子どものアタマを良くする教育環境設定実験

あらゆる知的発達の基は「好奇心」である。
これは覆らない。
好奇心と追体験こそが学習の本質である。
追体験的な学習をする時、知能は伸長し、能力が高まる。
では、その「好奇心」とは一体どういう「もの」なのか。
外界からの刺激が五感を通じて認知される。
するとその中に特に魅かれるものが現れ、そのことに近づいてもっと知りたくなる。
そして動く。
すると、そこに「追体験」が起こる。
「追体験」は「認識」である。
そして、この体験的認知が知能を伸長させる。
だからこそわれわれは、都市環境で生活する子どもたちを自然環境に連れて行って開放し、そこで焚き火の炎を体験させ、流動する雲と水の流れを体感させ、山の上に月と星を見せ、数えきれないほどの生き物が周囲環境を共有していることを実感させてきた。
子どものアタマを良くする機会を増やす教育環境設定。
それは大人にしかできない。
その上でなければ、「学習」を知的伸長の手段として主体的に行う「知恵」は与えられない。
だがそれはコトバで伝えられることではない。
「体験」でしか伝えられない。
では、子どもが最も長時間いる家庭環境内ではどうか。
もしも、その家庭環境が子どものアタマを良くする学習に相応しい空間であれば、子どもの知能は自然に増進される。
それは一体どのようなものか?
御殿山新事務所内の環境デザイン。
これは教育環境設定コンサルタントとしての「実験」である。
それはどのような子どもでも個人でいられる「居場所」があり、また各々の場所や視界に入る物の中になんらかの好奇心的対象になって立ち止まる可能性がある物を設置することである。
絵画や芸術作品は簡単である。それは本来立ち止まって眺めるべきものである。
あるところに台があり、その上に花があり、さらにその上の壁に絵がある。
植物もとりあえず視界から捨象されにくい。
サボテン、パキラ、ユッカ、ベンジャミン。
木製基調の調度品。椅子、机。
中央ホールに背のない長椅子。
適宜なパーテーション。
改造された「個室」。
天井からは高性能の瓢箪スピーカーの流動音。
どこかに「居場所」があり、また新たに自分の次の場所を探すことも可能だ。
さて、外へ出たくてベランダに出ると、オリーブ、月桂樹、榊、金木犀、椿などの鉢植え。
縁台にガーデンテーブル。
トロ舟にメダカ、ホテイアオイ、水草。
外界からの「感受」―それに連動して「好奇心」が起こる。
以上で、約70%の教育環境設定が行われたことになる。
この上で、ホール壁前にある90センチ水槽の整備がゆっくり進む。
教師も生徒たちも、「あっ!また変わっている。次はどうなるのか?」と話し合う。
思う壺である。まんまと好奇心を起こさせることに成功している。
水槽内部のデザインは概ね終了した。
これからミスト植栽するが、その前にその上の空間に新たな芸術作品のための棚、さらにその上に「神棚」を作らなければならない。
濾過装置は買ったが、ヒーターやライトはまだである。最終的に魚が入るのにはまだ1ヶ月以上かかる。でも、ホールの背のないベンチソファーに座って、前屈みになって、電気薪ストーブの隣の、熱帯魚が泳ぐのを眺めることは、多くの子どもの癒しになることだろう。何せそれは自然環境の室内版なのだから。
好奇心の元は、それを知覚する感性。それには落ち着いた居場所環境と時間が必要だ。
リラックスしたときに起こる、自分の感性が与える「エネルギー」が好奇心を発動し、「追体験」を誘導する。
もしも子どもの「学習」が、追体験的知能の向上と結びつくものとなったならば、その可能性は無限大的になることになる。
子どものアタマをよくする教育環境設定。
これまでの教育環境観察を元に、その「実験」はさらに進められる。

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