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ものごとの裏側には、物語がある。

義理の祖父は、絵に描いたような立身出世をした方だったそうです。
山形の田舎で学校の教師をしていたけれど、
一念発起したのでしょうか、
東京に出て官僚になります。

戦前のこと、通信手段もままならない中で、遠方から1人上京し長年そこで勤め上げた話は、素直に「すごいな」と思います。僕がお会いした頃にはもうおじいちゃんで、とても優しい方だったので、その強さに驚きも感じます。

うちのお雛様は、そのおじいちゃんの代に揃えていったものです。
最初はお金がなくて、お代理様とお雛様だけ。1段。
別の年に三人官女を買って、また別の年に五人囃子を揃えて。
1段ずつ増えていったから、年代で雛人形の顔が違います。

「古いものはいい」という単純な思い込みかもしれないけれど、
先に買った人形の顔ほど、素敵なお顔をしている気がします。

そして、このお雛様を見ると、長年家族のためにがんばって仕事をしていた祖父の姿と、年毎に人形が増えてよろこぶ子供の顔が見えてくるようです。あたたかい。

人や物事の奥には、色々な物語があります。
コーヒーカップひとつとってみても、そこには「どんなものを作ろうか」と思いを巡らせた誰かの気持ちがありますし、そうやって仕事をしている向こう側には、その仕事で成り立っている暮らしがある。

僕は仕事柄、人の話に耳を傾ける時間があるのですが、ひとりひとりのクライアントさんが持つ物語は、いつも豊かでカラフルで、どの方もみんなが「よくなろう」「いいものを届けよう」として、がんばっているんだ、と感じられます。

さて、お雛様。
毎年の楽しみではあるのですが、毎年「出してかたづけるのが億劫」問題があるので、いつまで出すのか。娘もあまり、関心持たなくなってきたしな。

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