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ブロックチェーン入門

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この単元では、ブロックチェーンの動作原理について、みなさん各自が有効なメンタルモデルを頭の中に作れることを学習の目標とします。そのために、適切な比喩などを用いながら、ブロックチェ…
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#ブロックチェーン

ブロックチェーンが抱える課題にどう対応するか、多様な構造・技術開発の狙い(コラム)

ブロックチェーンには、最初のブロックチェーンであるBitcoin(ビットコイン)のようなパブリックブロックチェーン以外に、コンソーシアムブロックチェーンとプライベートブロックチェーンという異なる運用の仕方をするネットワークが存在しています。また、ブロックチェーンを活用したプロジェクトが増えていく中で、ブロックチェーンが抱える課題を解決するために、様々な技術開発が進められています。 どのような課題からブロックチェーンと呼ばれる技術は多様な構造を持ち、また今日、様々な技術開発が

契約書や証明書はブロックチェーンだけで実現できる?(コラム)

ブロックチェーン技術を活用した事例として、証明書や契約書をブロックチェーン上で保存・管理するという事例があります。ブロックチェーン技術を活用するメリットとして、「誰が」「どの証明書・契約書を」「いつ」「どこに」書き込んだのかを明確にして共有し、改ざんできないような形で保存・管理できる点が挙げられます。ただし、「ブロックチェーンだけで実現できる」という表現には注意が必要です。 ブロックチェーンだけでは実現できない現代の私たちは、コンピューターを使って証明書を作るための基礎的な

ブロックチェーン構築を効率化する「RaaS(Rollups-as-a-Service)」とは(コラム)

2023年に登場したモジュラー・ブロックチェーンは、ブロックチェーンの各タスク(コンセンサス、トランザクションの実行、データアベイラビリティ、セトルメント)をモジュール化し、それぞれに特化したレイヤーを準備することで、ブロックチェーンにおけるスケーラビリティ問題を解決するソリューションです。 ブロックチェーンの構築をさらに効率化するために、2023年以降、「Rollups-as-a-Service(RaaS、サービスとしてのロールアップ)」を提供するプロジェクトが増えてきま

複雑な開発を避けつつスケーラビリティ問題を解決、新ソリューション「パラレルEVM」とは(コラム)

パラレルEVM(Parallelized Ethereum Virtual Machine)とは、複数のトランザクションを同時に実行(並列処理)することで、イーサリアム(Ethereum)ブロックチェーンのパフォーマンスを上げ、高速処理を可能にするソリューションです。2023年頃から注目されるようになり、2024年はパラレルEVMの年とも言われるほど、数多くのプロジェクトが開発を進めています。 EVM(Ethereum Virtual Machine、イーサリアム仮想マシン

POSを補う新コンセンサスアルゴリズム「プルーフ・オブ・リクイディティ(POL)」とは(コラム)

ブロックチェーンのコンセンサスアルゴリズムとして、プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake、POS)やプルーフ・オブ・ワーク(Proof of Work、POW)などが存在しています。今回はPOSの欠点を補うべく設計されたコンセンサスアルゴリズムであるプルーフ・オブ・リクイディティ(Proof of Liquidity、POL)について解説します。 POSの欠点POSには以下のような欠点があると考えられています。 1) POSのバリデーターの多くは暗号資産を

スケーラビリティ問題を解決する新ソリューション「モジュラー・ブロックチェーン」とは(コラム)

暗号資産やNFTなどの利用が増加するにつれて、ブロックチェーンのスケーラビリティが問題になっています。これまでにも様々なスケーリングソリューションが開発されてきましたが、2023年より注目されるようになったソリューションの一つに「モジュラー・ブロックチェーン」があります。2024年3月にイーサリアム(Ethereum)が行った大型アップグレード「Dencun(デンクン)」も、モジュラー・ブロックチェーンの可能性を広げることが期待されています。モジュラー・ブロックチェーンとはど

イーサリアムの新レイヤー2「Astar zkEVM」はどんなブロックチェーンか(コラム)

日本発のパブリックブロックチェーンAstar Network(ネイティブトークン:ASTR)を展開するStake Technologies(ステイクテクノロジーズ、本社:シンガポール)は、2024年第一四半期に「Astar zkEVM Powered by Polygon(以下、Astar zkEVM:アスター ジーケーイーブイエム)」メインネットのローンチを予定しています。このAstar zkEVMの開発に当たり、Astar NetworkとPolygon Labsは日本に

ブロックチェーン入門_ #コラム:マイニングを個人がするには?暗号資産を得るよりも大切なこと

Bitcoin(ビットコイン)に代表される、ブロックチェーン上の取引データを承認し新しいブロックを生成する時に、膨大な量の反復計算以外では解けない計算式の解を求め、ブロックチェーンの連続性の正しさの担保に利用する仕組みを、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)やマイニングと言います。ブロックチェーン戦略政策研究所の樋田桂一代表は「マイニングは仕組みやプレーヤーを変えながらもずっと続いていくものです。暗号資産(仮想通貨)を報酬としてもらえることに注目されがちですが、ブロックチェーンエ

ブロックチェーン入門_#コラム:パブリックとコンソーシアム、運営事業者が語るメリット・デメリット

ブロックチェーンを基盤にした DApps を開発する際、 パブリックチェーン と コンソーシアムチェーン 、どちらのブロックチェーンを選べばいいのでしょうか。両者は管理者の有無や取引の合意形成などが異なり、得られる効果や検討すべき課題も異なります。「パブリックブロックチェーンの恩恵をより多くの人に」をパーパスに掲げる株式会社HashHubの平野淳也CEOと、コンソーシアムチェーンを用いた「ibet for Fin」などを展開する株式会社BOOSTRYの佐々木俊典CEOに、それ

ブロックチェーン入門_#14:ブロックチェーンの課題解決になるか - レイヤー2編

スループット が飛躍的に向上し、手数料の削減の効果も期待されている「レイヤー2」とはどういったものでしょうか。概要やメリット、課題を解説します。 レイヤー1とレイヤー2■レイヤー1とは ブロックチェーンそのものをレイヤー1と呼ぶことがあります。トランザクションをブロックに組み込んで記録し、その存在や内容を後から検証可能にする仕組みです。いかなる方法でも記録の否定できないように工夫して設計されています。 ■レイヤー2とは レイヤー2は、ブロックチェーンの外でトランザクシ

ブロックチェーン入門_#13:ブロックチェーンの課題解決になるか - プルーフ・オブ・ステーク編

Ethereum (イーサリアム)が「プルーフ・オブ・ワーク」を捨てて移行したという「プルーフ・オブ・ステーク」とは何でしょうか。それはブロックチェーンの課題を解決する鍵となるのでしょうか。プルーフ・オブ・ステークの概念や安全性について解説します。 プルーフ・オブ・ステークの基本概念スマートコントラクト の実行プラットフォームであるEthereumは、2023年9月の大型アップデートにより、それまでのプルーフ・オブ・ワークに基づく仕組みからプルーフ・オブ・ステークに移行しま

ブロックチェーン入門_#12:ブロックチェーンにおける五つの主要な課題

ブロックチェーンには様々な技術的な課題があります。それらはどういったもので、どのような対策が打たれているのでしょうか。一つ一つ、確認していきます。 ブロックチェーンの課題ブロックチェーンの技術には、次の五つの主要な課題が存在します。 課題1:時間と資源の効率性 プルーフ・オブ・ワーク はブロックチェーンに耐改ざん性をもたらしますが、本質的にはくじ引きであり、当たる確率はその時々で変わります。そのため、ブロックが生成されるタイミングは正確には予測できません。(関連単元:「

ブロックチェーン入門_#11:仕様のアップデート - ハードフォークやソフトフォークとは何か

ブロックチェーン技術を改善するために行われる変更には、ソフトフォークとハードフォークという2種類のアップデート方法があります。それぞれの概要と事例を解説します。 ブロックチェーンの仕様変更とは?ブロックチェーンの仕様を変更すると、新旧のクライアントソフトウェアがどのようなブロックを認めるかに差が出て、新しいチェーン(新チェーン)と古いチェーン(旧チェーン)が分かれます。この分かれ方には、ソフトフォークとハードフォークの2種類があります。 ソフトフォーク■ソフトフォークの意

ブロックチェーン入門_#10:ブロックチェーン技術 ナカモト・コンセンサス - 歴史を一つに

Bitcoin(ビットコイン)のみならず様々なブロックチェーンで採用されている「ナカモト・コンセンサス」とはどんなアルゴリズムなのでしょうか。概要と考え方を解説します。 コンセンサスとは何か分散システムにおけるコンセンサスは、並行して計算に参加している、壊れていない複数のコンピュータから見て、同じ変数の値が一致することです。 人間が何かに合意することとは異なり、コンピュータの間で特定のアルゴリズムによって自動的に値を選んでいきます。 ブロックチェーンにおけるコンセンサス