サン=サーンス:ベートーヴェンの主題による変奏曲 Op.35

C.サン=サーンス (1835-1921) フランス
♪ベートーヴェンの主題による変奏曲 Op.35
サン=サーンスは、天文学、考古学、民族学などの分野にも精通した多彩な才能を持った人物である。この曲は、ベートーヴェン作曲ピアノ・ソナタOp.31-3の第3楽章メヌエットのトリオ部分を主題とした変奏曲である。ベートーヴェンのピアノ協奏曲やピアノ・ソナタOp.31-2「テンペスト」を彷彿する序奏に始まり、主題が奏される。第1変奏は、鍵盤を駆け回るような細かい動きを持ち、第2変奏はオクターブ進行を使った旋律、第3変奏では主題が反行型となり現れる。第4変奏は和音の刻みによるピアノの対話から成り、第5変奏はトリルとスタッカートが特徴的、第6変奏はアルペジオの掛け合いである。第7変奏は葬送行進曲風のリズムに乗って展開するが、どこか滑稽な雰囲気を持ち、第8変奏は不安定な半音の刻みの上に主題のモチーフが奏される。続いて壮大なフーガが展開された後、和音の連打による華やかなコーダによって曲は締めくくられる。サン=サーンスのピアノの名手としての一面、そしてユーモアを存分に感じることができる作品である。

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