奥多摩合宿ー5

合宿3日目時点での参加者は9名。中学生が6名小学生が3名。
中3のN君は3人兄弟の未子で元猛烈キカン坊。負けず嫌いな上に悪知恵が働くから厄介な人物である。国立大附属中進学後、ハンドボール部に所属していると言う彼は、驚くほどのマッチョに成長しており、「相撲部」と言われてもおかしくない体格であり、太腿はまるで競輪の選手のような完全な「丸太」で、生徒たちの間で冗談でどの部分を食べると美味しいかと話題になったほどである。私はこの生徒がこのように育ったことに感慨を覚える。これが奥の大テーブルに小4のY君と向かい合って座る。実はたまたまY君は「現役」のキカン坊。しかも嘘つきでアタマが良い読書家。N君にとっては過去の自分を見るようで実に面白いらしい。こういう自己観察体験は重要である。「オレもこんなんだった?」と聞くので、「馬鹿野郎、お前はもっとヒドかった」と答えると、何を想像するのか嬉しそうに笑う。そのN君は、いったい過去の彼はどこに行ったのかと思わせるほど落ち着いてどんどん課題をこなす生徒になっている。書く字もしっかりしている。予想通り、Y君はすぐに学習に飽きて、本を読み始める。全15巻あるシリーズの第14巻だとのことで、なんと偶然N君もこの本の愛読者だった。冒険ものだそうで、聞かん坊に好まれる話であるらしい。「『15少年漂流記』も読めよ。面白いぜ」。この二人の共通点は、学校教師と著しく対立することである。小学校時代のN君には脱走癖があり、担任と対立したY君は夏休み前から不登校を選択。なぜかN君の前では驚くほどおとなしい。意外と警戒心が強い性格がうかがえて面白い。この子どもたちには、バカな大人を見切って、これを完全にバカにするという共通性がある。
同じく中3のY君は、私立中在学ながら不登校中。話して一発でカタカムナ不足を見抜き、すぐに原先生と一緒に森林内基礎発声、カタカムナ音読。手応えは大きい。意外と耳が良いことに驚く。この子は中学受験のための我慢してやる勉強をやりすぎて疲れたのではないかと想像される。ややゲーム依存だが、読書は好きであるとのこと。英単語の学習法をアドバイスした。こういう人物は楽器を嗜むべきである。
次の中3のI君は、中学前半の停滞を経てここのところ成長中で、背が高い上に鼻の下に真っ黒な髭を生やしているので、「大学生」と言っても通るくらい。彼はリベラルアーツの参加者でもあるが、どう言うわけかモニョモニョものを言う癖が抜けない。大学生のH君が、「これは音読不足。カタカムナ音読をやり直した方が良い」と診断。これまた原先生が指導することになった。
次は、京都から参加の中3のダイナマイトHくん。「ダイナマイト」と言うのは、超落ち着かない上に、イライラすると暴れ出すからで、進学在籍する私立中でもこれが問題になったが、どういうわけか薬も使わず大人しくなっている。男子においては、「体験」が効率と実効性を呼ぶのだ。自分よりバカな大人が意外と多いことがわかれば悩んでもしょうがないという自覚が生まれる。この生徒も自分から課題をどんどんこなすようになっている。こうして見てくると、やはり生徒たちに問題があるのではなく、いよいよ学校の方に問題があることが浮かび上がってくると言えそうである。
中2のH君は、奇しくもダイナマイト君と同姓であるが、こちらは「アンモナイト」とでも呼ぶべき大人しい性格。真面目で誠実な性格の彼は、単なる知識吸収主体のアタマをよくしない学校教育を真面目に受け続けたためにかえって能力伸長が停滞する状態になっていたが、カタカムナ音読とサイコロ学習で回復しつつあるので、この合宿で、まるで蝉が殻を脱ぎ捨てるように本来の自分に目覚めて欲しいと願う。
このところ、不登校ばかりでなく、学校教育で知能減退し、中学に入ってから成績が伸び悩む子の相談が増えているが、はっきり言って憤懣やる方ない。言うことを聞かない「不登校」ではなくて、言うことを聞いて真面目にやって、つまらない話でも私語しないで聴き、意味のない反復ドリルも丁寧に行い、宿題や提出物をきちんと出し、礼儀正しく品行方正。どこも悪いところのない将来誠実で責任感ある大人になるはずの子どもたちの能力伸長が学校教育によって妨げられる。税金を取られた上に、子どものアタマを悪くする教育を与えられる。そんなバカなことがあるか。で、日の丸に忠誠を誓う習慣を与える。なんのため、大人しく税金納めている段階ですでに十分に従っているじゃあないか。起立礼着席前へ習え右向け右。いったいいつの時代のどのような人間を想定・対象にした教育なのであろうか。このことについては書きたいことが山とあるが、ここでは差し控えよう。バカなことでも「保守」すると言うのならこれまた格別であるが。日本のことを考えていると唱える者たちが、実はこの国の未来を破壊していることに気づかない。
今アンモナイトH君は、和室の和机を選び、問題集を次々進めている。忍耐強い性格が羨ましい。顔つきから判断すると大丈夫そうだが、アタマの中がこれまでとは違ったハタラキをしていることを祈る。
中1のT君は、リベラルアーツ参加の驚くべき読書人。縁側一番奥の席を選び学習するが、その合間に読むために持ってきた本が10冊以上足元に積んである。本のタイトルから、大人が読む本ばかり、精神年齢の異常な高さが窺われる。非常に感性鋭敏でおまけに自分の体のことなど実に繊細で注意深い。いったいどんな大人になるのか。つまらぬことに惑わされず無事に思春期を乗り切ってほしい。彼は自分の学年より上の数学学習を進めている。
以上中学生の参加者について記述した。

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