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「みえる」現実に生きる

お題 #私を構成する5つのマンガ

お題、やってみます。物心ついた頃から読んでいるマンガ。その世界観、生き方、色や線が、今の私を形作っている。その度合は本以上かもしれない。

1.私の思想ベース CLAMP 『カードキャプターさくら』

小学校中学年の木之本桜ちゃんが、父の書斎にあった魔法の本を開いてしまったことがきっかけで、あちこちに散らばった魔法のクロウカードを集める物語。

好きな漫画家と聞かれて最初に挙げるのがCLAMP先生。漫画と言われて一番最初に記憶にあるのがこの作品。まさに私の原点。何度も読み返した。さくらちゃんが好きすぎて、運動が苦手な私がローラーブレード(スケートではなかった)を始め、長かった髪を初めて短くしました。一輪車は乗れなかったけど、ローラーブレードはなんとか乗れました。アール・ヌーヴォーに心惹かれるのは、CLAMP先生の流麗なイラストのおかげに違いない。さくらちゃんの影響、偉大なり。

このマンガに登場するさくらちゃんとその周囲の人々は、いつも他者を思いやっていて、その思いやりの連なりが美しくあたたかい。さくらちゃんの世界は優しさで出来ている。まるで世の中の全ての毒を抜き去ったような優しさ。すべての関係性から毒素がマイナスされているので、そんな現実はありえないのだが、たまに帰りたくなる。

2. 「流れに身を任せよ」が刺さった 藤崎竜 『封神演義』

中国の明代の名作「封神演義」を原作にしたマンガ。崑崙山の仙人 太公望は、殷王朝を脅かす妲己およびその勢力を倒すよう命じられる。そのうちに、戦いは仙人界を二つに分かち、殷から周へと時代を変えるものへと激しさを増していく。

兄の影響で、おそらく初めて読んだジャンプマンガ。兄さんよ、なかなか良い趣味してるじゃないか、と今では思う。太公望は、飄々とした頭脳タイプで、その頭脳を人のために用いる熱い心の持ち主で、強大な敵を倒すために、次々と周囲の強者を巻き込んでいく。私が目指す理想のリーダーの一つの形でもある。ジャンプらしいメタ発言、一筋縄ではいかない個性的なキャラクターたちも魅力的だ。

この作品で最も印象深かったのは、物語の折返しを過ぎた頃、太公望がさらなるパワーアップのために、太上老君(老子)を訪ねていく場面。太上老君は、若く中性的な外見をしており、宇宙服のような「怠惰スーツ」なるものに身を包む、類まれなる面倒くさがりとして描かれている。確か初登場場面は、羊の群れの中で発見されるかと思いきや、太公望にホログラムを通じて「流れに身を任せよ」と説く。シュールなセンスよ。社会不適合者。私もどこかこの調子に影響されていて、時々自分の「なんでもしなきゃ」精神を省みる。生きるためにはまだまだ働かなくてはならないし、ここまで「無為」を貫けはしないから、老子のようには生きていけないんだけど。

3.自分を奮い立たせてくれる 岸本斉史 『NARUTO』

あらすじはさておき、NARUTOには、人生で助けられた。一度目は十代半ば。二度目は二十代後半。自分に自信がなくて、どうしようもなく辛いときに「自分を信じろ」って、活を入れてくれる作品だ。

ナルトに対しては、自分とは全然似ていないし、また憧れを抱くとも違う気がするので、「尊敬」という言葉が一番しっくりくる。ナルトみたいにはなれないけど、その仲間の一人のように、ナルトのモチベーションを見習うことくらいはできそう。仲間との関係性とか男女の云々は、ちょっと違和感を感じるところもあるのだけど、こういう価値観が上の世代や世間のマジョリティの感覚なのかも知れない、と想像する。

岸本先生がこの超大作を書き続けているうちに、昔は読者だった自分の世代が、連載終盤では、漫画やアニメを届ける側になっていたに違いない、と思うと、それだけで自分が全然関係なくても、時の流れと人の思いとを感じて、途方もなく大きなものに勇気づけられる。文化ってこうやって受け継がれるのだなあ。

4.囲碁は知らずとも引き込まれる ほったゆみ(原作)小畑健(漫画) 『ヒカルの碁』

平凡な小学生 進藤ヒカルが、平安時代の天才囲碁棋士の幽霊 藤原佐為に出会い、囲碁の世界で成長していく物語。

他のマンガが思想的に影響しているのに対して、この作品は物語としてヒカルを始めとする登場人物たちに感情移入する度合いが高かったと思う。このマンガを読むと、囲碁のルールは全然覚えられないにもかかわらず、どんどん物語に引き込まれていく。

プロ試験の緊張感や葛藤も、佐為がいなくなってしまった後のヒカルの思いも、ヒカルを追いかけ、ヒカルに追いかけられるアキラも。ドキドキしながら、時には目を潤ませながら、ページを捲っていた記憶があり、マンガの引力を思い知った作品。

5.「優しい世界セラピー」 緑川ゆき 『夏目友人帳』

生まれつき妖が視える体質の夏目貴志が、祖母レイコが遺した「友人帳」に書かれた名前を、妖たちに返していく物語。ちなみに今回挙げた5作の中で唯一連載中。私にとってこの作品は、セラピーだ。誰もが他人を思いやっている点は、CCさくらにも共通する優しい世界だ。「優しい世界セラピー」。精神的に疲れていた頃、このマンガを原作とするアニメに出会い、ひたすら見続けていたことがある。作品のテンポ感も音楽も、ここが天国なのかしら、と思うほどに穏やかだ。

大きな事件はあまり起きない。夏目が妖とも人間ともしっかり向き合い、他人のために行動することによって、他者との関係を作っていく。それで面倒に巻き込まれることはあるのだけど、どんな相手の行動にも事情があると考えて、その背景までわかってから行動しようとする姿勢が、なんだかすごくかっこいいのである。どんなに権力のある人や強い妖の前でも臆せず怒ったり意見したり出来る。夏目くんは、海外生活中に特に見習おうと思った人物。

まとめ:どれもファンタジー、優しい主人公

この5作品はどれもファンタジーで、5人とも霊感的な視えるではなくとも、普段は視えない物事の本質をどこか見たり感じたりする力が強い人たちであることに気づく。孤独感を抱いたり高慢になったり無神経な言動をしたりして、他者を思いやる心を忘れているなと改めて自省するところはある。実家の部屋の隅っこで何度も読み返し、それだけで充足していた頃が懐かしい。今でも、私の血肉となっているのでございます。

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