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グリーフケアヨガでペットロスを癒す


先週の中ごろ、朝いつものように起きて台所でコーヒーを淹れながら朝食の下ごしらえをしていたら「あ」と思った。胸がつかえるような、息苦しいような感覚があったのだ。

朝はコーヒーを飲んだらヨガのプラクティスと坐禅をすることにしているのだが、その朝のヨガのプラクティスのメニューはもうその瞬間に決まっていた。
Yin Yoga for loss and grief (ロスと悲しみのための陰ヨガ)である。

その前の週末に私たち家族と10年暮らしてきた愛犬を突然失った。娘の8歳の誕生日にもらってきた保護犬をボルネオ島から日本に帰国する時にも飛行機に乗せて連れてきた。私たち家族と苦楽を共にしてくれた愛犬だった。
 
愛するもの、大切なものはすべて失われる。
なぜなら彼らが変わり私たちが変わりすべてのものが変わるから。

3週間ほど前に原因不明の病気になり、みるみるうちに容体が悪化し私たちの腕の中で息を引きとった愛犬の死を受け止めるしかなく残された私たちは淡々とまた日常に戻るしかない。

陰ヨガの基礎となる中医学ではそれぞれの臓器が感情と深く結びついていると考える。内臓と感情が関係あるなんて西洋医学にどっぷり浸っている現代人にはにわかに信じ難いことだが、例えば緊張すると腸が活発になったり怒ると心臓の脈が速くなったりという経験は誰にでもあるだろう。

ちなみに悲しみの感情は肺と深く関係すると言われている。肺とその経絡に刺激を与えるポーズを取るのが「ロスと悲しみのための陰ヨガ」あるいはグリーフケアと呼ばれるヨガプラクティスである。

この2、3年はこのプラクティスにずいぶんお世話になったものだ。
母の突然の癌告知で3ヶ月のうちに母を看取ることを覚悟した時。
遠くスコットランドで末期癌の病床についた義理の弟をパンデミックの最中でついに会うことも叶わずに亡くした時。
信頼していた人間関係が突然破綻した時。
そしてまた愛犬を失った時。

人生は本当に避けることができないロスと悲しみの連続だ。
なぜなら私たちは愛することを止められないから。


傷を負った時にできることはただひとつ。その傷に気付くこと、その傷を観察し味わい、その傷と共に生きること。胸の苦しさと向き合い、陰ヨガのポーズの中でその痛みと一緒に呼吸をする。そうして痛みが和らぐのを待つだけ。

けれど深い悲しみや傷を負うということは裏返すと、その分幸せな楽しい時間が確かにあったということでもある。
悲しみや喜びや痛みや笑い、すべてを織り交ぜて味わい尽くすことのできる人生ほど豊かなものはないのではないか。

そのためにはヨガが必要なのだ。
ヨガのプラクティスさえあれば人生のどんな経験も楽しむ体力と勇気を与えてくれる。















 

 






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