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【人事note】「成果主義」を止め、ベア中心に切り替えて成長を目指す「獺祭」の旭酒造

【この記事の人事的な切り口からのポイントを一言で言うと?】

・「新卒初任給を21万円→30万円にする」ことで「考える力のある若者」を集めたい理由

・「成果主義」を止め、「ベア中心=年功的賃金運用」にしていこうと決めた理由


【人事のどんな分野の話か?】

・賃金設定理論

・人事評価制度

【読もうと思った理由は?】


・「高い初任給を支払うことで、本当に良い人材が集まるのか?」に興味があった

【読後の感想】

・高い基本給を支払えば、その企業が求める良い人材が集まるのか、についてはこれからだからわからない。しかし、間違いなく、募集の「母数」は増え、集まる学校の「偏差値」は上がるであろう。

あとは、「企業が実際に欲しい人材」をどこまで明確にして、それを採用時点で見極められる工夫を行うか、になると思う。

それをきちんとしないと、単に「高い基本給に釣られた、意識だけが高い高偏差値の学生が集まる」だけになり、地道な作業や、年功的賃金運用にそぐわず、かえって混乱をもたらす恐れもあるのかな、と思う。

・「成果主義的な人事評価制度」を止め、「年功的賃金運用」にする理由は多くの中小企業の実情を正直に吐露したものと言え、非常に参考になった。

同社は、平均で毎年約5%のベースアップを目指すという。それはつまり、時代の趨勢(すうせい)に逆らうように、年功序列型の賃金体系を維持するということを意味する。これまでに360度評価など成果報酬型の評価システムも検討したというが、前述のように酒の原料に五感を傾け、時間をかけて丁寧な酒造りを行うといった同社の考え方に成果報酬型はそぐわないと判断したそうだ。

要するに、「毎年、毎年、目に見えやすい、数字になりやすい行動だけを評価し、昇給差をつける」、と言うことが、会社が目指す人材育成の足を引っ張ると言うことであろう。


 また、評価システムを運用するにしても評価者には一定のスキルが求められ、一定のヒューマンリソースの投入が求められる。「当社の規模において、評価が目的となってしまっては本末転倒。シンプルなベースアップ型を基本にして全社一丸となって上を目指す」という判断だ。

これも、「毎年、誰もが納得するような成果を見極め、差をつける」と言うフィギアスケートの審判のような能力を身につけることも、それを実行することも「難易度が高すぎる」上に、「本当にきちんと実行できているかと言えば、、、」と言う「中小企業の本音」であろう。

 また、「獺祭は、連綿として受け継がれてきた酒造りの歴史のなかで、イノベーションを起こした結果生まれた商品。酒造りは今後もさらに進化する余地がある。成果報酬型を導入することで、失敗を恐れて各人がチャレンジしなくなっては、強みが生かせない」とも付け加える。

これも逆説的で、「成果主義」なら、「年功賃金」より、「やる気が出るはず」が、減点を恐れて「成果のハードル」を下げ「確実にできること」しかやらなくなってしまう、と言う、最近、指摘されるようになった「成果主義の弱点」を述べている。

【読後、行動のstart, stop, keep, changeへの影響は?】

・最近、ますます「毎年、なんとしてでも全ての従業員にランクづけをする」と言うことの「無理さ」についての確信が増している。

もちろん、「単一の商品やサービスについての販売数」など、「優劣」が非常にわかりやすいものについては、それを賞賛し、評価することは良いと思うが、

ー「数字化しにくい裏方業務で支えている人々の貢献をどう考えるか」

ーその個人成績差は必ず個人別に「基本給」や「賞与」に反映しないといけないのか?「特別表彰」や「特別報酬」、そして「より責任の重い仕事への推薦」など別の形で報いても良いのではないか?

こう言うことを考える必要性をますます強く感じるようになっています。


【メモ】

旭酒造のような「成功企業」が「成果主義」に対して異を唱えることには意義があると思う。

「成果主義」と言うものを

「毎年、必ず、全従業員に対して格付けをし、月収、賞与の増加に差をつけようとする評価・賃金に関する制度設計思想」

と考え、それが「適しやすい仕事内容」の見極め、また、「差の付け方」も必ずしも客観的でなければいけないのか、賞与や月給などへの反映でないといけないのか、など、「成果主義万能」ではなく柔軟に考えていくことが大切であろうと、さらに考えるようになりました。

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