HOCD (同性愛強迫性障害)

まず初めに断っておくと、私はLGBTQ+の方々に対する偏見はございません。この記事はあくまで強迫性障害の一つであるHOCD(同性愛強迫性障害)を取り上げています。また記事を書いている人間は、医師でもなくカウンセラーでもなく一般人の戯言であるため、多くの部分で不正確な記述があると思います。その辺りご了承ください。

また気分を害された方がいらっしゃれば、先に謝罪させて頂きます。個人的にはLGBTQ+への理解と同時にHOCDへの理解も深めていくことが、今後の社会をより良くするものだと信じております。


HOCD(同性愛強迫性障害)とは、「本当は異性愛者なのに、自分が同性愛者なのではないかと不安になってしまう強迫性障害」です。実は日本(の一般人の中)では、強迫性障害はよく知られていますが、その一つにHOCDが存在することはあまり知られていません。

強迫性障害とは、ある対象について強すぎる不安感を持ち、その不安対象に関する不快で猛烈なイメージ(強迫観念)が本人の意思に反して思い浮かび、そのイメージを打ち消すために本人が安心できる何らかの行動を長期に渡って繰り返す精神疾患です。

例えば、細菌に対する不安から手を何回も洗う、泥棒への不安からドアの鍵を何度も確認するといったごく普通のレベルから、対人不安から目をぱちくりさせたり声を出す(本人はそれでなぜか安心感が得られる)という他者からは意味不明な行為まで様々なものが存在します。

同様に、「自分が同性愛かもという強い不安を持ち、同性愛に関するイメージが頭の中に思い浮かんでしまい、その度に自分がストレートであることを確認するための様々な行動をする」というのがHOCD(同性愛強迫性障害)です。

本当にストレートならば「自分が同性愛かもという不安は持たない」「同性愛に関するイメージは思い浮かばない」というのは誤りです。きっかけは人それぞれですが、例えば

  • 同性愛に関するセンシティブな話を聞いて(行為を見て)動揺した

  • 同性に不安感(≒ドキドキ)を感じた

  • LQBTQ+関連のニュースでどの年齢でも目覚める可能性があると聞いて不安を感じた

など、同性愛者にも異性愛者にも該当するような経験、裏を返せばそれだけで同性愛者か異性愛者か判断がつかない経験を気にしすぎてしまい、不安に陥ります。判断がつかないので自分の性に関する全てに自問自答する永遠のループに陥ります。肉体的な性別ならまだしも、実は性的指向という心の問題は証明のしようがないのです。いくら自問自答したところで明確な答えはありません。

自分が同性愛者かもしれないという不安感から、同性が怖くなっていきます。同性が怖いので同性を見た瞬間ドキドキするようになっていきます。このドキドキは不安感からくるものなのですが、冷静ではないので性的にドキドキしているのでは?という不安に変わり、そのうち本当に性的にドキドキしている感覚に陥ります。にわかには信じられないかもしれませんが、妄想に近く、心気症(ちょっとした体調不良の原因が重い病気なのではないか?という不安がエスカレートして、本当に自分が重い病気だと信じてしまう。不安が長引くと本当に重い病気のような症状が体に現れる。)など他の精神疾患でも非常に似た事が多く起こります。決して特殊なことではないです。

自分は同性愛者なのかと絶望感を覚えると、何とか安心しようと強迫行為(異性愛の経験を思い出す、同性との性行為を強制イメージし生理的嫌悪感を確かめる等)を行います。そうすると一瞬安心しますが、結局同性を見た時のドキドキ感はなんだったのかという不安は別として残るのでループは終わりません。

抜け出すためには、暴露療法が効くと言われています。同性を見て不安感やドキドキを覚えても、強迫行為をせずに我慢します。そうすると脳がだんだん冷静になってきて、気づいたら我に返ります。先ほど感じていたドキドキ感は同性に対する性的なドキドキではなく、自分が同性愛者かもしれないという不安感から生じていたことに気づくのです。同性を見るとドキドキするというのが癖になっている場合は、根気強くこの癖がなくなるまで数週間〜数年間続ける必要があります。


以上がHOCDに関する概略の説明です。おそらくHOCDの患者も相当数いる可能性を考えれば、「同性愛に関するイメージが生じた=自分は同性愛者もしくはバイセクシャルだ」という短絡な結論に至ることは非常に危険です。もちろんそれが強迫性観念ではなく、本当に同性愛者もしくはバイセクシャルであるケースもあります。しかし同性愛に関する悩みがHOCDだった場合、このような悩みは本人にとっても周りに人にとっても、「同性愛への目覚め」「カミングアウト」と誤って受け取ってしまい、間違った方向へ進む危険性があります。誤解を恐れずにいうと「異性愛者なのに同性愛者として勘違いして生きることになる」ことになるという事です。

強迫性障害による誤解で同性にドキドキするとはいっても、その人の本質は異性愛者です。なので同性にドキドキはするけど、幸せなドキドキではない。何か違うという気持ちを抱えたまま、一生過ごしていく可能性があります。元がストレートに近い場合は、脳の誤解と生理的嫌悪感の板挟みに悩むことになります。

おそらく多くの人は親切心のつもりで、同性愛を受け入れる方向にサポートします。正直なところ一般人の知識では(私も含め)、カミングアウトなのかHOCDなのか判断はつきません。本人も悩みがセンシティブなため、冷静に自分のことを分析しにくいのは当たり前です。ネットで検索してもHOCDに関する話はあまりありません。現在HOCD患者は自分がHOCDである可能性に気づくことさえ困難な状況です。この記事がそのような人の目に留まり、専門家に相談するきっかけとなることを願っています。



あとがき

  • 同性愛者だけど異性愛者になるかも

  • バイセクシャルだけども異性愛者もしくは同性愛者になるかも

という様々なセクシャルの方向性に対する不安も同じ原理で説明できます。


強迫性障害は長引くと改善や完治が難しいです。早い段階で対処すればほぼ完治が望めますが、慢性化するとそれも自分の一部と受け入れてしまいがちです。HOCDにより10年以上も自分のセクシャルを勘違いしている可能性だってあります。昔から自分のセクシャルについて悩み一度結論を出したもののあまり幸せではない場合は、今一度専門家に相談した方が良いと思います。

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