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じぶんよみ源氏物語 3 〜引き寄せのパワー〜

やめろと言われても・・・

藤壺ふじつぼという完璧な女性の登場は、
桐壺更衣きりつぼのこういを過去の人にさせただけではなく、
物語に漂う空気感をも変えてしまいます。

亡母・桐壺更衣にそっくりだと言われる
あまりに美しい女性。
恐れ多くも、帝である父の妻。

やめろと言われれば、
やめられなくなるのが人の常。

光源氏は、
磁場に引き寄せられるかのごとく、
藤壺に惹かれていくのです。

折しも、
高麗の相人の占いもあって、
光源氏は「ただ人」として、
皇族から降りることとなりました。

そこで、父帝は、
光源氏の最初の妻として、
あおいの上に白羽の矢を立てます。


彼女は左大臣さだいじんの娘。
大臣おとどとは、帝、摂政関白に次ぐ高い地位で、
光源氏の後見を託すには十分でした。


潜在意識の語りかけ

父帝は光源氏の元服に際して、
左大臣に向けて和歌を贈ります。

いときなきはつもとゆひに長き世を
ちぎる心は結びこめつや

(訳)
幼い光源氏が結んだ初元結はつもとゆいには、
あなたの娘との末長い縁を
かたく約束する気持ちも
結び止めただろうか。

「初元結」とは、
元服の時に初めて髪を結ぶための
紫色のひものこと。

帝からこんなにも光栄な想いをかけられ、
左大臣は心を込めて和歌を返します。

結びつる心も深きもとゆひに
濃きむらさきの色しあせずは

(訳)
末長い約束を込めたこの元結です。
髪を結ぶ緒の紫色が
いつまでも変わらぬように、
もし源氏の君の心も変わらなければ、
どんなに嬉しいことでしょう。


濃きむらさきの色しあせずは」

左大臣はここであえて仮定とします。

もし源氏の君の心も変わらなければ、

不吉な仮定です。

結論から言うと、
葵の上は、
10年後に非業の死を遂げます。

彼女は生き霊に取り憑かれて、
悶え苦しみながらこの世を去るのです。
愛する娘を思う左大臣の潜在意識は、
将来の悲劇を察知したのかもしれません。


異様な新婚生活

葵の上は源氏よりも年上ということで
気後れがあった上に、

帝は光源氏を可愛がるあまり、
葵の上に会う機会は多くありませんでした。

平安の女性は、
毎晩自分の屋敷で夫の訪問を待つのです。

いつも父帝の近くにいる光源氏は、
否応なしに、藤壺のそばにいることになる。

正妻の葵の上ではなく、
父の妻である藤壺への恋を募らせるのです。

思い描いた通りになるのが人生

「ただ人」として臣籍に降りた光源氏は、
自分の邸を持つことになります。

父帝が与えたのは、
母の桐壺更衣が住んでいた邸宅でした。
立派に改装し、
特に気の利く女房たちがつきました。

葵の上と結婚したばかりの光源氏は、
何一つ不自由のない邸で、
こうつぶやくのです。

かかる所に、思ふやうならむ人を据ゑて
住まばやとのみ、嘆かしう思しわたる。

(訳)
こんな所に、藤壺のような理想の人を迎えて
一緒に暮らしたいものだとばかり、一心に、
思い続けて嘆いておられる。

住まばやとのみ

「のみ」の語源は「の身」。

自分の身が、
それ以外にあり得ないほどの、強い思い。

「一緒に暮らしたいものだとばかり、一心に

恋愛未経験の光源氏にとって、
藤壺はまだ手の届かない女性。

ところが、
心が強く思うことは、必ず実現されるもの。

それが、本当の自分だから。

人は本当の自分になることができる。
強く願いさえすれば。

光源氏の潜在意識は、
彼が望む方向に、
確実に彼を運んでいくのです。





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