何でもできていいね
「何でもできていいね」
元彼から投げ付けられた一言。
未だに忘れられず、頭の中に住み着いている。
唖然とした。
何も言葉を発することが出来なかった。
楽しかった思い出が、煌びやかに輝いていた彼との美しい思い出たちが、崩れていく音が聞こえた。
胸を覆い尽くしていく空虚感にただひたすら打ちのめされながら、私は彼を見つめることしか出来なかった。
確かに私は、恵まれた環境に産み落とされた。食べる寝るに困らない生活。好きなことは何でもやらせてもらえた。
彼にはそれは、与えられた環境に甘んじているように見えたのかもしれない。
でもだからといって、努力しなかったわけじゃない。親に認められたくて、誰かに貶されたくなくて、人の目が怖くて、頑張った。努力した、何においても。
何もしないで今の自分を得たわけじゃない。
彼に会う時は綺麗な自分でいたくて、食事制限も運動もしてボディクリームで毎日保湿して、そうしながら自分の夢に向かって走って、彼の理想と自分の理想とどっちも壊さないように必死だった。それなのに。それなのにその努力の全てを否定するように、彼は言った。
何でもできていいね、と。
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