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福島第一原発の見学に行った話

こんにちは。
久々にnoteを書きます。Northです。

今日(2022年8月3日)は福島第一原発の見学に行きました。かなりいい体験をしたと思うので、文章書く練習も兼ねて今日の話をします。震災や津波の話は避けられないので、そういった話が苦手な方はそっと画面をバックしてください。

1.なんで見学に行ったの?

まず始めに、今回福島第一原発の見学へ行った理由をお話ししたいと思います。

プロフィール欄に載せているように、僕は今年度入学した東京大学の1年生です。
東大では1年生を対象とした「初年次ゼミナール」(通称:初ゼミ)なる授業が必修で開講されています。もちろん僕も履修しました。
端的に言うと今回見学に行ったのはこの初ゼミの課外としてなんですが、「初ゼミってなにそれ美味しいの?」って読者の方もいると思うのでざっくり紹介します👍
ちなみに初ゼミは多分美味しくないです。

以下東大のホームページに載ってる初ゼミの紹介を見てみましょう。

初年次ゼミナールは、「学部教育の総合的改革に係るアクションリスト」で掲げられている、『「教え授ける」(ティーチング)から「自ら学ばせる」(ラーニング)への転換』を目指した取り組みの一環として設計された少人数チュートリアル授業であり、学生に基礎となる学術的スキルを早期に習得させるとともに、学士課程全体を通して能動的な学習への動機づけを図ることを目的としています。具体的には、1クラス20名程度の規模で、教員と学生がお互いに顔の見え合う、よりきめ細かな指導によるチュートリアル方式の授業を通して、受動的な知識を授かる形での学びの意識を変革して、自発的に学習する姿勢の涵養を目指します。

初年次ゼミナールは、文系理系ともにすべての学生が受講しなければいけない、基礎科目必修2単位の授業で、第1セメスター(第1・第2ターム連続)に開講されます。文系理系の多様な分野の教員が1週間の曜限のなかで、多様な分野の課題に即した授業を展開します。学生がどの授業を受講するかは選択制で、各担当教員が専門性を活かした授業内容をシラバスに詳しく記し、学生はその情報にもとづいて、クラスごとに指定された曜限に開講される授業の中から、履修したい授業を複数登録します。
http://komex-fye.c.u-tokyo.ac.jp/programmes

な、な、長げぇ…何言ってんだ…(この文章真面目に読んだことある東大生何人いるんですかね)
ざっくり説明すると「少人数で教員の専門性活かした学生が主体的に学ぶ授業やるわ😁」ってことです、たぶん。この「教員の専門性」ってとこがおそらく肝で、僕らのクラスだと「航空宇宙工学の先生による水ロケットについて学ぶ授業」とか「数学の先生による数式を可視化する授業」とかが選択肢としてありました。
僕はそんな選択肢の中から「科学技術と人・社会とのつながりを考えてみたい」と思い「原発事故を科学する」という授業を選びました。(抽選で第一希望が通ったのでラッキー✌️)
原発の専門家である先生のもとで「福島第一原発事故をテーマとして、知見が不十分な中で関係者の合意形成をする国際会議を設計する」ことを目標に授業を進めました。

そう、勘のいいあなたならお気づきですね‼️今回の見学は先生が希望者を募って開催してくれたものです‼️ほんと大学って面白いなぁと思いました。高校まで課外で原発なんて行ったことないですからね。

ってことで、初ゼミの「原発事故を科学する」という授業の課外として今回僕は福島第一原発の見学に行ってきました🚃
次の章からは具体的に何してきたか説明します〜

2.実際のとこどんな感じだったの?

日程は↓

11:00 JR富岡駅集合
11:10〜12:20 JAEA CLADS富岡町・とみおかアーカイブ・ミュージアム見学
12:30〜13:00 昼食
13:00〜14:20 廃炉資料館見学/概要説明
14:00〜15:00 移動/準備
15:00〜16:00 福島第一原発構内見学
16::00〜16:40 貸与物返却/移動
16:40〜17:15 質疑応答/アンケート回答
17:20 解散

引率として先生、電力会社の方、先生の研究室のB4の方2人の合計4人が来てくださいました。B1は合計で16人参加してました。
また上にあるように東京電力の施設だけでなくJAEA CLADS富岡町、とみおかアーカイブ・ミュージアムにも訪れました。

それではここからは時系列順に1日の流れを追ってみましょう!

2-1.福島へ

朝6:30に起きて上野から常磐線特急で富岡駅へ向かいます。茨城出身なので常磐線は慣れてるんですが、水戸以北は初めてだったので電車の外見てウキウキしてました。途中で寺田寅彦の『科学歳時記』を読んだり、寝たりして無事富岡駅到着🚉

2-2.原発の外側

富岡駅からはバスでJAEA CLADS富岡町(以下:CLADS)ととみおかアーカイブ・ミュージアム(以下:アーカイブミュージアム)へ。(CLADSとアーカイブミュージアムの2つは隣同士にあります)
先生からは「午後原発の中入るけど、午前は原発の外側で何があったかしっかり見よう」というお話しがありました。バスの中で「実家の風景に近いな〜」なんて思ってたらすぐに到着。
20人ほどのグループだったので、半分に分けてそれぞれの見学に行きました。僕のグループは最初にアーカイブミュージアムを、その後にCLADSを訪れました。

アーカイブミュージアムの常設展は始めに富岡町の歴史や成り立ちを紹介した後で、震災の爪痕を色濃く残す資料を展示する作りになっています。
当時の小学生が書いた日記や津波によって流されたパトカーがそこには置かれていました。
東日本大震災の時僕は小学2年生で、もう当時の記憶はあまりありません。しかしあの震災がたくさんの人に甚大な被害を及ぼしたという事実が、資料を見たことで改めて胸に刻み込まれました。

とみおかアーカイブ・ミュージアム


そのあとはもう1つのグループと入れ替わりでCLADSへ。CLADSとは日本原子力開発機構の廃炉環境国際共同センターのことで、福島第一原発の廃炉措置と環境回復に関する研究開発を行なっています。ここでは実施中の研究についての説明を受けました。
レーザー遠隔分析技術開発や炉心破壊メカニズムの解明といったテーマの研究を行なっていることが分かり、安全な廃炉のためには更なる技術開発が必要であること・廃炉までの道のりが自分が思っていたよりもずっと長いものであることを知りました。

CLADSで配布された資料

このあと昼ごはんを食べて、午後はメインの目的であった福島第一原発の見学へと向かいます。

2-3.いざ構内へ

午後は廃炉資料館からスタートです。

廃炉資料館入り口すぐの様子

ここでは「事故当時何があったか」「現在どのように廃炉作業を進めているか」についての紹介を受けました。

前者に関しては授業内である程度学んでいましたが、1号機から4号機までの詳しい事情は知らなかったので改めて学ぶ機会があったことがありがたかったです。
後者については「汚染水対策と処理水の今後について」の話が印象に残っています。福島第一原発では原子炉内に残っている燃料デブリ(溶けて固まった燃料)に触れた地下水や雨水、冷却水が汚染水となっています。この汚染水を減らすために、凍土遮水壁やサブドレン(井戸)などを用いて重層的に対策を打っていることを詳しく説明していただきました。また、発生した汚染水はさまざまな過程を経て処理水となること、処理水の処分に向けて動き始めていることも紹介していただきました。ニュースでも処理水の海洋放出が取り上げられていますが、具体的な手法や数値を示しながら説明していただけたおかげで理解が深まりました。

このあと見学の流れを会議室で確認した後、バスに乗ってついに構内へと入っていきます🚌

(残念ながら構内へのスマホの持ち込みは禁止だったため、写真は撮れませんでした。ここからは写真なしでお付き合いください🙇‍♂️)

バスは資料館から構内に向けて、約半年前まで帰還困難区域だった地区を走ります。11年前のままで残った商業施設や荒れ果てた田んぼ、放射性廃棄物の貯蔵施設の横を通りながら、高いとは言い切れない居住率の話を聞いて「事故の影響はまだこんなにも残っているのか…」と思ったことを覚えています。


バスが到着したすぐ近くの建物には東電や三菱、IHIなど多くの企業のロゴが貼られており、たくさんの企業や人が廃炉に向けて動いていることを強く実感しました。
構内に入った後はIDカードと線量計をお借りして、バスに乗って移動します。基本的に外には出ず、車内から汚染水を処理するALPSや固体廃棄物貯蔵庫などの各施設の説明を受けました。ここで驚いたのは、処理水のタンクの多さです。1つ1000トンのタンクが所狭しと敷地内の一角に並んでおり、処理水の処分がいかに喫緊の問題であるかを物語っていました。
実はこの見学で一ヶ所だけ敷地内に降りることができた場所があります。それは1〜4号機を俯瞰できるエリアです。ここでは1号機から4号機の説明を受けながら、まだ残る水素爆発時の瓦礫や実際に稼働している凍土遮水壁の様子、廃炉作業が続いている原子炉建屋の様子を直に確かめました。写真や映像では見たことのあった原発ですが、実際のサイズ感や各原子炉建屋の様子の違いを身をもって体感し「こんな巨大なものを解体していくのか…」と廃炉作業の困難さを感じました。
最後には実際の処理水の入ったボトルを見せていただき、トリチウム以外の放射性物質は十分に取り除かれていることを教えていただきました。
その後お借りした線量計を返却し、資料館へと戻るバスに乗る前に今回の見学での被曝量が大体歯医者で2回レントゲンを浴びた程度のものであったことを伝えられました。個人的には構内での被曝量が思ったより低く、少し驚きました。

バス内では質疑応答の場が設けられ、地域住民の方々とのコミュニュケーションや安全性の周知活動などについての質問があがっていました。
資料館に戻ると、質疑応答の続きをしながらアンケートに回答する時間が設定され、今回の見学についての振り返りを行いました。

廃炉資料館で配布された資料

その後17:20ごろに富岡駅で解散し、全日程終了となります。

3.今回の見学を振り返って

ここまで1で見学に参加した理由を、2で実際の見学について書いてきました。
さて、今回の見学を振り返って僕が感じたのは「まだまだ震災と原発事故の影響は残っている」ということと「状況の改善に向けて歩みは続いている」ということです。
今年で東日本大震災から11年が経ち少しずつ当時の記憶も薄くなってきました。ニュースで扱われることも昔ほどはありません。しかしまだまだ課題は残されています。廃炉に伴う処理水や廃棄物、人が入れない部分に残った燃料デブリ、荒れ果ててしまった土地、低いままの居住率、たくさんの解決すべき課題があります。しかし、それでも課題解決に向けた取り組みは進んでいます。廃炉のための技術開発は進んでいますし、3号機と4号機では燃料の取り出しも完了しました。福島県産の農作物を応援する取り組みも行われています。
残された厳しい課題から目を逸らさず、真正面から向き合って歩みを止めずに廃炉と完全な復興に向けて動いていって欲しいと切に願います。

また、今日の見学は自分が興味を持っている「科学技術と人との関わり」について深く考える貴重な機会となりました。学んだことを忘れず、これからの人生に生かしていきたいと思います。

初ゼミで選んだ授業が「原発事故を科学する」で本当によかったと思える1日でした。
それではまた次のnoteで👋

4.各種リンク 

今回お世話になった各施設と見学の際に紹介された海洋生物飼育日誌のリンクを貼っておきます。ぜひ覗いてみてください。

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