埋めたはずの場所に何もないこと

それなりに幸せな日々を感じたとき
手元に残してしまった罪すらも
だんだん棚の奥へ行ってしまって
普段はもう見えない

「どうして?」
が沸き上がることもあるけど
それはもはやどうでも良いことで
「どうせ」
とか
「感情」
で簡単に塗り替えられるものだ

少しずつ削り取られていく
結局一度に消えて無くなったりはしなかった
削り取られることに振り向きもしないときもあれば
有りもしない裾に小さく縋りたくなったりもする

でももう正しいことがただひたすらに正しい

そんなことに気づいたら
歌の解釈が少し変わっていた

ナブナさんのメリューを聴きながら。

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貫いたのは胸のほんの一部分
赤く痛みを広げたのはほんの一瞬
想いが死んだ時の無機質な耳鳴り
聞こえないふりをした

私はあの日
ずっと乗れなかったバスに乗り込んだ
人生を進む正しい乗り物
自分の中にあった確かな輪郭が薄くなっていく
灰になっていく

無意味に染まった感情を
大事にしまい込んだつもりだった
しまい込んだことを忘れてしまった
そう思い込んでたはずなのに
最初からどこにもなかったようだ

冷たい痛みはもう失われたのに
飲み込んだ氷に突き刺されるような気がして
溶かして吐き出したくなったりもする
もう視界すら歪まないのに

死んだふりにいくら慣れても
死んでしまうことができなかった心も
いつの間にか色も温もりも
生きていたことさえ嘘だったのだろうか

思い出を眺めることにも慣れたのに
慣れた分だけ抜け落ちて
貼り付けた感情がはがれた場所にはもう何もない
あの炎が確かに熱くて苦しかったことだけは
物語のように残っているのに

正しさに揺られて
振り返った窓の向こうには
美しい夕焼けだけが映る
目を閉じて思い浮かべる君の笑顔は
もう確証のない人だった

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