05 はやと "「長く愛される花は」"

「長く愛される花は、儚く終わることが肝要」
1990年代後半。少年時代に読んだある漫画で、敵の首魁が言い放ったセリフです。
あらゆることを漫画から学び育ってきた私ですが、このセリフは色んな過程をすっ飛ばしてストンと腑に落ち、あっさり私の価値観の真ん中に居を構えました。

時は流れて2004年、ドゥブルベの歴史から見れば遥か古の時、「花鳥風月」という雅な春公演が催されました。それはそれは、いとあはれなる舞台だったと伝わっております。
その公演にて当時のどぅぶの民達が残そうとした思いが、「終わりあるからこそ美しい」というものだったとか……。

一応05を代表する立場で書いているのに、自分達の公演を差し置いて、まだ入学すらしていない年の春公演を伝聞表現でうろ覚えのままフィーチャーしていく姿勢を、人は蛮勇と呼ぶのかもしれません。
それでもそのメッセージは、冒頭のセリフ同様スッと私の心に入り込み、"終わり"への憧れを確たるものとしたのです。

その言葉達は「花は儚く散るからこそ愛され、散り行く花を惜しむ心こそが、また巡り来る次の春へのプロローグ」そう私に教えてくれたように思います。

更に時は進み、2000年代中盤〜後半。
現役時代、春公演終了後の平日。ふらふらとキャンパスを歩いていると、当然多くの学生が目に入ります。その中にドゥブの人を見つけると、たとえ馴染みの薄い他ジャンルの先輩や後輩でも(よし、味方だな!)という謎の感覚に導かれ、無駄に集い、いつの間にか人数も増えて「とりあえず飯食いに行くか」みたいなことが頻発したものです。
こういう「何このメンツ?」というヘンテコな集まりと、梅雨入り前の生温い空気が妙にしっくりきて、私は割と好きでした。

今思えばあのヘンテコ集会は、公演へ向けていた熱意の残り火に惹かれていたのかもしれません。
そしてその仄かな残り火が、いつしか情熱へと姿を変え、また次の公演に向かっていく。
そんなサイクルの一部として、私もその熱を受け継ぎ、次の代に受け渡してこれたのだとすれば、少しだけ自分を誇らしく思えます。

さて、時は現在に戻り、2度目の30周年公演【つくろう】を迎えようとしています。
この数年、新型コロナウィルスの流行によって、ちゃんと"終われなかった"舞台を経験してきた方も少なくないでしょう。
いきなり"終わり"を取り上げられてしまった全ての作品達に対して、私達がしてあげられることは何もありませんでした。

その経験があるからこそ、今回の公演は最後まで駆け抜けたい。最後の幕が下りた後、素直に名残りを惜しみたい。納得のいく"終わり"を迎えたい。
そうやってみんなで、"長く愛される花"のような公演をつくりたいと、私はそう考えています。

そして願わくばこの公演だけでなく、世の中のあらゆる作品がちゃんと"終わり"を迎えられますように……。
特に【ガラスの仮面】、【HUNTER×HUNTER】、【バガボンド】。こいつらにはちゃんと完結してほしくて仕方ありません。どうにか諸先生方にバリバリ続きを描いてもらう手段は無いものでしょうか。

以上。
漫画大好き、05のはやとでした。
またね☆

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