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どうやらゾンビのおでまし

日本のアイドルは脱退、解散の嵐。このシステムを完全に理解したのはつい最近のことだった。


2019年。一本の動画が私を大きく揺るがした。

既存のアイドル像がぶち壊れ、革命が起きた。

BiSHの「I am me.」だ。これから語るBiSと出会うのは、この2ヶ月後のことになる。


BiSの歴史は長い。
初期BiSはアイドル戦国時代と呼ばれる2010年代に結成された。過激なプロモーションやロックな曲が一部の層にウケた。ダイブやサークルが巻き起こる、今までのアイドルにはないライブはさぞ目を引いたろう。
日本武道館での解散を目標にしていたが叶わず、横浜アリーナで解散した。WACKのアイドルが武道館を目指す理由の一部にはこのような背景があるからだろう。
2期BiSは、初期BiS発起人プールイやプロデューサー渡辺氏を中心に形成。グループをリーグ制で二分したり、ラストシングルでは9分間の中でパンクロックをオマージュした超刺激的な曲がリリースされるなど、刺激的な活動は3年で幕を閉じた。



そして誕生した「3期」BiS。再々始動。



アイドルを、WACKを知ってまだ2ヶ月の私には、血眼アー写をフォロワー25kチャレンジを何も理解できなかった。

でも惹かれた。声も顔も知らない彼女たちに。

顔出し前のイベントにも行った。ビラを配っているだけなのに好きになった。



ところで、研究員(BiSのファン)には必ず通じる「ゾンビ」という言葉がある。3期BiSの1stアルバム収録曲であり初めてMVが公開された「BiS〜どうやらゾンビのおでまし〜」から発生したワードだ。
先述したように、BiSは結成解散を繰り返し3回目。メンバーの脱退を含めた変化は数知れず。つまり研究員それぞれに愛着の湧いている時期やメンバーが存在する。
BiSのはじまりのこの曲は、3期という新体制を受けられない研究員を揶揄するような皮肉った歌詞になっている。
結果、懐古厨はゾンビと呼ばれ、良くも悪くも一括りにされた。



話を戻して8/4。またも自分の音楽生活が変わる。

それは、3期BiSの初ステージTIF。
炎天下の中で叫ぶオタクを前に登場した小さい5人。オーディションに合格して2,3ヶ月の彼女たちは、まだまだ初々しく、一生懸命に踊り歌う姿は画面越しの私を震わした。

それからありとあらゆる情報を集め続け、時にフリーライブに通い、イベントに赴いた。MVが公開された時は跳ねて喜び、メンバーの脱退は池が作れるくらい泣いた。

2人目の脱退を後に、メンバーは4人に落ち着いた。
4人は歌唱力はWACK他グループ以上の才能を発揮し、キャラクターも非常に個性的だった。なにより身長の小さい彼女たちがステージの端の端まで使って全力でパフォーマンスする姿は、先輩も叶えることのできなかった武道館公演を思い描かせてくれた。


この4人で日本武道館に立てる。3期の研究員をしてそう思った人はきっと少なくない。私もその1人だった。

時は進み、2021年メンバー加入。初期メンバー4人と新メンバーの5人組となった。

そして2022年7月。ついにそのバランスが崩れる。初期メンバーが1人脱退した。

例に漏れず沢山泣いた。しかし脱退をもってしても現場に足を運ばない自分がいた。私の中でBiSは数多ある中の1グループになっていた。

その後も1人の加入を経て、5人組として活動していた。

大事なことなので繰り返し述べるが、アイドルは流動的だ。




2022年12月16日。初期メンバーの2人が脱退すると発表された。



いよいよ自分の中でBiSが崩れていった。
私が愛した彼女たちの姿はもう無いように思えた。



発表直後に急いで買ったチケットを握りしめ日比谷野外音楽堂に向かった。負の感情をこんなにも抱いて臨んだライブは初めてだった。


終演後、私の研究員人生は幕を閉じた。



私は「ゾンビ」になった。



全てを理解した。可愛くて一生懸命な女の子を気軽に応援できることと裏腹に、一瞬で儚く消える未来があることを。


家に引きこもってた私を連れ出してくれた。絶望を感じた時、一筋の光をくれた。彼女たちに送ったケチャもツイートも全部愛そのものだった。しかしそれも過去のものになってしまった。


この歌割りはあの子じゃなきゃ。辞めた子が作詞した曲はもう本人は歌えない。辞めたメンバーのいないBiSなんて考えられない。そんなマイナスな気持ちは現研究員の明るいツイートで押しつぶした。
情報難民になるのが怖い、その心だけでTwitterだけはチェックした。ただそれだけ。

それからしばらくして3月に恒例のWACK合同合宿が開催された。私は見ることができなかった。最終日、3名の加入が決定した。


6人体制のBiSは、2期以前のBiSゾンビを3期BiSゾンビを、そしてまだ見ぬ未来の研究員を巻き込むために毎日SNSの更新を欠かさない。


今週末はいよいよ新体制お披露目ワンマンライブがある。
私はまだ見に行けない。


そういえばゾンビってまた人間に戻ったりするんだろうか。また泣いたり笑ったりできるだろうか。


何度でも飲み込んでいけ
何度でも行かなくちゃ

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