CouCouショーケース セルフアフタートーク

 先日、Circus Laboratory CouCouのショーケースに出演させていただきました。

 CouCouは新座にある現代サーカスのための会員制スタジオで、今回のショーケースはそんなCouCouの初イベントです。

「夢」

 記念すべきCouCou『ショーケースvol.1』で披露させていただいた作品は、夢から着想を得たものです。

 というのもここ最近、というか創作期間の前後なのですが、夢を題材にした作品に出会う機会が多かったので。

・『クジラアタマの王様』伊坂幸太郎
・『セブンブリッジ』板橋しゅうほう
・『オカルトトリック Smoke And Mirrors』八月翔

 あれ、意外と多くなかったな。
『セブンブリッジ』が漫画で全14巻、『オカルトトリック〜〜』は同題『オカルトトリック』の続編で、本作品の制作期間が大体一カ月ほどなので感覚としてはやっぱり多かったです。

 この3作品はそれぞれ夢に対して持つスタンスが違っていて、それぞれの作品のネタバレになったら嫌なので詳しくは見てみてくださいなのですが、ともかく「夢」というのは面白い題材だな、ということでそれをやるか、となりました。モチーフ=夢でしょうか。

 他にも映画『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』『マトリックス』『ブレードランナー2049』を参考に、直接的な題材として『胡蝶の夢』を引用しました。

「無常感」

 自分の中には一種の「無常感」のようなものがあって、ジャグリングと夢はそこで繋がっている気がしました。

 ジャグリングはどんなに練習しても、ミスをするときはミスをします。例えばドロップだったり、キャッチでもたついたり。人間がやることなのだからそれはそう、ではあるのですが、その不確実性が好きです。

 道具の描く軌道やストール・バランスを行う瞬間の美しさも短い間のことで、その儚さも好きです。

 夢は、言ってしまえばただの生理現象です。現代においても未解明な点は多いようなのですが、それ故に夢占いや心理学など「意味」を見出そうとする人たちもいます。多くの創作の題材になるのも、その不明瞭さが魅力の一つだろうと思います。

 どんなにリアルで鮮明で幸せな夢でも、またどんなに辛い悪夢でも、覚めればそれまでです。予知夢、正夢など神秘的に語られることもありますが、所詮は生理現象。脳の働きで見える錯覚でしかありません。その呆気無さも好きです。

 儚さ、不明瞭、不確か、呆気無さ。ジャグリングと夢はそういう面で似ているな、と感じています。

「音」

 構成の組み合わせ的には1番目と4番目、2番目と3番目がそれぞれ「有形」と「無形」です。

 1番目の曲は、徳澤青弦の『カジャラのテーマ #1 ED version』です。パーカッションのリズムが特徴的な曲です。打楽器の音って形あるものだと思っていて、ハッキリしているというか、そこに存在していることが確信できる音色だと感じます。

 2番目は、朗読音源です。同じ声を聞いた時に録音と肉声とで、録音は形が無いように感じます。確かに音はあるけれど、そこには何もない感じです。

 3番目の曲は、フィリップ・グラス作曲でラビニア・マイヤーによるカバー『Etude No.9』です。打楽器の音に対してハープのような弦楽器の音は、揺れのある音です。形がなく、不安定に感じます。

4番目の肉声は、この中で最も形を感じる音だと思います。人が自らその場で発する音は、録音や打楽器・弦楽器の音と比べても存在が強く、「肉声」という字の如く実体を感じます。

 これらそれぞれで同じ演技を見せましたが、どこか違って見えるのではないでしょうか。もちろん映画の再上映のように完全な再現は不可能ですが、それを差し引いても動きの見え方は違うと思います。

「胡蝶の夢」

 「以前、荘周(そうしゅう)は夢の中で蝶(ちょう)になった。ひらひらと飛んでいて、蝶そのものであった。
自身が楽しくて、思いのままだった。
そして自分が荘周であることに気づかなかった。
急に目が覚めて、我にかえって、そこには荘周がいた。
分からない、人間である荘周が夢の中で蝶になったのか、それとも蝶が夢の中で人になったのか。」

 話には続きがあって「荘周と蝶は異なるが、自分ということに変わりはない。すなわち物の変化である」となります。「自分が人であるか蝶であるかは表面的なものでどちらでも良く、本質である己のありのままを生きれば良い」というような話です。

「夢の中で夢を見る」

 お客さんの前に座って、自ら曲をかけてなんとなく立って始めるのは何か作品と他との境界まで曖昧にしてしまう気がして、導入部を作ることにしました。

 先ほども紹介した『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』や『マトリックス』はいわゆる電脳世界と現実世界における肉体と自己意識の話です。

 もう一つ夢、というか『胡蝶の夢』というテーマに触れるにあたって、有名な映画作品に『インセプション』があります。

 『インセプション』は夢の中でまた夢を見るという展開があります。それをしようと考えて、タイプ音→曲①→朗読→曲②→肉声→タイプ音という形にしました。

 地続きのようで繋がっていない構成のさらに外側に、要素を付け加えようとしました。

 先ほど有形・無形の話をしましたが、別にどちらが現実でどちらが夢です、みたいな話ではないので成り立つのではと思っていたのですが。

 結局タイプ音を途中で止めて曲を始めているのも、音として具体的すぎるのもあって全然上手くなかったですね。


 もっと良く出来るものだと思います。単純にルーティンもミスが多く練度が低かったです。改良も必要です。
 作品のアプローチそのものを変えたり、さらに要素を付け足した方がいいのかもしれません。
 いずれにせよ、もう少し向き合っていきます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?