見出し画像

第937回「豊田英司の"今日のベトナムニュース解説"」 テト期間中の離職率を低く抑えるためのアドバイス

本日の記事:
「テト期間中の離職率を低く抑えるための専門家のアドバイス」
原題:
" An expert's guide to working in Vietnam: Keeping turnover rates low during Tet "

記事リンク:https://tuoitrenews.vn/news/city-diary/20240203/an-expert-s-guide-to-working-in-vietnam-keeping-turnover-rates-low-during-tet/78131.html


(写真:テト祝い期間中のホーチミン市を歩く外国人の様子)


【本日のポイント】

(1)ベトナム旧正月のテト期間中は新しい仕事を探し、離職率が高まる傾向がある。

(2)この問題に対して外資系企業専門の人事問題の専門家は、外国人マネージャーが「暗黙の了解」が尊ばれるベトナムのハイコンテクストなコミュニケーションスタイルを理解し適応することを提案している。

(3)離職率を下げる具体的な策として、テト前に、テト後の明確な目標を事前に示し、その目標を達成した社員が、どのような昇進やその他のインセンティブ(休暇の延長、昇給、賞与の増額)を受けられるのかを明確に示し、テト明け以降も、その会社で活躍したいという内発的なやる気を作り上げておくことが大事だ、と述べている。

=====================
【解説】

アジアゲートベトナム代表の豊田です。

さて、今日の記事について。

私がベトナムに来た2011年頃に比べれば、「テト明けに会社を辞める人の割合」は明らかに減りました。

その頃は、テト休暇が終わったら10%〜15%程度のワーカーが帰ってこない、なんていうのは当たり前、という感じでしたから。

最近は、まぁ、業種にもよりますが、本当に減りましたよね。

ただ、これが離職率全体が減ったかというとそうでもなくて、以前に比べて「年中行事化した」ともいえます。以前は転職に関する情報というのが限られていたので、テト休暇で親戚や友人たちと会うときに色々と情報交換をして、「お前、うちの会社、来いよ」とかが結構重要だったわけです。

しかし、最近は、ネット上にさまざまな転職情報が飛び交っているので、別に、テト時期以外でも、転職情報が得られますので。

まぁ、そうは言っても、テト前にボーナスをもらう習慣がある以上、その後の2月〜4月頃は1年で最も離職率が上がる時期でもあるのは間違いありません。

で、今日の記事では、ベトナムの外国企業専門の専門的スキルの向上とコーチングのコンサルタントが「テト離職を下げる方策」をアドバイスしています。

と、いっても、別に奇策があるわけではなく、外国人マネージャーがベトナムの文化、特に「暗黙の了解」的な文化に粘り強く対応した上で、テト明け後の目標への道筋や、目標達成後にどんな報酬があるのかを明確に示しましょう、という王道的な内容です。

まぁ、私も全く異論はないところ、というか、このメルマガでもずっと言い続けている内容と同じだな、と思います。

欧米の人に比べれば、日本人は、「言葉には出さないが、態度などから察する」というハイコンテキストな文化については、理解ができやすい立ち位置にはいると思いますので、しっかりとベトナム文化を学んで、これを鵜甘く適応してマネジメントしていきたいところですね。

======================
(記事の日本語訳)

ベトナムで働くための専門家ガイド: テト期間中の離職率を低く抑える

編集部注:英日バイリンガルのリアム・ランガン(25歳)は、ホーチミン市に住んで1年あまりになる。

今回は、ベターワークス・アジアのThijs van Loon氏にベトナムの労働文化について話を聞き、離職率を下げたい外国人マネージャーへのヒントを得た。

採用のゴールデン・ピリオド」として知られる1月、2月のテト(旧正月)から4月にかけての期間は、企業にとって採用を増やすのに最適な時期と考えられている。

しかし、マネージャーにとっては、せっかくのおめでたい行事が台無しになり、会社の将来が心配になる。

人事コンサルタント会社Anphabeのベトナム通信の報告によると、テトとは関係なく、2019年、ベトナムの従業員の離職率は憂慮すべきことに24%に達した。

このような問題は、ベターワークス・アジアの創設者兼ディレクターであるティース・ファン・ルーンが自身の仕事で扱っているものだ。

コンサルタント、トレーナー、コーチとして20年近い経験を持つ彼のベターワークス・アジアでの仕事は、ベトナムと東南アジアの企業に専門的スキルの向上とコーチングを提供することである。

特に、アメリカの分析・アドバイザリー会社ギャラップ社の調査により、チーム・エンゲージメントのばらつきの70パーセントはマネジャー一人で決まることが判明した後は、優れたマネジャーの価値を固く信じており、自ら効果的なリーダーになる方法を他の人々に教えることに情熱を注いでいる。

2018年にベトナムに移住して以来、彼はすでにPizza 4P's、RMIT大学、MegaMarketを顧客リストに数えている。

ティース・ファン・ルーンのトレーナーとしての歩みは、2004年、アイルランドのグーグル本社で働いていた頃に始まった。

そこでスキルを磨いた後、アップルに採用され、オランダのトレーニング責任者となった。

3年間、Thijs van Loonは、B2B、B2C、B2Eトレーニングのさまざまな外部関係者とも協力しながら、すべてのワークショップを運営した。

EMIA(ヨーロッパ、中東、インド、アフリカ)担当のトレーニング責任者が退職すると、ティース・ファン・ルーンがその役割を担った。

これらの経験は、ティース・ファン・ルーンのトレーナー、コーチとしての成長にとって極めて重要なものであった。

ベトナムに来てから、彼はマネジャーがベトナムで直面するいくつかの問題と、それを克服する最善の方法を特定した。

これらはベトナムの外国人マネジャー向けのものだが、その原則は現地の人にも適用できる。

問題その1:ベトナムの文化の違いを理解する

新しい場所に行くと、必ず何らかのカルチャーショックを受ける可能性がある。

ビジネスの場では、ある場所から次の場所へのスムーズな移行を確実にするために、文化の違いを理解することが不可欠である。

ティース・ファン・ルーンが考える極めて重要な質問は、「何が普通なのか」ということだ。

その文化が何を普通とみなし、したがって何を重要視しているかを考慮することは、その社会の心理を知る最も重要な手がかりのひとつである。

ベトナムでは、家族より優先されるものは何もなく、仕事さえも優先されないことを理解するようになった。

これを回避する方法を理解することで、この国の労働文化を成功に導くことができる。

問題その2:期待の理解と信頼の構築

期待を理解するという点で、Thijs van Loonは他の国と比べ、ベトナムではマネージャーと従業員の役割分担に違いがあると見ている。

ベトナムでは、従業員たちの間に、マネジャーは業務の細部から将来の大局に至るまですべてを知っているべきだという期待がある。

マネジャーはより多くのことに対処しなければならないという事実を考慮すると、すべてを知ることは難しい。

だからこそ、優れたマネジャーとは、とりわけ優れた権限委譲者なのだ。

しかし、ティース・ファン・ルーンが見てきたのは、マネージャーがこの期待に応えられないと、従業員がマネージャーに対する信頼を失うということだ。

信頼がどのようにして失われるのかについて話したが、ヴァン・ルーンは、プロフェッショナルな場で信頼が築かれるには2つの方法があると考えている。

一つ目は、その人のプロとしての能力に対する信頼である。

要するに、どれだけ仕事ができるかということだ。

しかし、仕事上の関係を成功させるにはそれだけでは十分ではない。

信頼は個人的な意味でも築かれなければならない。

ティース・ファン・ルーンは、ベトナムでこの種の信頼を築く一つの方法として、酒を飲むことを提案している。

社外での懇親会は、従業員と管理職がお互いをよく知ることができ、より良い絆を築くのに最適だ。

問題その3:コミュニケーションスタイルの理解

人にはさまざまなコミュニケーション・スタイルがあるということは、当たり前のことだが、私たちは職場環境においてこのことを忘れがちだ。

特に、国籍の違う人たちと接するときはそうだ。

ティース・ヴァン・ルーンは、グーグルやアップルに在籍し、常に様々な背景を持つ人々と仕事をしていたため、職場のほとんどの人々が一面的なコミュニケーションをとる傾向にあるという現実を受け入れざるを得なかった。

例えば、ヨーロッパの人々は、より直接的で具体的な、ローコンテクストなコミュニケーションスタイルをとる傾向がある。

対照的に、ベトナムの人々はハイコンテクストなコミュニケーションスタイルを好む傾向がある。

ここでは、物事は暗黙のうちに理解されなければならず、地位、人間関係、環境といった要素が会話の形成に一役買う。

一言で言えば、行間を読まなければならないということだ。

次に、外国人マネジャーもベトナム人マネジャーも、従業員との関係を改善するために使えるとヴァン・ルーンが考えるいくつかのステップを紹介しよう。

ステップ1:忍耐強くなる

最初のステップは忍耐強くなることだ。

すぐに結果が出るのは魅力的だが、信頼は時間をかけて育つものだ。だからこそティース・ファン・ルーンは、ビジネスの変化を引き出そうとする人には、最初の2~3カ月は観察だけに費やすようアドバイスしている。

この期間、ビジョンを明確にオープンにすることは構わないが、それだけにとどめるべきだ。

そうすることで、特定のチームの内と外をよりよく理解し、他のチームとの絆を深めることが可能になる。

ステップ2:コミュニケーションを始める

観察期間が終わったら、チーム内の個人とコミュニケーションを始める。

ここで重要なのは、各メンバーのスキルや能力を説明しながら、それぞれのメンバーに対する目標を具体的に示すことだ。

ただし、ベトナム人はハイコンテクストなコミュニケーションを好む傾向があるため、外国人であれば、この2つのバランスを理解することが肝要であることをお忘れなく。

ステップ3:人脈を築く

ビジネス関係を次のステップに進めるには、チームのメンバーとのつながりを築く方法を理解する必要がある。

個性を偽ろうとする人もいるかもしれないが、ティースは本物であることに勝るものはないと信じている。

これは、トレーナーとしての長年の経験と、その中で「完璧なマネジャー」と言えるような性格のタイプに出会ったことがないことから来ている。

その代わり、最高のマネージャーとは、個人の限界を理解し、それをごまかすのではなく、そのギャップを埋めるためにチームの人々に声をかける人たちだった。

「ある意味、柔軟性がすべてなのだ、と彼は言う。

ステップ4:文化について読む!

どんな分野でも、自分を高め続けるための最も効果的でありながらあまり活用されていない方法のひとつが、読書だ。

どのようなテーマでも、貴重な情報が載っている本や記事はたくさんあるので、読まないという選択は宝箱に背を向けるようなものだ。

ティイスは、エリン・マイヤーの『カルチャー・マップ』やゲルト・ホフステードの研究を、彼の文化理解に貢献し、ベトナムや海外での交流やワークショップのやり方を豊かにした本として挙げている。

では、ベトナムのテトとは何なのか?

前述したように、経営者の間では、テトになると従業員の多くが新しい仕事を探すのではないかという心配が広まっている。

旧正月は一部の国でしか祝われないが、調査によると、同じようなお祝いの時期に従業員の離職率が急上昇する傾向がある。

これには、仕事の記念日(6〜9%)、誕生日(12%)、高校の同窓会や新年の祝賀会のような大規模な社交行事(16%)などが含まれることが、ワシントンを拠点にベストプラクティスの知見を提供しているCEB社の2016年の調査で明らかになった。

従業員の離職を防ぐために、ティース・ファン・ルーンは前述のステップに加えて3つのことを行うよう管理職にアドバイスしている。

まず、1つ目はテト後の明確な目標を設定することだ。
こうすることで、祝賀行事から戻った従業員に楽しみを与えることができる。

2つ目は、従業員の内発的モチベーションを高めることだ。

ティース氏は、管理職は手を差し伸べながら、従業員が目標に固執するよう求めるべきだと考えている。

3つ目は、目標を達成した社員に対して、昇進やその他のインセンティブ(休暇の延長、昇給、賞与の増額)を与える明確な道筋をつけることだ。

テトの前にこれら3つのことを実行することで、従業員に評価されていると感じさせ、自分の仕事に目的があると思わせることができるのだ。

以上 豊田英司
=====================


「アジアゲートベトナム 」はベトナムにおける人事・ 労務のアドバイスに特化して、あらゆるご相談を承っております。
まずはお気軽にご相談ください。


(主なサービス内容)
(1) ベトナムにおける人事、労務、法務のご相談、調査、 セカンドオピニオン提供

(2) 就業規則、賃金テーブル、雇用契約書などの作成サポート

(3) 人事評価制度作成サポート

(4) ビザ・就労許可証(WP)、一時滞在許可証(TRC)の取得代行

(5) 会社設立ライセンスの新規・追加手続き代行

(6) ベトナム市場調査、ベトナムローカル企業の与信調査

(7) その他、ベトナムでの事業運営に関わる各種相談対応
============================== ==============

ASIA GATE VIETNAM CO., LTD
(ウェブサイト)
https://www.asiagate-vietnam.com/

Managing Director /代表
豊田英司(Toyoda Eiji)
TEL : +84(0)94 653 2425
Email: toyoda@asiagatevn.com

【会社所在地(Office Location)】
ハノイ本社(Hanoi Head Office)
4 Floor, B220 Vinhomes Gardenia, Ham Nghi, Cau Dien, Nam Tu Liem, Hanoi, Vietnam

ホーチミン支店(HCMC Office)
1F - Somerset Chancellor Court,
No. 21-23 - Nguyen Thi Minh Khai street, Dist. 1 Ho Chi Minh city ,Vietnam

ハイフォン出張所:(Hai Phong office)
No.12/116 Vinh Cat str, Vinh Niem ward, Le Chan Dist,Hai Phong, Vietnam

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?