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トリエンナーレでボランティアしていました⑤

3年に1度の横浜トリエンナーレが閉幕する。
SNS上では賛否両論だったそうだが、美術界の評価も高かったらしく、何より私にとっては今までで一番の横浜トリエンナーレになった。ボランティアとして関われたことも含めて。

現代アートはその時代その時代の写し鏡。今回の横浜トリエンナーレに鏡をテーマにした展示がある通り、困難の時代は困難を写し出すのが現代アートだと思う。
アーティスティック・ディレクターのお二人がインスパイアされた「野草」の通り、あなたはこの困難の時代に何をしますか?ここにいるアーティストたちは芸術の形で「ひたすら生きる」ことを表象しました。ではあなたは何をしますか?でも、とりあえずは野草のように生きてください。小さい小さい活動だとしてもまずは生きることで何かにつながります。まずはあなたもただ生きてくださいねというメッセージを受け取れた。世界中の困難に向き合う中で作られた作品が多かったからだと思う。

見る人ひとりひとりに「まずは何かアートを見てみよう。文献を読んでみよう。街を歩き世の中を見てみよう」と思わせるきっかけを与えられた国際展覧会だったと思う。
ディレクションがこんなにわかりやすい現代アートの展覧会もないと思う。特に横浜美術館でぐるぐる考えたあとに旧第一銀行会場でぱーーーん!と弾けて「こういうことだったのか!!」と思える展示構成が素晴らしかった。横浜という街をまさしくアートのお祭りにしてくれた。

アーティスティック・ディレクターお二人は北京を拠点に活動されている。監視の目を感じながら芸術作品のディレクションをするお二人にとって、横浜は旧第一銀行会場にある通りの、自由に言いたいことを言える「革命の後の世界」を体現できる土地だったのだ。
私は今年も横浜で横浜トリエンナーレができて良かったなと思う。

SNS、もっと言えばX(Twitter)に横浜トリエンナーレへの意見を自由に書き込む時点で、アーティスティック・ディレクターお二人が目指す「自由にネット上に意見を言える野草」にその人もなったのだ。たとえ会場に行かなくても、内容がどうであれ横浜トリエンナーレ2024に言及した時点で横浜トリエンナーレ2024の一部となった。
そこを見越してまでのディレクションだとするのなら、私は本当にこの現代アートシーンに携われて良かったなと思う。
今年のトリエンナーレは2000年代アートバブルの終焉という意見を見かけたが、そりゃそうだ。少なくとも2020と2024の横浜トリエンナーレは「2000年代アートバブルへの反省」が込められていると私は思ったから。
アートバブルはわかりやすくて明るくて楽しく売れるアートを盛り上げたけれど、商業主義に傾きすぎたのでは?そしてアーティストを権威主義的に見過ぎたのでは?という疑問を残した。
その疑問を提示したのがヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW」だった。それを更に深めて「あなたはアートに対してどう思いますか?何ができますか?」を突きつけてくれたのが横浜トリエンナーレ2024「野草:いま、ここで生きてる」だと思った。
私はこの「野草:いま、ここで生きてる」が突きつけてくれたものに共感するし、それはアートの形をして私に迫ってきたのでこの国際展覧会が好きだ。

だって、北京で活動されてるアーティスティック・ディレクターさんたちにとって、Twitter上で好きに自分たちが作った展覧会の議論が交わされるなんてこと自体が、自国を離れなければできないことなんだもん。そのことはずっと忘れないでおこうと思う。

SIDE COREの壁面へのポスター貼りも含め、本当にボランティアに参加できて良かったと思うトリエンナーレだった。
まず一緒にボランティアをする人たちと作品について話し合えた。どの作品がよくわからなかったか、どの作品が好きかを語る時間が本当に楽しくて貴重だった。
トリエンナーレの運営に関わる方々ともお話しする機会があった。本当に貴重だった。どうして美術館に関わるのか、美術館がどんな場所であって欲しいのか。話すことは本当に勉強になったし楽しかった。
私も美術館が、国際展がたくさんの人が集う、コミュニケーションの場であり続けられるように何ができるだろうと考え続けたい。また横浜トリエンナーレと横浜美術館のボランティアやりたいな。

賛否両論ということはそれだけ横浜トリエンナーレを媒介にしてコミュニケーションが取られたということだ。何かをアートの形で提示する。「これはアートだと思いますか?」と疑問を投げかける。その上で一人ひとりが意見を言い合う。
横浜トリエンナーレが第9回以降もそうした場所であってほしいと思う。



第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」3ヶ月間本当にありがとうございました。閉幕がとても寂しいです。こんなに寂しい閉幕も初めてです。ディレクターさんにもアーティストさんにもボランティアさんにも職員さんにやってきたお客さんが方にもまた出会えますように。

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