見出し画像

コンスタブル展に行ってきたよ①

今日は神話のお話はちょっとお休み。
三菱1号館美術館で2月20日から開催されてる「コンスタブル展」に行ってきたので今日は「コンスタブル」について書こうと思います。

ジョン・コンスタブルとは

19世紀のイギリスを代表する風景画家。

イギリスの風景画家といえば、ウイリアム・ターナーが有名だけど、コンスタブルはターナーの1つ年下・・・つまり同世代人であり、また2人はライバルでもあったとされている。

印象派への影響

印象派につながる画家としてターナーが挙げられることが多いけど、その技法や絵画表現から見ると、

コンスタブルがその後のフランス絵画および印象派に与えた影響は大きかった

と言われているんだ。

1824年に開かれたサロン(サロン・ド・パリ=フランス芸術アカデミー開催の公式美術展覧会)では、コンスタブルの作品3点が出品されたんだけど、

「風景画」を下位ジャンルと見做していた当時のフランスにおいて、コンスタブルの絵は大きな評価を得たと言う。(そのうち1点は金賞を受賞している。ちなみに本国イギリスでの評価はイマイチだったそうです^^;)

事実、アカデミー(新古典派主義)寄りの保守系の批評家たちもコンスタブルの絵を、

「粗い筆遣いは評価できないとしても、多様な色彩の効果を用いながら、実際の風景と見間違えるような視覚的錯覚を起こさせる」と評価し、

真実に満ちている」と称賛しているんだ。

ちなみにコンスタブルは、特に木や草を描くときに、一色の緑ではなく、いくつもの種類の緑を「並列して」置く、という手法をとっている。
そしてこれは、後の印象派の重要な技法と言われる「筆触分割※」の先駆けであるとも言われてる。

※筆触分割=太陽の光を構成するプリズムの7色を基本とし、それらを互いに混ぜずに、小さなタッチで並べていく方法。
例えば、紫は普通赤と青を混ぜて作るけど、混色は色が濁るため、赤の絵の具の横に青の絵の具を置くことで、遠目からは「紫」に見せる、という技法なんだ。

フランスの絵画界に大きな風穴を開けたコンスタブル

サロンに出品された絵画で金賞を取った絵がこちらの「干し草車」

この頃、フランスでは風景画はまだまだ下位のジャンルだったんだけど、次第に増える風景画への関心もあり、アカデミーは上位ジャンルである「歴史画」と「風景画」を合体させた「歴史風景画」と言う新しいジャンルを半ば無理矢理作っているんだ。

ジャン=ヴィクトール・ベルタンはその「歴史風景画家」を代表する一人で、
1824年のサロンにも出品しているんだけど・・・。
(↓の絵がベルタンの絵。)

この絵が1824年のサロン出品作かどうかは調べても分からなかったんだけど、アカデミーが推す「風景画」はこういう絵だったんだね。

ところが、ベルタンの絵は一部の保守的批評家からは評判が良かったものの

様式にこだわり過ぎていて、真実味がない」といった酷評も目立ったという。

つまり。
それまで「万人にとって共通の理想の美、を掲げていた新古典主義」が中心だったフランス美術界の中に、「真実=実際に目に見えてるもの」を重要視する風は少しずつ流れてきてはいたんだね。

なので言わばコンスタブルは、そこに大きな風穴を開けた、と言っても過言じゃないんだと思います。

見どころ

今回は、テート美術館&国内で所蔵されてるコンスタブルの作品展なので、残念ながらサロン・ド・パリで金賞を取った「干し草車」の展示はナシです。(干し草車はロンドンナショナルギャラリー所蔵)

でも、「ターナーとの対決」の再現が直接見られるのは、なんと言っても大きな見所じゃないかな。

イギリス以外では初となる、2人の対決の再現展示

1832年に開催されたロイヤル・アカデミー展で、なんと2人の絵は隣同士に並べられることに。

全体が寒色系でまとまった自分の絵が、それよりもサイズが大きく燃えるような色彩を散りばめたコンスタブルの絵と並べられることを知ったターナーは、

ヴァーニシング・デー(展覧会のオープン前に、搬入された自分の作品に手直しや最後の仕上げができる日)に、コンスタブルが席を外した隙に、自分の絵に濃い赤の点を1つ入れてその場を立ち去ってしまう。

全体が寒色系で暗めだった絵に入れられた「赤い点」の効果は極めて大きく、隣のコンスタブルの「燃えるような色彩」がかすんでしまった、とか・・・

戻ってきたコンスタブルはターナーの絵に加筆された「赤い点」を見て

ターナーはすごい銃をぶっ放していったよ」と呻いたらしい。

そして更に、仕上げに許されたギリギリの時間にターナーは戻ってきて、その赤い点を海に浮かぶ「ブイ」に変えてしまったんだ。

(その絵がこちら)

ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号
作者:ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー

(そしてその横に並べられたコンスタブルの絵がこちら)

ウォータールー橋の開通式(ホワイトホール階段からの眺め、1817年6月18日)
作者:ジョン・コンスタブル

そんなエピソードを持つこれらの絵が、今回のコンスタブル展では並べられて展示されています。
(もちろん私も実際に観ましたが、中々面白かったです。)

この2点の絵画が並べられて展示されるのは1832年のロイヤル・アカデミー展を入れて今回で3回目、イギリス以外では初とされるようなので、必見ではないでしょうか。

さてさて・・・まだまだ書きたいことはありますが、今日はここまでにしまーす。

◇◇◇◇今日のおまけ◇◇◇◇

三菱1号館美術館では年間パスポートが販売されていて、こちらがとてもお得!

(カードの表面はロートレックの絵!かわええ!)

パスポートの値段は1人4000円。2人用だと7500円。

三菱1号館美術館は常設展示がないので企画展のみになるけど、1回の入場料が2000円(大人)なので、2回以上行けば元が取れます。
(2人用は、登録者1人がいれば同伴者は誰でもOK。)

今後のスケジュールとして、10月からは「イスラエル博物館所蔵
印象派・光の系譜 ― モネ、ルノワール、ゴッホ、ゴーガン(仮)
」も開催予定。

私は1月にも「ルドン、ロートレック展」でこの美術館に行ってるのに、その時はパスポートを買わず当日券で入ってしまい(涙)
ちょっともったいないことしました。。

三菱1号美術館はロケーションもとても良いし、美術館自体も大き過ぎずちょうどいいです。建物も素敵ですし。

また、展示室から展示室へむかう廊下がガラス張りで、そこから下の広場やカフェが見えます。

休憩用の椅子もあるので、もちろん美術鑑賞が目的だとしても、ここでぼんやり外を眺めるのも心の栄養になりそう。

てなわけで、私はパスポートを使ってガンガン行こうと思います!(ぼんやりもしに)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?