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優子が部長に選任された時こんなんだったのではないかと勝手に想像(響けユーフォニアム)

駅近くのファミレス

「先輩、今日は私なにで呼び出されたんですか?」
窓から見える人は、そろそろコートを羽織る時期になっている
「優子ちゃんいややなぁー わたしらいじめっ子にみえるのかなぁ?」
あすかは、いつものおどけた調子で話すが、優子は神妙な面持ちだ
あすかの横では晴香がメニューを眺めている
店員に注文をし終えると、晴香が優子の方を向いて話はじめた
「あのね、優子ちゃん 来年の部長なんだけど…」
優子は全てを察したように、ほっとしたと同時に困惑の感情もわいた
なぜ…わたし?

「ということで、優子よろしくたのむわー こんな晴香でもできたんだから部長なんてらくしょーやわ」
「こんなってどういう意味よ!」
晴香が頬をふくらますが、あすかは気にもとめずに進める
「やってくれるよね?」
ワントーン下がった言葉には、畏怖を抱かせる迫力があった
いくら優子といえども、これには逆らえない
「……はい」

だがそれで引く優子でもない
「でも、なんで私なんですか?私は…」
そこで、口をつぐんだ この場に香織がいないとはいえこれ以上を言うのははばかられた
「そんなこと気にしてるのぉ? むしろソレが原因だから ちゃんと責任とらへんとね」
どこまでも上からの発言をするあすかに、晴香は怖い目を向ける

「で、副部長は誰なんですか?」
優子はふくれっ面をしながら上目遣いであすかをみる
「それはねぇ~」
「あすかっ!」
晴香が語気を強める
「ごめんごめーん 私のイチオシだから心配せんでかまわんよー」
イチオシというか、他の人の意見を聞かなかっただけじゃないの
という言葉を晴香は飲み込みながら
「当日まで発表しないというのが北宇治の伝統だから。でも最良の選択をしたつもりやよ」
晴香にはその人選が正しいのか判断がつかなかったがここは優子を安心させる事に注力することにした
「優子ちゃんもこの話は当日まで秘密ね」
優子は胡乱げな目をしながら二人を交互に睨んでいる
そして諦めたように、はぁ…と大きく息を吐いた

「うちにどこまでできるかわからへんけど、がんばります」
下を向いて発した言葉の割には妙な力強さがある
「せ・き・に・ん」
満面の笑みを浮かべながらあすかが脅迫の上塗りをする
優子はあすかを睨むようにあすかと晴香をみつめると
「うちが部長をやるからには、最高の北宇治をつくるんでしっかりみててください」

*

注文したスィーツが到着した
あすかはパフェをスプーンいっぱいにすくい上げると
「先輩からのお祝いやで!」
といって、優子の口の中にむりやり押し込む
晴香の気が休まる時がない

「ところで先輩…」
優子が珍しく神妙な面持ちで話し始める
「なーにか心配事でもあるのかなぁ~」
「あすか!こういう所はちゃんと聞いてあげて!」
さすがに晴香も発言を禁じ得なかった

「ところで、再来年の部長には誰がふさわしいとおもいはりますか?」
これには、あすかも予想外の質問だったらしくめずらしく意表をつかれた顔をする
「なんで再来年を気にするの?」
晴香が単純に疑問を投げ返す
「うちが部長になるということは、再来年の部長はうちが決めるということになる。それには今から部長候補を決めておいて人を育てないとならへんでしょ」

晴香が発言しようとするが、あすかが先回りをする
「そないな事は優子が部長なんだからあんたが決めるべきや…」
「それは解ってます」
「でもなぁしいて言うならかわ…」
言いかけたあすかは、パフェの生クリームの部分だけを掬って食べると
眼鏡を外して拭きだした
一通りの儀式を終了すると目線を上の方へ逸らす

「黄前ちゃんあたりでいいんじゃないん?私のかわいい後輩が部長になったら超うれしいしぃ」
「あすか!」
晴香はまたいい加減な事を言っているというような顔であすかをたしなめる
優子も意外と納得いったような顔であすかを眺めていた

解散後

優子はもうその場にはいなかった
「あすか、あのとき川島さんっていいかけたよね?」
「さぁどうだったかねぇ?」
あからさまなとぼけ方をする

「優子はわたしらが思っているより優秀な部長になるで。もしかしたら歴代ナンバーワンの部長に…」
晴香は不思議な顔をしながら、あすかの話を聞く
「コンクールってただ上手いだけじゃ結果はでらへんやん?部長も同じやねん」
どうにも理解できないが、ここで質問を返したところでまともに答えるあすかでは無い事は、晴香も十分に理解している

「ということで、香織も呼んで報告会といこうじゃないかー」
「ええーまだ食べるのー」
あすかのパフェは底の方まで完全に掘り尽くされていた
「めでたい席じゃ無礼講~無礼講~」
そんなことを言いながらメニューをめくる

ピンクのマフラーをなびかせた香織が店に入ってくる
ただの3年生になった3人の最初の夜がはじまる


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