【読書】「評価をしない評価制度」(榎本あつし 著)(満足度:9/10点中)


【どんな本かを一言で言うと?】

・人事評価制度において、全員に「A ,B,C」と評価して差をつけることの「不合理」「無駄」を正面から捉え、「評価」より「記録」を重視する人事評価制度を提案した本

【読もうと思った理由は?】

・多くの会社の人事評価制度を見る中で、「定めた評価基準が実際、上司が評価時に重視するポイントと違う」「定めた基準に沿って、感情に流されず、主観にとらわれず、全ての行動を把握した上で、公正な評価を下す」など、ほぼ不可能であるといつも感じている。

しかし、現在の「人事評価制度」はそれができることが前提になていることに大きな問題を感じている。

現実は、結局、最初に「直感的な評価」があって、そこから逆算で各項目の点数を鉛筆なめなめする「後づけ評価」が実態である、と感じている。

それに対するヒントになればと思い購入。

【読後の感想を一言で言うと?】

・結局、やはり、解決案として、私もずっと思っていた

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「高度成長期の日本の人事制度」的な「良い評価を得たものは一年ごとの昇給差ではなく、”より良い仕事で報いる”(出世や希望の仕事)」

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と言う形にするのが良い、というのが、この著者も言っていることだと思う。

【どんな知識・情報が身についた?】

「評価しない評価制度」のポイントを自分なりに整理すると

「(1)担う責任、(2)必要な能力、(3)期待される成果、(4)求められる勤務態度や考え方、の4つを軸とした”役割等級”(能力と職務の中間くらいの要件定義の厳密さ)を定め」

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「あまり数字目標化することにこだわりすぎず、かといって抽象的すぎることもない、本当に重要度の高い目標を設定し(数字化にこだわりすぎると、数字化しやすい目標を掲げる本末転倒が起きやすい)」

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「それを月に1度、短時間で良いのでレビューすることで、目標の陳腐化、目標の忘却化を防ぎ、目標や達成プロセスの見直しを図り」

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「年度の評価結果はしても良いが、それを使って昇給差をつける、と言うことには使わず、より重い責任の仕事、もしくはより専門性の高い仕事を任せる、と言う「より良い仕事」「より良いポジション」を与えるかどうかにいかし

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「年度の昇給、賞与に関しては会社全体の業績を反映して決定。原則、同一等級は同一昇級額(率)。賞与は月給そのまま、もしくは、等級ごとに同額でも良い」

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この辺りを意識することで現状の人事制度にも部分的に反映させられると思う。

【読後、行動のstart, stop, keep, changeへの影響は?】

この考えを反映した「毎年、毎年、個人個人に無理やり人事評価で差をつける」ということをしない人事評価制度」と言うコンセプトを、自分の人事評価制度策定のテンプレートにより濃く反映させてみる。

【メモ】

非常に優しい語り口で描かれているが、内容自体はかなり観念的、コンセプチャルであり、現在、日本で支配的な考え方である「できる限り、個人ベースでも人事評価の差をつける」に対立する考えなので、よく人事知識・経験がある人間が読まないと、非現実的、と捉えられるかもしれない。

現実には、「こう言うコンセプトもあるな」と言うことを踏まえた上で現在の人事制度に少しアレンジを加えるあたりから使っていく方が良いかなと思う。

以上

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