見出し画像

世界石巡礼ブログ コロンビア

🔴2010/01/29  圧倒する巨岩

ラ・ピエドラ・デル・ペニョールla piedra del peñol 

1月28日 

コロンビア第二の都市メディジンは標高1500mあまりの山々に囲まれた盆地のなかにあった。巨大な建築物が町の至るところに点在していた。メディジンの中心地のホテルに泊まり、翌日、ローカルバスに乗り一名所ピエドラ・デル・ペニョールへ向かった。 メディジンのバスターミナルを出発し、しばらくすると連続するカーブが待っていた。辺りは起伏に富んだ緑豊かな田園風景で美しい。やがて、道路の両サイドに湖畔が見え隠れしていると、突然、巨大な岩が車窓から見えた。 

画像1

何ともすごい迫力だ。興奮しながら写真を撮っていると、すぐにバスは巨岩の入口に停まった。そこから、トゥクトゥクに乗って、巨岩の麓までたどり着いた。下から見ると、さらにその巨大さに圧倒された。

画像2

 巨岩には、まるで縫い目のような階段が縦筋に作られていた。 

画像3

岩の麓にはお土産屋さんとレストランがあり、かなりの観光地のようだった。 我々は、さっそくその岩山に登ることにした。岩には大きな割れ目の溝があり、そこに階段が作られていた。

画像4

 途中、聖母マリア像と思しき銅像が岩を見上げるように立てられてあった。 

画像5

我々は、15分ほどで649段の階段を上って頂上に到着。頂上にはレストランやお土産さんがあり展望台からは360度のパノラマ風景が待っていた。

画像6

 入り組んだ島々と湖が実に美しい。

画像7

 エル・ペニョン市(el Peñol)のグアタペ(Guatape)村にある巨岩「ラ・ピエドラ・デル・ペニョール la piedra del peñol」は、巨岩の名所として知られている。高さ220mの一枚岩は、石英、長石、雲母で構成されていて、一説によると隕石によって出来たともいわれる。この岩山を最初に登頂したのが1954年、ルイスエドゥアルドビジェガスロペスLuis Eduardo Villegas Lo'pezという人物とされる。今では、ロッククライマーの登山ルートが24ヶ所もあり観光地だ。また、この岩はその場所の地名から別名「グアタペ ロックGuatape rock」とも呼ばれ、石に白い単語GUATAPEにペイントする計画があり、現時点ではGとIのマークが見える。これは近隣の自治体エル・ペニョン市からクレームがあり問題になっているらしい。 巨岩から降りて、周囲を巡るとほぼ垂直に切り立った岩盤が見えた。 

画像8

画像9

それにしても実に奇妙な形をした一枚岩だ。岩にはキリスト教的な文字が描かれ信仰的なシンボルにもなっているようだ。上り口の反対側の巨岩の麓には、対になったような巨石があった。

画像10

 実はこのグアタペ湖は今から25年ほど前に造られた人造湖である。エル・ペニョン市は、観光開発と水資源の確保として湖を造り、橋でつないで美しい景観を創ったのだ。いまでは、ホテルや別荘などが建ち並んでいた。そして、何と言ってもその中心的な存在がこの一枚岩ラ・ピエドラ・デル・ペニョールだ。 

画像11

エル・ペニョン市の計画した人造湖は、この巨岩のさらなる聖地性を高めた。人々はこの岩に登り、人造湖の美しさに感動せずにはいられないだろう。

 コロンビア、メデジンにて 郡司 拝


🔴2010/02/03 

ゆるキャラ石像と出会えるサン・アグスティン遺跡公園 

San Agustín Archaeological Park 

1月29日

 メデジンから夜行バスで13時間、早朝のポパヤンに到着する。我々は朝食を食べ、そのまま8時半発のサン・アグスティン行きのバスに乗った。バスが高原を上り始めると、でこぼこ道になった。標高3000m以上の山越えは空気も薄く、その上激しい揺れとほこりまみれの移動はかなりきつい。バスは何度も停まっては地元の人達を乗せる。次第にインディヘナ(先住民)の人々の顔が多くなっていった。パンクと道路工事待ちでサン・アグスティンに到着したのは、夕方4時を回っていた。その日は、街中にあるホステルに宿泊する。 

 翌30日早朝、サン・アグスティン村周辺の遺跡を巡るツアーに参加する。 コロンビア人の親子、ドイツ人の女性と我々の5人は、かなり使い古されたジープに乗り込み、山岳地帯の渓谷の中へと走り出す。 

画像12

ジープはかなり窮屈なうえ、またもやでこぼこ道が待っていた。 最初に訪れたのは、グラナダ川の渓谷。 

画像13

画像14

巨岩の上にマリア像があり、信仰的な場所性を感じさせる。 その後、サン・アグスティン遺跡公園へ向かった。 サン・アグスティン遺跡群(San Agustín)は、コロンビアのマグダレナ川の上流の標高1200mから2000mの山岳地帯に500km2の範囲にわたって点在する独特な石彫で知られる遺跡群である。遺跡公園は、3つのサイトに別れていて、それぞれが距離的にかなり離れていた。 遺跡群の特徴は、独特な石彫にある。丸彫りや板状の石を用いた石彫は、ネコ科動物的な神格をもった半人半獣の牙を生やした怪人像、神官や戦士を表すと見られる人物像、蛇、ワニ、トカゲ、カエル、サンショウウオ、猛禽類などを刻んだ石彫が400個近く確認されているという。 

画像15

画像16

画像17

画像18

これらの石像は、5世紀以降に造られたもので特に人型の石像が、ドルメン(支石墓) の前面に配置されているのが印象的である。

画像19

画像20

画像21

 また、ドルメンの蓋の部分に動物や人の形をしたものがあった。

画像22

画像23

 火山岩でできた石像は、大きなもので約4メートルの高さがあり、重さは数トンを超えるものもある。 

画像24

これら石像群は、エジプトやインドなどの旧大陸の影響が見られるともいわれ、新大陸発見より以前に南米と旧大陸の間の交流をした可能性も暗示させる。 石像の多くは、地域の古代の住民の葬式の道具の一部とされた葬式の儀式に関連して、死者の精神的な力と、超自然的な世界観、つまりそれは、祖先崇拝を現わしていると考えられている。 それにしても、このサン・アグステン遺跡公園の石像群を見ていると、いまにもアニメのキャラクターとして使えそうではないか。それもゆるキャラとして。印象的なのは、ヘビを咥えたワシの石彫だ。 

画像25

巨大な石像のデザインは、抽象的かつ象徴的に刻まれたもので、現代のデザイナーの感覚にも劣らない。 石像たちは、古代の人々のセンスを今に伝えている。 

エクアドル、キトにて 郡司 拝

🔴2010/02/03 奇跡の洞窟教会

サントゥアリオ・デ・ラス・ラハスSantuario de Las Lajas 

1月31日 

サン・アグスティンをお昼前に出て、ポパヤンに戻ったのが午後6時を過ぎていた。そのまま夜行バスでエクアドルとの国境の町、イピアレスへ向かうことにする。バスターミナルで夕食を食べ、しばらく休んでから深夜、11時発のバスに乗った。 翌、2月1日朝7時、イピアレスに到着する。かなり寒い。それもそのはず、この町は標高3000m近くもあり、人々はセーターやポンチョを着ていてまさに冬仕度だった。 

 イピアレスに来たのは、聖母マリアが出現した洞窟教会が近くにあることを知ったからだ。その教会は、聖地として多くの巡礼者が訪れているという。 我々は、乗り合いタクシーに乗りイピアレスから7kmほど離れた教会へ向かった。途中、ドライバーが見晴らし台で車を停め谷底を覗くと、渓谷に佇むお城のような建物が見えた。これがサントゥアリオ・デ・ラス・ラハス教会であった。

画像26

 15分ほどで、タクシーは小さな村に停まった。その村は、キリスト教関連グッズのお土産、レストラン、ホテルなどが立ち並び、まるで門前町のような雰囲気があった。朝早かったため、人は少ない。小雨の降る中、石段を下って行くと、道の岩場にプレートのようなものがたくさん付けられていた。

画像27

画像28

 そこには、たくさんの感謝の文字が刻まれていることが分かった。 

画像29

やがて、教会が見えてきた。ネオ・ゴシック様式の何とも立派な教会である。 

画像30

教会の中に入り奥に進むと、祭壇の奥は天然の岩盤がむき出しの状態になっていて、その岩に向かって熱心に祈っている男性がいた。

画像31

 正面をよく見ると、岩に聖母マリアと幼子イエスが描かかれていた。

画像32

 教会の奥のドアから通路に出ると、やはり岩がむき出し状態にあり、もともとここが洞窟だったことが分かる。

画像33

 教会の前の橋を渡り、反対側の丘に上って教会を見下ろすと、谷底からそびえ立つような構造で造られていることがよくわかる。

画像34

 それにしても、こんな渓谷をまたぐように高さ100mもの高さの教会をよく造ったものだ。 伝説によれば、18世紀半ば、川の上の巨大な岩の上に聖母マリアのイメージが現れたという。やがて、その洞窟の岩を取り囲むように教会の祭壇が建設され、今ではコロンビアやエクアドル人はもとより、世界中からの多くの巡礼者がやってくる聖地になったという。聖母マリア像に向って人々は祈り、多くの奇跡が人々に起きているというのだ。 午前9時、教会のベルを合図にミサが始まった。数家族の方々は司祭の言葉に耳を傾け、熱心に祈りを捧げている。やがて、讃美歌が響き渡った。

画像35

画像36

 時を経て、多くの人々がこのサントゥアリオ・デ・ラス・ラハス教会で敬虔な祈りを捧げてきたのだろう。この洞窟教会は、岩場に貼り付けられた多くのプレートそのものが、奇跡を証明している。 洞窟に出現した聖母像は、まさに岩の持つ自然信仰が形を変えてキリスト教(カソリック)の中に取り込まれた、姿ではないだろうか。

 エクアドル、キトにて 郡司 拝