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ⅸスティーブ・ジョブズの誕生からアップル復活まで⑤

マンガ「彼らの足跡2」

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養父母との別れ、そして家族との再会

アップルの経営難が続く中で、またジョブズにとってはNeXTやPIXARという新しい船出の中で、ジョブズの私生活にも幾つかの大きな転機が訪れます。

養父ポール・ジョブズ、そして養母クララ・ジョブズを看取る時がやって来ました。養母クララに自分の生い立ちの事、そして何故養子をもうけようと思ったのかを訊ねます。

1946年にポールとクララは結婚、しかし9年経っても子供に恵まれず養子を取ることにした、それがジョブズだったのです。

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両親を看取ると、自分で調べていた情報と母からの情報を頼りに生みの親ジョアン・シンプソンに連絡を取り、会いに行くことを決意します。

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生母との再会は、ジョブズに妹がいることを知らせてくれました。

彼女はニューヨークで小説家をしていました。

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モナ・シンプソンはジョブズの2年後に生母ジョアン・キャロル・シーブルと父アブドゥルファタハ・ジョン・ジャンダリとの間に生まれた実妹でした。

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夫婦はジョブズを養子に出した後も交際を続け、やがて結婚。そしてモナが生まれました。しかし二人は5年後の1962年に離婚。

モナもまた父とは疎遠なまま幼少期、そして思春期を過ごしていました。

彼女は大学を卒業後の1986年、小説『ここではないどこかへ』(原題Anywhere but Here)が話題となり、人気作家入りを果たしたばかりでした。

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兄妹の過ごせなかった月日を取り戻すようにジョブズはモナに接しますが、モナは頑なに父に会いに行きたがらないジョブズを置いて、サクラメント(カリフォルニア州の州都)で暮らす父を訪ねていきます。

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父アブドゥルファタハ・ジョン・ジャンダリは驚きながらもモナの訪問を喜び、そしてモナに結婚前に養子に出した兄がいることを告げました。

モナは既に兄の存在を知っていましたが、黙っていると父はつづけてこう言いました。

「君にはサンノゼでやっていたレストランに来てもらいたかったな。とてもいい店で、かのスティーブ・ジョブズも来てくれたんだよ」

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無理なからぬことですが父は客としてレストランを訪れたジョブズを、我が子とは気づかなかったそうです。またジョブズ本人も、まさか店主が父とは知る由もありませんでした。

この経験を基にモナは1992年には続編『父を探して』(原題The Lost Father)を出版。そして1999年には母親役にスーザン・サランドンと娘役にナタリー・ポートマン主演で『anywhere but here』(ここよりどこかで*) が映画化されることになります。

*原作の邦訳(ここではないどこかへ)と映画の邦訳を何故変えたのか…

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自由奔放で破天荒な母親と、都会に憧れてお金もなく田舎を出ていく娘の物語はモナの実体験から描かれたと考えると二人の子供たちの人生になるほどという気がしてくるのですから不思議なものです。


ローレン・パウエルとの結婚、長男誕生。そして娘リサとの生活

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また1990年、ジョブズは35歳の年にカリフォルニアの名門スタンフォード大学で講師をする機会を得ました。そしてそこの学生だったローレン・パウエルと出会います。

講演会を熱心に聴くローレンにジョブズは惹かれ、講演後の懇親会をキャンセルして彼女をデートに誘いました。

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そして1991年、二人はジョブズのメンターであった禅僧乙川弘文を司会にヨセミテ国立公園で結婚式を挙げ、長男リード・ポール・ジョブズ*、長女エリン・シエナ・ジョブズ、次女イヴ・ジョブズをもうけます。

*養父ポール・ジョブズから名付けたと考えられる。スティーブ・ジョブズが養父を本当に尊敬していたことを象徴。また父が約束通りに大学へ行かせてくれたことから、進学したリード大学(Reed College)に因んでいる。

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そして妻ローレンは14歳になっていたジョブズの長女リサと家族一緒に暮らすことを提案します。多感な年ごろ、しかも父親から認知してもらえなかったリサとの関係は複雑でした。

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リサもまたジョブズが妻と子供たちに対して、自分の時と同じような態度を取るのではないかと気にしていました。

リサはハーバード大学に合格する程優秀で、周囲の人々と仲良くしていましたがジョブズとだけはどうしても合いませんでした。

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二人は一緒に暮らし始めても度々口論をして、大学に進学してからは喧嘩のたびに仕送りを止められ、リサは周りの人にお金を借りたりしながらの不安定な生活をしていました。

そしてジョブズの妹モナが小説で描く父と自分がモデルとなっている登場人物たちの姿に、多感な年頃の彼女は戸惑いを覚えたのです。


市場シェア4%、アップルコンピュータ消滅寸前

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ディズニーとの契約で多額の資金を得たPIXARを率いていたジョブズはその頃、NeXTはワークステーションとしてのハードウェア製造・販売事業は失敗。日本企業へハード事業の売却を行い、ソフトウェアの開発に専念していました。

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そしてそのソフトウェア開発ではその後の世界のソフトウェア分野における大きな潮流をつかむことに成功しており、世界初のウェブアプリケーションWebObjects(発展して今日のAPIにつながる)を提供するなどしてようやく軌道に乗り始めていました。

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そしてコンピュータ市場シェア4%というアップルコンピュータの近況を知り、世界のデータベース市場を席巻していたオラクルの創設者ラリー・エリソン(2021年フォーブスが発表する世界の億万長者第7位)もマイクロソフトに対する敵愾心を抱いており、二人でマイクロソフト帝国へ反旗を掲げる提案を受けますが、追い出された身であるジョブズの胸中は複雑でした。

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NeXTはソフトウェアの会社として着々と力をつけており、次世代OSの基幹となる潮流の只中にありました。しかし経営という点では大きく黒字というほどではなくなんとかやっているという状況でした。

そして1996年11月、アップル・コンピュータがOS開発の停滞からの脱却をはかりながらも厳しい経営状態に陥っていることを耳にするとNeXTのシステムを提案するためにアップルコンピュータのギル・アメリオCEOへ電話して、11年ぶりのアップルを訪問する事にします。向かったのは当時のアップルコンピュータ本社だったクパチーノ・キャンパス*でした。

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*1993-2017年までアップル本社、現在も研究所などを備える。緑地に囲まれている様子が大学に似ているためこう呼ばれている。

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先行して次期OS候補として名乗りを上げていたBe社のBeOSサン・マイクロシステムズSolaris、マイクロソフトのWindowsNTに割ってジョブズはNeXTのNeXTSTEPをアピールしました。

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(アメリオたち取締役会は元々、ジョブズの売り込みがなくてもNeXTも候補の一つとして検討していたともされている)

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ジョブズはプレゼンテーションを行い、NeXTの良い面だけでなく苦手とする面なども全てオープンにして取締役会の信頼を得ると、ほぼ決まりかけていたBeOSやWindowsNTからNeXTSTEPの先進性と安定性を売り込む事に成功し、コンペで逆転。

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1996年12月20日、アップルコンピュータはNeXTをなけなしの運転資金の殆どであった4億ドルで会社ごと買収する事で合意。アップルコンピュータの再起をNeXTのOSに委ねます。

そして1997年2月にNeXTの買収が完了するとジョブズは報酬0ドルでアップル・コンピュータの非常勤顧問(アドバイザー)として復帰を果たします。

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事業整理としてスカリーCEOが肝いりで開発を手掛けてきたPDA端末Newtonの開発を凍結。

MacOSのライセンス提供とMac互換機を廃止、アップルコンピュータ製のプリンタも廃止。

更に3,000人以上の従業員を解雇して事業の抜本的再建を急ぎます。

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この時のアップルコンピュータの差し迫った状況やOS開発の停滞などについては下記記事を参照。

本当に倒産寸前という危機感が伝わってくる(;・∀・)


アップル・コンピュータが今や従業員の士気も落ち、惰性で経営している会社に成り下がっている事に憤慨し、ジョブズは優秀な従業員が他企業へ流出しないようにストックオプション***の適用対象の引き下げを要求。

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***株式会社の従業員や取締役が、自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利。 まず、会社が従業員や取締役に対して、あらかじめ定められた金額(権利行使価格)で、会社の株式を取得できる権利を付与。 付与された従業員や取締役は、将来株価が上昇した任意の時点でストックオプションの権利を行使することで差益を得ることが出来る仕組み。

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この提案が取締役会で否決されると自分が辞めるか、取締役会全員が辞めるかを選べと突きつけアップルコンピュータ創設初期からの取締役でもあったマイク・マークラ(二代目CEO)を含めたほぼ全員が退陣。

ジョブズが指名したメンバーを新たな取締役に任命すると同年7月に業績を回復させていないという理由で役員を味方につけてギル・アメリオCEOを解任し、社内統治を再開。

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Windowsが既にOS市場でシェア90%近くを独占し、アップルコンピュータは今期10億4千万ドルの赤字。

ジョブズ曰く「倒産まであと90日」という危機的状態でその経営権を取り戻し、アップルコンピュータとスティーブ・ジョブズの反撃が始まります。

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>次回、最終回。

>過去の関連記事


マンガ②家族との別れと再会

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