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お土産にご用心

長期休みが終わると日本語学校では、お土産を配る学生をよく見かける。母国のお菓子や、日本の旅行先からのお菓子だ。配る人ももらう人も、みんな笑顔で楽しそうだ。

今でこそ、学生の母国のお菓子にだいぶ詳しくなったが、この仕事を始めて間もない頃は、もらう物すべてが初めましての物ばかりだった。

「先生、どうぞ」
「わあ。ありがとう。これは、何ですか?」
「ココナッツのお菓子です」

見た目は平たくキャラメルのような形。甘くいい香りがしている。包み紙にじわっと、ココナッツの油が染み出てきている。

食べてみる。想像していた甘さよりも控えめだけど、濃厚な味が口いっぱいに広がる。

「ん。美味しい!ありがとう!!」

短い休み時間で食べ終われるか心配になる大きさと固さに口をモゴモゴさせる。

次の瞬間、悲劇が起きた。
日本のキャラメルよりもはるかに粘度のレベルが高いその食べ物は、私の歯の被せ物を持ち上げてしまった。

あわててトイレに駆け込む私。ティッシュを使って、レスキューした。

はー。びっくりした。

被せ物を元の位置に戻し、少し違和感を覚えながらもその日の残りの授業を終え、急いで歯医者に予約を入れた。

それ以降、ちょっと危険を感じる(かたい・辛い・油が凄い・・・など)ものは、授業後にいただくようにしている。本当はその場で食べて、感想を伝えるべきなのだが、避けられるリスクは避けたいのだ。

日本語学校は毎日いろいろな意味で刺激に満ちている。

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