私の部屋。

ベッドの上、布団の中。
壁。
勉強机。
小花柄のスカート。

ベッドの上、布団の中。

私が最も安心する場所は自分のベッドの上、布団の中だけだった。
何も見えなくて暖かい場所。
母からいつも怒られていた。
学校でも友達はいなかった。
私の存在は望まれていないものだと思って、悲しくて怖くて辛かった。
私の存在を世界から消してしまうために、布団の中でうずくまっていた。

私にとってエデンの園はどこだったのか考えると幼少期から使っていたベッドが浮かんでくる。
楽しい場所だった訳ではない。
けれど安心できる場所がここだけだったから
本を読んだり絵を描いたり、家にいる時はずっとベッドの上にいて過ごしていた。
布団の中は暖かくて他者から身を守ってくれる。盲目の世界、エデンの園。
私の育った故郷はベッドの上。

勉強机

ここで真面目に勉強していた記憶はあまり多く無い。
学校の勉強はさっぱりだった。
けれど確かに私が学んでいた形跡や思い出はここに集まる。
机の上で自分自身と向き合っていた。
ここで私を否定するのも私、私に語りかけるのも私。
言葉は日記の文字になったり、スケッチブックの絵になったりした。
時に本やらアニメやら他者からの言葉を取り込んで
私は自分の姿形を作っていった。

果実を食べた時、アダムとイヴは罪を知り自分達が裸であることに気がつき身を隠す。
物語では一瞬の出来事に思うが、実際人は善悪を時間をかけて知っていく。
幼い頃は自分の姿、外見ではなく人格という本質的な姿は見えてこない。
善悪も何も知らず親の言葉を神の如く信じ動いていた。
けれど勉強机は神の言葉の外側、自分の内側の領域。
自身の声が囁いた知恵を、私は身のうちに取り込んでいく。
そしていつしか知恵によって理想が生まれ、現実の自分と比較し苦しんでいった。自分を知って恥ずかしくて悔しくて怖かった。
だから上辺を作って、本心を隠していった。

小花柄のスカート

私の一番初め。
イヴがアダムの肋骨の一本から生まれたように、私はこのスカートによって生まれた。

母が私に作ってくれたスカートだった。
このスカートを履いている時は自分が誰よりも可愛く思えて何をしていても楽しかった。幸せだった。
この気持ちを私以外の人にも共有したい、そう思った。
その時初めて他者を想った。
私はこの気持ちを広めたい、そういう人生にする。
5歳の頃にそう決めた瞬間からAINAという存在は生まれた。

ドアの向こう

ドアの向こうからはもう私を守れるものはない、そう思っていた。
ベッドの外、部屋を出たら楽園の外。

寂しくて悲しくて辛くて怖くて
そんな自分を誰も知らないと思っていた。
誰も理解してくれないし認めてくれないと思ってた。
けれど今、楽園を出たらあなたがいた。
出会ったあなたもきっとどこかの楽園から出てきたのでしょう?
外に出たからあなたに会えて私は嬉しい。
私はあなたが好き。ありがとう。


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