国立大学の国立大学法人運営費交付金と私立大学の私立大学等経常費補助金(2022年度)
外部からの競争的資金を獲得しないと大学の研究がままならない状況になってきた国立大学、私立大学等経常費補助金と学費の値上げで大学の運営を維持する私立大学。大学運営上大切な資金獲得状況を知る事で、学生が納得出来る研究や教育を受けられる環境が整っているかどうかを知る事が出来ます。
◇国立大学の運営資金「国立大学法人運営費交付金」
○国立大学法人運営費交付金を取り巻く現状について
https://www.mext.go.jp/content/20201104-mxt_hojinka-000010818_4.pdf
○22 年度 国立大学法人運営費交付金 第1期中期目標の評価結果を反映 東京大 856.9 億円、京都大 580.0 億円など、 国立大学法人 86 大学に 総額1兆675.3億円交付! 第1期中期目標の“評価結果”を交付金配分に反映。 90 法人に総額 1 兆 1,585.2 億円(前年度比 0.9%減)を交付!
https://eic.obunsha.co.jp/resource/topics/1004/0401.pdf
国立大学は、外部からの競争的資金を得る必要が出てくるほど、国立大学を運営する上での一般的な収入源である国立大学法人運営交付金(校費)が独立行政法人化以降減らされ続けています。その結果、東大や京大などのように資金が潤沢にある国立大学と地方の国立大学との間で相当な大学運営の予算の格差が生じています。私大の場合は、収入の大半が学生からの学費で運営が成り立っているので、ある程度の値上げで対応出来ますが、国立大学の場合、文科省は最大2割までの学費値上げを認めているものの、2023年現在最大2割値上げを実施した大学がある為、学費値上げによる収入を得るのは難しい状況になっています。
Quoraに現役の国立大の教員が研究費について質問をしているスレッドがありますが、これを読むと地方の国立大の研究室の予算の捻出が相当厳しい事が分かります。
競争的資金を得ている研究室は数千万円から億単位の研究費を得られていますが、ほぼ校費で賄うような研究室の場合、校費から支給される年間10万円から20万円という所もあるそうです。世間一般で言われている国立大学の方が私立大学よりも設備・人材面・教育面で優れているという事は無くなりつつあると考えられます。
◇独立行政法人化以降校費が減らされて競争的資金を得る必要が出てきた研究室から私立大へ人材が流出している状況になりつつある国立大
校費が減らされていき、競争的資金獲得に忙殺される環境にある国立大の教員の実情を大学の教職員組合紙に書いているのを見つけました。
群馬大 委員長ごあいさつ 労働条件の悪化に歯止めを ~ 流出していく人材 (2013年の記事)
https://web.union.gunma-u.ac.jp/town/town_II_67_20130917.pdf
アベノミクスがどうのこうの言っていた時期ですが、もう既にこの頃には地方の国立大学の研究力が相当落ちている事が考えられます。
○大学教授、手取り額公開でネット紛糾 「安すぎです(涙)」「中小はもっと酷い」
2018年に北大の教授が自らの年収をツイートで明らかにした事で話題になりました。
◇2023年度収入が多い国立大学法人
東洋経済が2023年度の収入が多い国立大学法人のランキングを公開しています。
経常収益が1000億円を超えているのは、東大・京大・東海国立大学機構(名古屋大・岐阜大)・阪大・東北大・九大・北大・筑波大。経常収益600億円以上1000億円未満は、神戸大・広島大・千葉大・岡山大・東京医科歯科大・長崎大・熊本大。
旧帝大・旧六医・金岡千広・神戸・筑波と、いずれも難関国立大・準難関国立大の総合大学、あるいは医学部を持っている総合大学が上位に並んでいます。
◇2022年度国立大学法人運営費交付金状況
2022年度の国立大学法人運営費交付金の状況は次の通りです。
700億円超 - 東大
400億円台 - 京大・東北大
300億円台 - 阪大・東海国立大学機構(名古屋大・岐阜大)・九州大・筑波大・北大
200億円台 - 広島大
100億円台 - 東京工大・神戸大・岡山大・千葉大・長崎大・金沢大・新潟大・鹿児島大・熊本大・信州大・東京医科歯科大・富山大・愛媛大・琉球大・徳島大・山口大・群馬大・三重大
90億円台 - 鳥取大・山形大・佐賀大・香川大・島根大・弘前大・福井大・山梨大
80億円台 - 高知大・秋田大・宮崎大・大分大・静岡大
70億円台 - 横浜国立大・東京学芸大
60億円台 - 茨城大・北海道教育大・岩手大
50億円台 - 東京農工大・大阪教育大・埼玉大・滋賀医科大・浜松医科大
40億円台 - 宇都宮大・奈良先端科学技術大学院大・北陸先端科学技術大学院大・九州工大・東京海洋大・電気通信大・京都工芸繊維大・旭川医科大・名古屋工業大・愛知教育大・東京藝術大・お茶の水女子大
30億円台 - 京都教育大・和歌山大・豊橋科学技術大・長岡科学技術大・福島大・鳴門教育大・東京外大
20億円台 - 福岡教育大・滋賀大・上越教育大・宮城教育大・室蘭工業大・筑波技術大
10億円台 - 政策研究大学院大・総合研究大学院大・鹿屋体育大
こうして見ると、旧帝大・東工大・東京医科歯科大・筑波大・金岡千広・医学部を持つ地方の総合大学に重点的に予算配分している事が分かります。国立大学は、競争的資金や寄付金を得なければ、私大のように学費や受験料で稼ぐ事が出来ないので、この校費内で大学を運営していく必要があると考えると、確かに厳しいと感じられます。
◇私立大学等経常費補助金
私立大学等経常費補助金とは、私立大学の運営を補助する為の国からの交付金です。国立大学の国立大学法人運営費交付金に相当するものと考えて良いと思います。以下、日本私立学校振興・共済事業団の公式サイトの説明文から引用。
◇私立大学等経常費補助金の2022年度交付状況
https://www.shigaku.go.jp/s_hojo_r04.htm
90億円台 - 早稲田大
80億円台 - 慶應義塾大
50億円台 - 昭和大・立命館大・順天堂大・東海大
40億円台 - 北里大・近畿大
30億円台 - 福岡大・東京理科大・帝京大・東京慈恵会医科大・関西大・藤田医科大
20億円台 - 法政大・日本医科大・東洋大・明治大・埼玉医科大・自治医大・関西学院大・東邦大・同志社大・上智大・東京女子医科大・神奈川大・関西医大・大阪医科薬科大・立教大・久留米大・兵庫医大
10億円台 - 獨協医大・聖マリアンナ医大・創価大・龍谷大・青山学院大・名城大・岩手医大・国際医療福祉大・杏林大・武蔵野大・東京医大・愛知医大・東京農大・帝京平成大・九州産業大・芝浦工大・東京都市大・中央大・関東学院大・京都産業大・金沢工業大・大東文化大・東京電機大・中部大・東北学院大・岡山理科大
9億円台 - 東京歯科大・立正大・金沢医科大・明治学院大・日本女子大・愛知学院大・駒澤大・大阪工業大・神戸学院大
8億円台 - 武庫川女子大・日本福祉大・川崎医大・甲南大・専修大・北海道医療大・崇城大・国士舘大・昭和女子大
研究に力を入れている大学と医学部を持っている大学に重点的に予算配分が行われている印象があります。私大は、学費や受験料などで稼ぐ事が出来るので、国から交付される補助金は国立大学に比べると大分少なくなっています。
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