habitat1のコピー

太古のVRChat?Habitat(ハビタット)

1993年、ビジュアル通信の旅。
いつか2018年へ繋がる物語。

今日は昔話をするよ。今から少し昔の話。

※大部分を記憶頼りで書いているから、間違って書いてある所があるかもしれない。もし正確な資料をお持ちの場合は遠慮なくご一報を頂けると嬉しい。

90年代にボクはパソコンという存在に初めて触れて、そして同時にパソコン通信の存在にも触れた。確か1993年の事だったと思う。当時はGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)が浸透しつつも、まだ主流になろうとする過渡期だったせいか、新しく出てきた親切なOSや、ゲーム以外の”ソフト”は文字だけで様々な情報をあらわしていた事を覚えている。ワープロソフトや表計算ソフト、パソコン通信がまさにそれだった気がするなぁ。
画面上に表示されるものが全てアスキーアートで表現されていると思って貰えれば近いものになると思う。でも、その一方で現代的なデザインのソフトも普通に存在していたりしていた、何とも不思議な時代だった。

NECのPC-9801がPC-9821に置き換えられつつあり、富士通のFM-VとFM-TOWNSもこれから先へ生き残る為の道を探っていて、それらの隙間にWindows3.1が触手を伸ばしてきている。
”マッキントッシュ”は完全にオタッキーのアイテムか、仕事用の自動車みたいな超高級機種。友達のお母さんで、デザイナーをやっている人が使っている”パソコン”。当時の自分にはそんな風に市場が見えていた。

そんな時代のさなか、異彩を放つオンラインチャットソフトが富士通から発売されていた。名前は富士通Habitat(ハビタット)。公式にはビジュアル通信と呼ばれていた。

93年当時はパソコンで3Dと言えばテクスチャって存在したの?と思わず言ってしまう位、記憶に存在が無いし(3Dと言えばワイヤーフレームだらけだった覚えしかない)、同時期にサービスが展開されていた富士通AirWarrior(エアーウォーリアー)と呼ばれる国内最初期のオンライン対戦ゲームですら、登場する兵器はポリゴンで表現されていたものの、機体表面はどれも灰色一色だったと記憶している。

そんな時代な訳で、当然だけど先に書いたハビタットと呼ばれるチャットソフトは今をときめくVRchatの様に3Dで表現された世界では無く、当然2Dで表現された世界だった。

非常に悔やまれる事にハビタットの製品版は結局最後までプレイできなかったけれど、体験版でその世界の一端を見る事ができた。

今よりもより先入観の無い状態でそれを見た時の印象は”かわったもの”、そして”おもしろそう”最後に”友達に知られたら恥ずかしいな”だった。
恥ずかしいなと思った理由は、DiabloやUltimaOnline、ラグナロクオンラインでいわゆるネカマプレイが流行る?(実際には90年代前半でもパソコン通信のフォーラムにネカマさんはもう沢山居た気がするけど)10年近くも前、驚く事に富士通はハビタットの体験版で、このゲームのプレイスタイルの一つとして性別の変更を紹介していたからだ。ただ単に男性でも女性でも遊べますよと紹介するのでは無くて、男性が女性に、女性が男性になる事もできますよ、と実際に容姿を変える所まで含めて。正直この時代ではかなりのキワモノに見えた。

「この世界ではあなたの思い描くあなたになれます」

プロモーションでそんな事を言われたかどうか、正直もう全く覚えていない。
でも、おぼろげに記憶に残る画面の映像ではハビタットがそんなメッセージをユーザーへ投げかけていた様な気がする。

そんなシーンを見てから25年。

まさか世の中がこんな風になるとは思ってもいなかったよ。
沢山の物が認めてもらえる世の中になるとは全然思ってなかった。
そしてまたこのソフトの名前を思い出す日が来るとも思いもしなかった。

今回このnoteを執筆するにあたりハビタットについて検索をかけて見たら、なんと驚く事に富士通(国内リリースメーカー)公式のPRサイトがまだ残って居た。メーカーへ問い合わせした所、掲載許可を頂けたので紹介する。

URLはこちら。https://pr.fujitsu.com/jp/news/1997/Sep/habitat/habitat2_concept.html

リンクをクリックして是非内容をみて欲しい。

絶対面白いよ!とは言えないけれど、自分は寒気がするほどビックリしちゃった。ページを読み進めるとその昔、ハビタットの体験版を見て感じたメッセージほぼそのまま「何の制約もなく、なりたいものに 自由になれる世界なのです。」なんて書いてあったから。言い回しはこそ違うけど…あるんだね、こんなコトって。

それにしても、ここまで先進性のあるタイトルを国内で展開した富士通の勇気ある投資には今見ても、いや今見るからこそ驚きを隠せない。
導入の企画段階から計算すれば80年代中〜後期から下地を作ってたんだろうけど、バブルの真っ只中へ向かって進んでいた時代とはいえ良く発売したと思う。未来を見据えて商品展開を検討していた人たちが居たんだろうね、きっと。

このソフトの原型が開発されてからおそらく33年は経った。
あの時代と比べて、やっている事に何か変わりはあるだろうか?

仮想空間でコミュニケーションを取るのも、その世界での自分の姿をアバターと呼んでいるのも今と変わらない。
独自通貨の存在は現在の電子マネーや仮想通貨を連想させるし、ベンダーと呼ばれる自販機は外見まで販売されてると書いてあるのを見ると、VRChatで言う所のアバターワールド内の設置物を連想する。

こうやって書くと、ハビタットと比べて根本は大きくかわっていない様に見えるよね。けど、それでも実際目に見えるものや感じるものはとてつもない進化を遂げたと思う。こればかりは確信している。

25年前、30年前、Viveやオキュラスの様なデバイスを使ってまるでSFのワンシーンみたいに没入感のある装置でゲームを遊ぶなんて、誰が”絶対にできる”なんて思っただろう?

”信じていた”人じゃないからね。

いたとしても本当に一握りの人だけだったと思う。最先端のテクノロジーを手中に掌握して、それを進化させていた人とかね。少なくとも今回取り上げたチャットソフトのハビタットが販売されて居た時に、自分は生きているうちにこんな体験ができるなんて全く思って居なかった。想像すらしなかった。そんな話が出たとしたら、ただ漠然と未来ではそうなっているんだろうね、なんて考えていたと思う。

不思議なもので、そうやって未来を漠然と考えて生きていたらいつの間にかこんな時代になっていた。VTuberの某お婆ちゃんじゃないけれど、思わず「恐ろしいねぇ…」と口からこぼれてしまうよね。

ともあれ、ボクは未来にたどり着いたんだ。
25年前、あの時見た場所の完成形がここにある。

1993年に出会ったハビタットも、2018年に出会ったVRChatも。
どっちも最高のタイミングで出会えて本当に良かった。


いつもと少し変わった雰囲気のnoteはここまで。
それじゃぁ、またね。

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今回、noteの執筆にあたり過去の製品にも関わらず対応頂きましたメーカーのご担当者様には改めてお礼申し上げます。