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ShopBot Tools社 CTOに聞く海外から見た日本国内のものづくり現場

VUILDのものづくり活動で活躍するツール「ShopBot」は、アメリカのShopBot Tools社が開発販売している組立式のCNCルーターです。海外に支社を持たず、直接販売をする会社で、輸入のハードルの高さから日本には限られた台数のみしか導入されていませんでした。
そんな中、代表である秋吉浩気が、2015年に1人でShopBotの導入支援事業と設計事業を並行的に始め、気づけば国内のShopBot台数は130台まで増えました。(※台数は2022年6月現在)

そんなパートナーであるShopBot Tools社から、COO(現:CTO)のBrian Owen氏が来日。予定の合間にお時間をいただき、日本国内のShopBot拠点を訪問するなど交流を行いました。2週間に渡る滞在の最後に、Brian氏にインタビューを行い、日本国内のShopBotの活用現場について感想をお聞きしました。

今回来日したBrian Owen氏

1984年、ノースカロライナ州州生まれ。 2014年にエンジニアリングチームの一員としてShopBot Tools社に入社し、Handibot®スマートパワーツール2.0の開発に携わる。2020年にCOOに就任し、コミュニケーションと品質管理のための新しいツールを開発するなど、社内の製造チームが成長するための支援を行なってきた。2022年今夏、元々の担当分野である技術部門リーダーであるCTO(最高技術責任者)に就任した。


ー まず、今回いくつかのSHopBot導入拠点を見学したと思いますが、率直な感想を聞かせてください。

B) 今回はVUILDを通してShopBotを購入してくれた方々を訪問したが、まず率直にShopBotが人の役に立っていることを実際に見ることができ嬉しかったです。

お会いした方々はShopBotに生産性を追い求めるのではなく、「マシンのことをもっと知りたい、まだ試したことがない技術を教えて欲しい!」と意欲的で遊心に溢れており、また、木材を見る機会が多かったので、木の歴史などを知ることができ勉強になりました。

岡山にて木の市場を見学

また、どの訪問先でも必ず話題に上がったのが、木材が現代社会とどう繋がっているのかということや、日本経済に大きく関わっているということ。木材=第一次産業という大きな枠を常に考えながら、それぞれの仕事をしている印象を受けました。

それと同時に、木材を最大限に美しく見せようとしている心に感銘を受けました。ただShopBotを使ってものづくりに励むのではなく、そこにはデザイン性や丁寧さ、木へのおもいやりまでもを感じました。

家具建築の設計製作を行うようびさんのプロダクトを見学

言葉に表すのがなんとも難しいのですが、食事に例えるなら、「ただ食べてお腹を満たす」ではなく「味わって楽しみ満たされていく」という感覚。そういった気持ちを持ちながら丁寧な仕事をすることはとても大切だし、そういった考えを持てることは素晴らしい。自分も見習わなければないけないと思いました。

そんな方々にShopBotというマシンを通して携わることができているのは大変光栄なことだなと改めて気付かされました。

北海道弟子屈にある「NESTING」の前で。部材の加工にShopBotを使用している。

この感覚は、VUILDが展開するデジタル家づくりサービス「NESTING」で建てられた家を見学した時にも感じたもの。ShopBotを使って建てられた家を目の当たりにし、ShopBotは大きなもの(家など)から小さなプロダクトまでなんでも作り出せる可能性を秘めていることが実感でき、やっぱり嬉しかったし、何よりも実物を見てホッとしました。


ー アメリカと日本のShopBotユーザーを比べてみて、何か違いなどはあったのでしょうか?

B)米国のユーザーは、何か一つに特化した専門的なビジネスをしていることが多いと思いました。例えば、看板、椅子やキャビネットなど特定の家具、窓枠など、特定の商品をつくることを事業としている。だが日本の顧客は、木材を使って幅広い商品を作っています。

文化や国民性の違いなのか、例えるならニンニクを潰す際、アメリカでは専用のキッチン用具があるのに対して、日本では専用用具ではなく包丁を使って切ったり潰したりするということに似ているのかもしれません。
今回訪問した先では、ShopBotを単なるマシンとして扱っているというより、色々なことに対応できる一人の人間として扱っていると感じました。

岡山のmorinootoさんの工房で加工について情報交換を行う

なのでこの訪問を通して、ShopBotのさまざまな活用法を見ることができてとても面白かったし、今後、アメリカの顧客と日本の顧客同士が繋がって意見交換などができたら、ShopBotユーザーの世界観が今以上に広がるのではないかと感じました。



ー ShopBot社にとってVUILDという会社がどのような存在か、またVUILDの事業をどう感じたかなど、改めて教えてください

B)VUILDのことはお客さんだとは思っていなくて、とても強力なパートナーだと思っていますVUILDと一緒に仕事をすることで、自分たちの足りない部分や変わらなければいけない部分に気付かされます。VUILDの事業は、ただ単に商品や技術を提供することだけではなく、その先にあるそれぞれのビジネスや社会貢献に繋がるよう、顧客のニーズを最大限に考えていることが大前提にあり、その部分がShopBot社ととても似ていると感じています。

VUILDが展開している「NESTING」も「EMARF」も、長いつながりを持てるような顧客とのビジネスを大切にしている印象を受けました。とても魅力的で、VUILDらしいデザイン性に優れた製品や家づくりで興味深いです。

また、今回川崎オフィスや本牧工場で色々なVUILDメンバーと話をして、それぞれの意識が高く、自分の仕事を楽しんでいることがすごくよくわかりました。そんなメンバーが集まってくるのはやはりKOKI(秋吉)が作り出すものの魅力だったり、個性を最大限に引き出すことができている会社の環境がるからなのかなと感じました。

本牧工場にて、社内の作品についてはもちろん、個人制作についても情報交換をし合う

VUILDはビジネスパートナーというより、「一緒に働く同僚や仲間」という表現が正しいのかもしれません。これからも意見交換や交流を深めてお互いに成長できる関係性でいられたら幸せです。

川崎工房の訪問時、VUILDのメンバーと



おわりに

代表の秋吉が、実際にShopBotと出会ったのは大学院生だった2013年、ファブラボ世界会議というデジタルファブリケーションの祭典のようなイベントでした。海外からShopBotマスターした建築家・デザイナーも集うような2週間に渡るイベントで、その中でも創業者のTed Hall氏の奥さんであるSallye氏と出会ったことで、のちのVUILDとShopBot Tools社が強力なパートナーとなるきっかけとなりました。

実は今回の来日中に、VUILDメンバーも驚くニュースがありました。なんとBrian氏が、彼女のEuniceにサプライズでプロポーズをしましたと。場所は、弊社COOの井上の拠点である岡山県の西粟倉村で、「豊かな木々に囲まれた、時間がゆったり流れる環境で、2人で人生の決断ができた」と、無事サプライズを終えたあとに報告をしてくれました。元々日本が好きと言ってくれていたのですが、このような人生の大きな思い出の地として日本を選んでいただいたことが大変嬉しいです。

今後もVUILDはShopBot Tools社とのパートナーシップを深めながら、単なる販売代理店ではない、VUILDならではのサービスを展開していきたいと思っております

インタビュアー:Coco(VUILDERSメンバー)
記事編集:中澤(VUILDERSメンバー)