FACT FULNESS/ハンス・ロスリング


FACT FULUNESS/ハンス・ロスリングを読んで・・・。

【要約】

著者のハンス・ロスリングは医者であり、国際保健機構のアドバイザー。TEDトークの人気スピーカーでもあり、世界で最も影響力の大きな100人に選ばれたひとりでもある。数々の偉業と実績、14ヶ国、1万2000人に行ったオンライン調査を基に世界の現状をデータ化し紹介している。

本書は13問のクイズから始まり、各章で答え合わせができ、問題の正解率も図式で表されている。
地域、所得別に分けた暮らしの写真、グラフで見る過去と現在の違い。貧富、出生、人口、教育etc…暮らしの変化を年代別にグラフ化。個人の思い込みにより失敗した事、知識不足、先入観によって招いた事故を紹介しながら、正確な情報と知識があれば人は不安を抱かない、リスクがあったとしても小さくて済む事を伝えている。人間そのものがもっている本能的な部分をポイントとし、陥りやすい状況を説明しながら、正確な知識を知る為の内容となっている。

また各章最後に、状況別のファクトフルネスチェック項目が提示されている。ファクトとの向き合い方、確かめ方、判断は一つではなく、世界を一つの切り口から見る事で誤った副作用が生まれる事。あらゆる場面、状況、環境により確認する事の必要さや、正しく状況を知る事で、先入観、刷新されてなかった思い込みを払拭する事を教える。文化は変わり続け、情報も状態も変化し続けている。

現実と直観がどれほどかけ離れているかを知る為に。

世界を誤解しない為に。

正しい知識を共有する事で実現できる事があること。

過去の失敗を繰り返さない為、本能や恐れに動かされず、データに基づいた行動をとる事。

また、間違っても恥だとは思わない空気を作る事が大切だとも述べている。事実に基づか居ない「真実」を鵜呑みにしない為に、情報だけでなく自分自身を批判的に見る事の必要性や、自分自身を問う事の大切も伝えている。

過去と現在を統計グラフで比べながら、劇的な変化ではなく、すこしづつ変わっている生活レベルの向上。事実に基づいた世界の見方を広め、人々の世界にまつわる圧倒的な知識不足をなくすため、それぞれ個性の違った息子夫婦と共に、写真で世界を深く理解できる「ドル・ストリート」を作成。世界を変えるアイデア賞も受賞している。

根拠のない希望を持たず、根拠のない不安を持たず、間違ったパターン化から真実へと理解を深める為に、知識の共有を広める10章∔実践編でまとめられている。

【感想】

タイトルの印象と違い、本を捲ると軽やかな口調と読みやすい文面。表紙に書かれていたように「10の思い込みを乗り越え―」を、しょっぱな教わったようだった。

今まで自分が鵜呑みにしてた世界と、統計、年代別、所得別の写真を基に、現実の世界の状態を順序よく修正してくれたファクト・フルネス。

この本を読み、更新されてない過去の記憶を「現実」だと錯覚していた事に気が付く。実態のない噂話、もう既に終わっている過去の印象を引きづりながら、よりよく生きようと思っていた自分が恥ずかしくもなった。

1章に記された13項目のクイズ、試しにやってみたら5問正解だった。

だけどそれは出題の空気を読み「勘」で答えたので、知識があって得た「あたり!」ではない。問題が教える「現在」の状況をグラフで見ながら、おおよその勘で引き当てた「まぐれな正解」

こうやってわたしの現在も作られてきたのだった。

読み進めているうちに、地球上に暮らす約70億人の足並み、足元、標準、常識の違いを知る。地球上の生活、レベル1からみていくと同じ時代に生きているとは思えない光景もあった。ハンス・ロスリングが「圧倒的な知識不足」を埋め合わせる為、全国的に調査した結果、人間そもそもが持っている「本能」の部分を解説してくれたところで、知識や実体があったとしても「恐怖」「不安」が強い場合は正しい選択は難しいのだろう。

それゆえ、ファクトフルネス10のチェック項目は、とてもトレーニングになる内容だった。世界の基準、常識、実体を知ると同時に、自身の癖や、陥りやすい状態を確認でき、実践できる内容。

今まで習慣化された「選択」の方法、「感じて」終わるのではなく、そこから考えてみる事で実体というか、正しい方法がみつかるのかもしれない。正しい正しくないという、二元論的なスタイルで生きていきたいとは思ってないけど、より健全な状態でいられる事はとても魅力的だ。

圧倒的知識不足の解消の為に、小学校中学年位から「ファクトフルネス」は教科書として取り入れた方が良いのではないかと思った。できるだけ早い段階で、世界の見方、統計の出し方、ファクトチェックの方法を身に着けさせる。今後の社会でインターネットより凄いコンテンツが生まれる事があったとしても、セルフチェック機能が育っていたら、悪戯に将来を不安がらなくても済むのではないかと思う。

前に某大学のもぐりに入って授業を受けた事がある。その時の学生さんの「悩み」が「就職できなかったらどうしよう」というモノだった。少しだけショックだった。時代は変わって時代の先端にいる若者が、わたしが学生の頃に思っていた「悩み」と変わらなかったからだ。昭和、平成、令和と流れてきても「問題」「悩み」は変わらないままで、働きやすい、チャレンジしやすい世の中にもなっていなかった事を知ってしまった!

ファクトフルネスを読みながら、その娘の事を思い出していた。

できるだけ正確な情報を知れるようにする事と、将来の夢や希望を描きやすい環境である事。一回の失敗で人生は終わらない事など、それらを当たり前に思える状態にしていく為に、世界は少しづつ進化、発展している事を伝えていく事だなと思う。

世界の実体が見えなさすぎて、狭くて手っ取り早い選択をしてしまわない為にも、現在地球で暮らす人々はこんな状態です!という実体のあるデータをを基に議論する事で、専門性や、より勉強したい事、好奇心、何かの分野に興味が湧いたり、最終ゴールじゃないくても、ひとつの願望や方法、選択肢は増えていくのかなと思う。

アップデートされてない過去のデータを鵜吞みにせず、状況は一刻一刻変わっている事。人間そのものがもっている本能という部分を受け入れながら、世界の正しい全貌を知り、不安や恐れによって将来に制限をかけない、余裕のある環境を作っていけたらと思う。

その為に大人も学ぶ必要があるし、昔の記憶を新しくしていく為にも正しい情報を得ていく勇気も必要だ。むかしの常識を新しくしていくには勇気がいる場合もある。時代は変わる、文化は変わる。

第10章にある「恐れと焦りは愚かで過激な判断に繋がり、予想もつかない副作用を生む」と自身の体験談と共に記されていた。

今回のコロナ過を通しても実感している。

間違っても「チャレンジしやすい空気」はとても有難い。

誰もが行動や実験的な事(犯罪レベルではないもの)を実行しやすい状態にある事。その為にも進化してきた事、減ってきた事、増えてきた事を公表する事で、進化、変化の記録更新が行いやすい空気は作れるのではないかと思う。片方だけの情報だけでなく、同等に正確な状態をさらす。

変化が見えれば人は能動的に、次の目的、目標を抱きやすい。

ファクトフルネスを読みながら、死角になっていた他の国の暮らしを知り、同じ血が通う人達が暮らしあっている事がリアルに感じられた。


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