SFCダブル合格


気候、寒暖、湿度の変化、そして月の遠近WAVEとさまざまあるが、こうして机に向かう時間が多いと、プールに行っても温泉に行ってもガーデニングをしても調理をしてもどこか調子がイマイチ。何かを積極的に始めようとするエネルギーに欠ける。これは明らかに、「焚き火」と「遠景」(開けた景色)、自然のエキスの不足である。
てなわけで、今晩は奥多摩古民家に宿し、夜の焚き火を楽しむことにした。『とらや』に豚トロの注文もした。防寒が心配であるが、今日あたりから春めくとのこと。あまりひどい寒さにはならないだろう。
昨日、オンラインサロン終了後、引き続きZoomで古民家主人と話していると、そこへ生徒からSFC合格の報が入った。
このモロADHDかつパラノイア、ぶっちゃけおふざけかつウルトラマイペースの将来有望君は、私立小5年のときから私の下で音読、サイコロ、作文を学んだが、通っていた私立小から附設の大学付属中には進まず、自宅近くの公立中に通うが、これは私立小よりもっと合わないで「発狂」。物凄いゲームやりまくりになり、高校は英語コースを新設した私立高に通い、リベラルアーツにも参加していたが「卒業」し、V-netではもっぱら上野先生の英語レッスンを受け続けた。
奥多摩合宿にも毎年参加していたが、自分の机の上、周りに夥しいテキストと日本語単行本、英語単行本を積み上げ置き散らして、まるで作家の書斎のような学習ぶり。論文もバリバリ書き、英語力も並大抵ではないが、何せ学校に合わない。つまらなくて死にそうである。しかし、上野先生との授業では時事問題について熱心に議論する声が聴こえてくる。その生徒がSFCに進学する。慶應は本当に上手く「人材」を拐うものだと思うが、彼が楽しんで通えるのは国内ではICUかSFCくらいしかないだろう。
夕方事務所へ出て、直接上野先生から聞くと、なんと2学部(総合政策、環境情報)の両方に合格したそうである。SFCダブル合格はこれまで見たことがない。SFCに受かる生徒は、たまたまその時のどちらかの小論文がうまく書けた者との印象であるが、彼は英語2問選択で小論文。英語は上野先生の予想通りの出題で、小論文は最早常になんでも書けるバッチリの状態だったと言う。A・Oでは落ちた。でも一般入試ではダブル合格。これはSFCのやり方が正しいことになるのか、それとも一般入試の受験者のレベルがそう高くないことを意味するのか。A・Oで合格した者が、一般入試でもダブル合格するものなのか。
日本語と英語の読み書きが最高に高まった生徒。彼は数学もOKとのことである。大学が欲しがらぬわけがない。しかしSFCのような面倒臭い一般入試を行うところはほとんどない。だいいち、まともな小論の試験を実施すれば、高大接続システム改革の失敗ではないが、生徒が集まらなくなってしまう。
大学とは、専門家の論説文を理解し、自分の考察結果を文章化し、英文テキストを読みこなし、その上でできれば高度な数学的思考が可能な能力を併せ持つことを前提にする高等教育機関である。たとえ18歳でそこに到達しなくとも、目標地点はそれである。偏差値も関係ない。細かい知識暗記も不要である。ただ自己の好奇心を元に読書し、思索し、そしてそれを文章化する能力が身につくように成長すること。それが正しい方向性であることは明らかなことだと思われる。ここに、教育の未来方向性の一端があることがわかる。
それにしても、周囲の大人のほとんどをことごとく見透かしてバカにしてしまうこの生徒の相手を最後まで引き受け、指導し続けた上野先生の高い力量に、同室者ながら深く敬意の念を表する。こんな先生はどこにもいない。またこんな生徒もどこにもいない。出逢った偶然が幸運だった。
後で連絡してヒマだったら奥多摩に来いと誘おう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?