ソードワールド2.5 個人的な《ガン》に対するフレーバー設定

はじめに

この記事は「ソードワールド2.5(グループSNEのTRPG)」に登場する魔法技術体系「魔動機術」とそれを利用した射撃武器《ガン》に対する、個人的な設定考察、もとい妄想です。

少なくとも「自分は魔動機術と《ガン》に対してこういうイメージを抱いているよ」ということを書いておきたかったので書くことにしました。

以下、本文の部分は「魔動機術と《ガン》について解説した、魔動機文明時代後期頃~大破局後初期の書物」という体裁で読んでいただけると幸いです。

本作は、「グループSNE」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『ソード・ワールド2.0/2.5』の、二次創作です。
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1. 《ガン》とは

《ガン》とは魔動機文明時代初期に確立された武器体系であり、一般的には筒状の“銃身”から“弾丸”を発射する道具を指す。
厳密には「弾丸の発射機構」と「銃身」の2つを兼ね備えた、射撃攻撃に用いる道具として定義される。

ただし、実際は射撃を行う射手が扱いやすくするため「弾丸の発射機構」を指や手で操作できるようにしつつ「銃身」を安定して構えるための部品が取り付けられていることが殆どである。
即ち、肩や脇腹、頬に押し当てて《ガン》全体を保持するための「銃把」や「銃床」が銃身後部に取り付けられている。

これは《ガン》の形状が構え式の弩、いわゆるクロスボウを下地に発展してきたことに起因している。

2. 弾丸について

《ガン》による射撃を行う際、欠くことのできないものがマギスフィアと「弾丸」である。
「弾丸」の材料は各種の魔法を行使する際のマナの足しにならないような低品質魔晶石(俗に“クズ石”と称される)であり、所定の粒度まで破砕したあと規格品の型にその粉末を詰め、マナ反応炉で焼結して作成する。

矢やボルトの鏃のように石や金属を使用せず、低品質とはいえ魔晶石を加工して弾丸を作成するのには勿論理由がある。それは《ガン》による射撃が魔動機術を利用したものであることと密接に関係している。

弾丸が魔晶石で作られる理由は、《ガン》による射撃が「弾丸に込めたマナの一部を運動エネルギーに変換する」ことで行われるためである。
即ち、弾丸はマナに反応する性質を持った材質でなくてはならず、加工性と調達コストの観点から低品質魔晶石を用いることになったのである。

◆注釈◆
マナに反応し、同材質間での反発作用を示す「マナタイト鉱石」を精錬すれば多少勝手は異なるが弾丸を作成することができるかもしれない。
が、マナタイト鉱石は魔動列車をはじめとする各種大動力系魔動機に必要とされており、調達コストが非常に高いため現実的ではないとされている。

3.《ガン》の発射原理

呪文と魔法文字によって術者の意識でマナに干渉を行い効果を発揮する真語・操霊魔法と異なり、魔動機術は物体にマナを付与・供給して何らかの動作や効果を発揮させることを主眼に置いて発展を続けてきた。
《ガン》による射撃はその技術の一端であり、何気なく使用している者であっても原理を学んでおいて損はない。

《ガン》が弾丸を発射する際は、物体にマナを付与した際の運動エネルギー変換性質を利用している。
具体的には、魔動機術によって魔晶石の塊である弾丸にマナを充填し、その後弾丸に一定の圧力や衝撃を加えることで弾丸に込められたマナが運動エネルギーに変化して勢いよく飛んでいく性質を利用し弾丸を飛ばすのである。

そのため、後述する発射機構は弾丸を叩いたり釘状のパーツを強く押し込むなどして一定の力を弾丸に与える仕組みになっている。

《ガン》による射撃(以下、射撃)を行うためには【ソリッド・バレット】などの魔動機術を起動し、マギスフィアを介して弾丸にマナを込める作業が必要となる。

実用的な射撃においては予め弾丸を《ガン》に装填しておき、《ガン》の近くに配置したマギスフィアからマナを込めることが多い。
マナが込められて発射可能な状態になった弾丸を専門的に「励起状態」と呼び、マナが込められていない状態の弾丸と区別することがある。

4. 弾丸の発射機構

「弾丸の発射機構」とは、励起状態にある弾丸に衝撃あるいは圧力を加えるための機構を指す。
《ガン》内部に保持された励起状態の弾丸に対し、射手の意図したタイミングで衝撃を加えることで射撃を行うのである。
また、不用意に弾丸に衝撃が加わることのないような仕掛け(安全装置、または安全機構と呼ばれる)を兼ね備えるモデルも多い。

弾丸に衝撃を加えた際、弾丸側からも《ガン》に衝撃が発生する。この衝撃は主に“反動”と称され、一般的に弓やクロスボウのそれより大きい。
反動から発射までの間、保持された銃身にはブレが発生するために反動が命中精度に及ぼす影響は大きいとされる。
射撃そのものへの障害にはならないが、マナが運動エネルギーに変換される際のロス分が空気を揺らし“銃声”と呼ばれる音を立てることも多い。

後述するように、反動の大きさと方向は弾丸の発射機構によって大きく左右される。このため、《ガン》の命中精度は弾丸の発射機構に依る部分が少なくないとされる。
一般的には発射機構の操作から実際の発射までのラグが少なく反動を制御しやすい《ガン》ほど命中精度に優れ、作成することが困難とされる。

また、「銃身」とは衝撃を加えられた弾丸の運動に指向性を与えるためのものである。筒状の銃身内部で弾丸に衝撃を加えることで、弾丸の移動方向は一方向に定められるためである。
銃身の加工精度と長さもまた、発射機構同様に弾丸の命中精度に大きな影響を及ぼす因子であるとされる。

資料1

図解1. 魔動機術における弾丸の発射原理概要

資料2

図解2.銃身口径に対して弾丸規格が小さい場合

資料3

図解3.銃身の加工精度が低い場合

総合すると《ガン》による射撃のプロセスは以下の手順を辿る。

1)《ガン》に弾丸を装填する
2)【~・バレット】系の魔動機術を起動し、弾丸にマナを供給する
3)《ガン》を構えて狙いを付け、発射機構を操作して弾丸に衝撃を与える
4)弾丸の発射に備え、射撃姿勢を保持する

また、発射機構と銃身の作用によって弾丸に込められたマナの運動性変換効率は異なる特性を示す。
精度の良い銃身と的確に衝撃を加える機構から撃ち出された弾丸はより少ないマナで遠くまで飛び、弾道のブレも小さいとされる。
ただし、《ガン》そのものの設計思想や個体差にも左右されうるため、一概に《ガン》の性能と飛距離を関連付けることはできない。

以下に、代表的な三種類の弾丸の発射機構について解説する。

4-1. サーペンタイン式

《ガン》の成立過程における黎明期に成立したのが“サーペンタイン式”と呼ばれる方式である。
“サーペンタイン金具”と呼ばれるS字型の金具部品を用いるのが特徴で、一端を引き金(トリガー)として銃身・銃把部分に取り付ける。
もう一端は銃身後方部に設けられたスリットに向かっており、引き金の動きと連動して部品の先端が保持された弾丸に押し込まれるような形状になっている。

この方式では射手が引き金を動かす動作をサーペンタイン金具が弾丸に直接伝達し、発射の起動力とする。
多くのサーペンタイン金具は梃子の要領で引き金の力を強い圧力に変えて弾丸へと伝え、発射を行う。
すなわち、引き金のストロークは梃子の分だけ大きくなり、ストロークのどの位置で弾丸が発射されるかは慣れるまで掴みにくい。射手の意図と実際の発射タイミングがずれることもしばしばであり、精度が高いとは言い難い。

しかし、サーペンタイン式発射機構は構造が単純故に製造・整備が容易であることが利点として挙げられる。
木製の銃把に銃身を取り付け、このサーペンタイン式の発射機構を備えた“サーペンタインガン”は携帯性と整備性、更に製造コストに優れており、初期型《ガン》の傑作として名高い。

4-2. パーカッション式

サーペンタイン式の次に考案されたのが“パーカッション式”と呼ばれる方式である。
この方式はクロスボウの機構に着想を得て比較的早期に構想されたものの、弾丸発射時の反動に耐えうる強度を部品に持たせることが困難であったため実用化が遅れ、後に材料面での発展によって日の目を見た。

初期のパーカッション式発射機構はドワーフの熱加工技術で調整した鉄鋼を材料として使用し、鍛冶師達が大まかな形状を作った後レプラカーンの細工師達が細かな調整を施す事によって製作されていた。
後に、ドワーフ達から技術を伝えられた人間達の作る鋼鉄の品質がこれに近づいたことでパーカッション式発射機構は漸く一般化する。

パーカッション式発射機構の特徴は、撥条仕掛けによって動く“撃発”と呼ばれる部品を銃身後端に有する点にある。
撃発は銃身後部に配置された、小さなハンマーのような形状の部品である。
撃発には撥条仕掛けと金具が取り付けられており、射手が手で撃発を一定角度まで引き倒すことで撃発の位置が固定されるように作られている。
射手が引き金を引くと仕掛けが動き、固定されていた撃発は撥条に弾かれて銃身後部のスリットを通り弾丸後部を叩く
《ガン》を用いる射手の用語で、この挙動を「撃発が落ちる」と称する。

サーペンタイン方式と比べて撥条仕掛けを動かすための軽い力で引き金を引けばよく、射撃時の銃身のブレが少ないことが利点となる。
反面、機構が複雑化しているため撥条の交換をはじめとする定期的なメンテナンスを必要とし、整備にもある程度専門的な知識を要する

トラドールやジェザイルといった《ガン》はこの発射方式を採用している。

4-3. ストライカー式

パーカッション式は精度と使いやすさに優れていたが、それなりの重量を持ったハンマーが撥条仕掛けで回転して弾丸に衝撃を与える機構のため、機構作動時の動作で銃身が跳ね上がる点の改善が精密狙撃・長距離射撃を行う銃手達から望まれた。
その結果考案されたのが“ストライカー式”と呼ばれる方式である。

パーカッション式同様に引き金と連動した撥条仕掛けを持つが、ストライカー式発射機構は銃身後端部から銃身と同一軸上を動いて弾丸を叩く仕組みを持つ点が特徴とされる。
この方式の実現は、機構を構成する金属部品の加工技術が向上したことで可能となった。凸型断面を持つパーツと凹型断面を持つパーツからなる「咬み合わせスライド」を機構の動作軸に使用し、弾丸を叩くのに垂直撥条仕掛けを利用している。

この方式を採用する《ガン》は銃身の後端に筒状の機構を有する。
操作用の突起状ハンドルとそれによって前後に動く遊底(ボルト)機構からなり、撥条仕掛けと弾丸を叩くための“ストライカー”と呼ばれる部品が内蔵されている。

射撃準備においては射手がハンドルを引くのと連動してスライドが後ろに移動し、撥条仕掛けが働いて引き金が保持される。
射撃時は引き金を引くことで撥条仕掛けが弾け、スライドが前方に押し出されることでストライカーが弾丸の後端部を叩き、発射を行う。

また、ストライカーはハンマーよりも小さな針状の部品であり、衝撃を集中させることでパーカッション式よりも小さな力で弾丸を発射することが可能である。銃身後端部から銃身と同軸で衝撃を与える作動方向と相乗し、射撃時の反動が小さく命中精度が高いという利点に繋がっている。

欠点としてはパーカッション式以上に複雑な機構を持つため、製造と整備にかかるコストが高く、定期メンテナンスにも熟練を要する点が挙げられる。
特にストライカーを作動させる撥条の整備は重要であり、射撃の信頼性に直結する。整備のしづらい環境への長征を行う射手は、敢えてパーカッション式を選択することもしばしばである。

ロングバレルガンが本方式を採用し、高い威力と命中精度を誇っている。

5. 銃身について

《ガン》における銃身とは、発射される弾丸の軌道に大きな影響を及ぼす要素となる。
基本的に鉄鋼材で作られるが、加工難易度や調達性の観点から真鍮や青銅が用いられる場合もある。

銃身の製造には高い冶金的技術と金属加工技術を要する。
それ故、発射機構と異なり銃身部品の進歩改善については常にドワーフ達が最先端を歩んできた。
銃身に用いる鋼種の改善、より強い反動に耐えうる銃身の構造といった銃身製造技術が《ガン》の性能を力強く支えてきたのである。
鋼鉄製銃身は以下の工程で製造されることが多いとされる。

1)高温の炉で熱した鉄を鎚で打ち、不純物や余分な炭素を除去して均質かつ高純度の鋼へと仕上げる

2)仕上げた鋼を一定の厚さの板状に整える(この時、芯部を作る一枚板と外縁部となる細長いリボン板の2種を作っておく)

3)一枚板をマキシノと呼ばれる芯材に延引させ、捲くことで芯部を成形する

4)その外側からリボン板を巻きつけ、鍛接して銃身を厚くしていく

非常に高度な精錬・鍛造による冶金加工を経て《ガン》の銃身は極めて高い精度と強度を併せ持つ部品となる。
銃身は外部からの力による屈曲を拒むだけの強度と、内部からの圧力に対する変形を拒むだけの靭性が必要とされる。銃身は弾丸の発射時に強烈な反動を内部に受けるが、この反動によって銃身内の形状が変わってしまっては次弾の弾道に影響を及ぼすためである。

6. まとめ

以上、《ガン》の概要、射出原理、発射機構、銃身について述べた。

基本的に、真語魔法に代表される意思の力を以てマナに作用する体系の魔法は「外す」といったことがない。放たれた魔法は対象を緻密に追尾し、その役割を果たすためである。
しかし、魔動機術と《ガン》によって放たれる弾丸は必ずしも的に当たるとは限らない。
射手を志す魔動機術師は、魔動機術そのものと同じく《ガン》について深く知り、射撃の腕を磨かなければならない。

しかし、魔動機術は従来の魔法と異なり術者を選ばない。
的に当てる腕さえあれば従来の魔法体系の枠に嵌らない、様々な活用法を見出し、発展させることが可能である。
わずかでも、本書が射手を志す者の助けとなれば幸いである。

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