空気を纏っている。前半の四つは現実世界に軸足を置き、後半の三つはファンタジーと現実との境界が溶け合っている地点から語られている。
 これらの七つの作品中、四つに「ケシヨウ」なる正体不明の化け物が出てくる。
 もっとも現実的なのは、三番目の作品「十字路の蛇」だろう。これはなさそうでいて、ありそうな、哀しくて怖い話。この作品にケシヨウは出てこない。逆に、最後の「音楽の子どもたち」はもっともファンタジーに傾斜しているが、ラストはファンタジーが現実に接続して終わる。
 恒川光太郎のどの作品にも言えることだが、読後、現実世界の箍がすこし緩むような魔法が、この短編集の全ての作品にもやはり、仕掛けられている。

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