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#全部引っくり返す。ケアの文化拠点づくりの中の人の、頭の中と人の動きの開放記録

これでもか、という逆境の中、「診療所と大きな台所 ほっちのロッヂ」が、4月1日から始まった。町の文化が引き継がれる拠点として様々な仕組みをつくり、成功しかしないだろう、と自らも言い切れるほどの準備を重ねてきたこの半年。いや、2年半。

2017年11月に共同代表・運営を担う医療法人オレンジ理事長の紅さんと出会い、出会った日に構想がスタートした。2018年、3人目の出産直後に撮影したコンセプトムービーから一ミリもブレずに、言い出したことは全て確実に行なってきている。2019年2月に行なった「ケアの文化・芸術展」にはwebを含めると90名近い方が参加してくれ、直後に開始した「福祉をごきげんにする仲間 ほっちのロッヂャー」には、2019年3月の時点で国内外306名が名乗りを上げてくださり、結果420万近くの資金が集まった。その直後、ソトコト「人が集まっている場所」特集に6Pに渡って掲載され、ロハスデザイン大賞「コト」部門を受賞した。
6月末に行なったいわゆる採用説明会には告知3週間で20名ほどの看護資格を持つ方から関心が寄せられ、その2ヶ月後にはそのうちの5名が働き手として参加。3名が8月末に軽井沢町に引越し、訪問看護ステーション”のような”活動を開始した。その後地元信濃毎日新聞には3回に渡り掲載され、業界紙にも何度も私のインタビュー記事を掲載頂いたり、学会や講演活動は毎月かなり多く要望をいただき、ほっちのロッヂのコンセプト発信を丁寧に行なってきた。軽井沢町に住む人への発信も、安易な広告を出すことなく、軽井沢町の人の活動に足を運び、確実に町民との出会いを重ねてきた。

以上は、2017年11月から始まった、ほんの一部。まだ、場所ができていないにもかかわらず生み出してきたストーリーだ。

ここまでは、この動きをしたらこれが紐づいてくる、そうするとこんな光景が生まれる、という私自身の過去の成功体験をもとに動かしてきた。でも、どうやらこの体験はこれからは全く当てにならないことを、この1ヶ月で完全にスイッチを切り替えることになった。


”場づくり”は臨界点に達していた

2019年4月から本格的に軽井沢町に引っ越し、毎月のように国内外に出張に飛んでいた。そして感じていたのは、「”場づくり”は臨界点に達している」。
やれ視察だ見学だ、こうすればうまくいく、などとコピーアンドペーストな試みが加速していく潮流を感じていた。上部のキラキラとした話ばかり焦点が当てられ、やれこれが地域包括だの、地域を盛り上げることにつながるだの、既存の言葉にすぐに好き勝手当て込んでいく。SNSで、はい、見てきました、私知り合いです、そんなことがステイタスになっている。視察し、その後行動している人がどの程度いるだろう?こんなことやろうと思ってました、思ってます、そこで終わり。できない理由ばかりが並べられ、いいなぁ〇〇は、という軽々しい本音ばかりが生まれるにとどまる。私にしたら、”場”が消費されるばかりだ。クリエイティブが生まれない。

事実、東京での場を持っていたときに、場が消費されていくような拒絶感を感じ、東京を離れたことはそうしたことも関係している。(ちなみに、こんな状況になる以前から、ほっちのロッヂは見学・視察はお断りを公言し続けている。(学生の方は例外。逆に何週間でも滞在して私たちが視点を教えてもらいたいくらいなので))

今が見極め。その場しのぎではなく、思考をアップデートする。そしてそういう人たちと仕事をする

「落ち着いたら〇〇しようね〜」などと話が飛び交う。それは数ヶ月後のイメージ?来年?5年後?コミュニケーションは、対面型から非接触型へ。そしてその後、すんなり対面型には戻りえないだろう。何らかのリスクを抱えながらもコミュニケーションの手段は変わっていく。何を持って、”落ち着く”のだろう?と考えている。

私は、もう以前までのいわゆる”場づくり”はできなくなると考えている。つまりこれまでの成功体験を引きずるな、という話。こうしたらうまくいく事例は、今から発明されていく。これまで安易に当て込んできた言葉では形容できない”場”が生まれていく、絶好のチャンス。

元々1つのことに熱中し始めると、それまで心血注いでやっていたことをカラリと忘れてしまう。ああ、そうだったね、という感じ。別に軽んじているわけでもないが、過去は過去なのだ。でもどこかにややこしい成功体験が残っているから、とにかくこの成功体験を今はとにかく封印する。自分のクリエイティブ性をもっと高めなくてはいけない。

その場しのぎで数ヶ月先まではこれでいこう、という姿勢よりも、1年から3年、5年、そして10年先まで中長期的に客観的に思考を巡らせているかどうか、人によって今こそ如実に表現が分かれてくる。今が見極め。
しのごの言っている時間は私たちにはないのだ。私たちの事業は、人の暮らしそのもの。止められないのだから。

軽井沢町”でしか”できない圧倒的なローカライズを加速させる。

真似するな、創るしかない。毎日言い聞かせている言葉。今こそ再現性のない試み、つまりその土地に必要なニーズを見つめる。

顔の浮かぶあの人たちは、この状況下において何を求めているのか?私たちの強みは何だ?私たちの「好き」は何だ?私たちを満たすものは何か?

ほっちのロッヂは、在宅医療拠点と対にして「ケアの文化拠点」で在ろうとメンバと毎日のように話している。
在宅医療拠点はこれまでも言葉として在った。コンサートホールなどの文化拠点もこれまで言葉として在った。私たちは双方をとる。手段としてこれまではヒトの流れを生む構想を考えてきたが、それはもう過去の構想。これから、コト・モノの流れを生む中心となる「ケアの文化拠点」。

私たちの得意とする医療福祉は、人の家に入り、その人の人生の一瞬を共に過ごさせていただくこと。ヒトとヒトが出会えないのなら、コトやモノを通して、ヒトの文化を継いでいくケアの文化拠点としていかようにでもなる。この軽井沢町が大きな大きな観客席であり、大きな大きな舞台だと捉え直す。

具体的な動きが来週には始まる。ほっちのロッヂのメンバの「好き」のクリエイティブ性を加速させることに熱中しつつ、これほど世界が同じ気持ちを抱えている意味を思考しつつ、海外とのコネクションをまた引き戻し、新たな価値創造に挑む。

リスクを恐れず、止まらずすすむ。ここまで読んでくれたあなたも、一緒に冒険しましょう。(大好きな言葉を添えて)


藤岡聡子
診療所と大きな台所 ほっちのロッヂ ほっちのロッヂ 共同代表
http://hotch-l.com
株式会社ReDo 代表取締役/福祉環境設計士
info(@)redo.co.jp
http://redo.co.jp/