書物1) 失敗事例から学ぶ(1) 信頼しても信用は禁物。大谷翔平の通訳の不正送金から考える、他者に頼る場合の教訓
ドジャース・大谷翔平の通訳であった水原一平氏が、違法賭博を行っていた。
賭博での負け分の支払いのため、大谷氏の口座から不正送金をしたことがメディアで取り上げている。
大谷氏は投げても打っても超一流の日本出身のベースボール大リーガーであり、説明も不要であろう。
大谷氏の大フィーバーは大谷氏の野球での活躍はもちろんのこと、水原氏の功績も大きい。
水原氏は、大谷氏の記者会見・インタビュー対応にて通訳を行い、その通訳内容が高い評価を受けていた。
他にも、試合や練習での監督やチームメイトとの円滑な意思疎通のほか、様々な仕事の通訳を任されていたことは想像に難くない。
12日、アメリカ司法省による公式発表があり水原氏が送金指示できた理由は以下の通りである。
⑴2018年、大谷氏がアメリカで年俸が振り込まれる銀行口座を開設の際、水原氏が通訳として同席し大谷口座に関する詳細を把握していた。
⑵大谷口座に紐づく電話番号やメールアドレスが無断で水原氏のものに設定され、二段階認証の電話には水原氏が大谷氏のフリをして対応していた。
⑶大谷氏は英語を話せず、大谷氏の会計士・税理士は日本語を話せないため、大谷口座に関する全情報を水原氏が実質的に支配していた。
⑷水原氏は、会計士や税理士に対し「この口座は大谷氏が“自分ひとりで管理したいから口を出さないでくれ”と言っている」と伝えた。
⑸水原氏が大谷氏から盗んだ額は、2年間で1600万ドル(24.5億円)以上である。
今回の水原氏の行った行為は、大谷氏の信頼を大きく裏切り、窃盗という犯罪は到底許されるべきではない。
しかし単に、水原氏が悪いで終わらせられるが、違う視点に立ってこの事例を検証したい。
人が不正行為に走るときには、次の3つの要素が重なった時といわれる。
動機と、機会と、合理的な理由、だ。
(不正のトライアングルと呼ばれ、アメリカの犯罪学者ドナルド・クレッシー氏が提唱した、組織内の要員が不正を起こすメカニズムを分析した理論である)
この三要素に今回の不正の内容をあてはめてみよう。
①不正を行う動機(不正を行わざるを得ないというプレッシャー)
水原氏は、ギャンブル中毒であった。
キャンブルの負け分の借金返済に迫られていた。
大きなプレッシャーがあったのは想像に難くない。
大谷氏と水原氏は11年の相棒・兄弟のような存在で、単にビジネスパートナーという感覚だけではなかった。
ギャンブルをしているそぶりを水原氏は表で見せなかったのであろうが、それぐらい仲が良くても予兆等全くなかったのであろうか?
大谷氏は、水原氏のプライベートについてどこまで情報を得ていたのであろうか?
任せる以上定期的なチェックが不足していたのではないかと考える。
身辺調査や、 外部機関への監査もできたがしなかった。
②不正を行う機会
前述で、大谷氏と水原氏の関係が深いことを説明したが、その仲だからこそ、野球以外を頼りきりだったのだろう。
水原氏に頼り切っていた大谷氏は、銀行口座開設の通訳から、資産管理を任せている会計士・税理士とのやり取りも基本任せていた。
大谷氏は水原氏を疑うことはなかったのではないか。
おそらく水原氏は、大谷氏からの信頼を確信していたこともあり、そういった体制を築いたのだ。
皮肉にも、大谷氏の水原氏への信頼は、いつでも不正できる機会を与えてしまった。
③不正を行うことに対する合理的な理由(不正行為を正当化する理由)
水原氏の年間所得は、1億を超えていたと思われる。
1億円という金額が高いか安いかは、人それぞれの価値判断であるため『自分の功績への対価不足しているという不満』であったかわからない。
『大谷氏の稼ぎから見れば影響は小さい』、そんな理由もあったかもしれない。
ただ筆者は考えは「絶対バレないから大丈夫だろう」というものだ。
自分を疑うことを知らない大谷氏。大谷氏が銀行残高をチェックしないことに目をつけ、水原氏は、今回だけ今回だけと繰り返してしまったのではないか?
ギャンブル中毒となった水原氏は、負け分を次こそは取り返すと、やめるにやめられない状況になったのではないか?
水原氏は大谷氏を侮っていたのだろうと、想像に難くない。
■もし過去に戻れるのであれば、どうすることで問題の発生をふせげたであろうか。
①水原氏の懸念される行動が無いか、管理を行う。
お金に困っていないか。 悪い関係者と関係を持っていないか。何か予兆がなかったか。
不安要素を定期的に洗い出す。
⇒①の動機はそもそも発生しなければ、水原氏はギャンブルにおぼれず、活躍し続けることができたのではないか。
事前にギャンブルをしていることを把握できれば、被害は最小で、水原氏も社会的に生き残ることができたのではないか。
②送金についてはあらゆるチェック機能を準備する。
⇒多額の金額は銀行での電子取引が主になる場合、 大谷氏以外が送金できないような仕組みを組む。
②の機会を与えていなければ、大谷氏の口座から出金されるという結果はなかったのではないか。
③大谷氏が、あなたを見ているよ、という抑止力を水原氏に態度で見せる。
⇒③大谷氏からの一定の確認行動、抑止力があれば、水原氏も不正送金にためらいを感じたのではないか。
■教訓
結局みな他人事、私は知らなかった。裏切られた。という。果たしてそれでいいのか?。
我々が学ぶべき教訓とは、「「信じる」ということは信じた結果、失敗・裏切られる覚悟も持つ」こと。
任せるということは、一定の失敗のリスクもあるわけで、信頼する相手が失敗・裏切ることも常に想定する必要がある。
裏切られても、その裏切りが実行されないような、防火壁を作り(➁)、裏切りが起こらないよう心情の草取り(①)をし、一定のプレッシャー(③)を準備することはマナーではないか?
それは、自分の日常活動でも普通に見受けられる。夫婦、家族、会社組織、、、。
どんな関係でも仕組み(ルール)を作り、コミュニケーションを密に行っていく必要で、
その積み重ねが、信用となって積み上がり、強固な関係を作れるものではないかと、筆者は考える。
大谷氏も正念場。ぜひ頑張ってほしい。
私は、ニュースから、自分の生活に役立てることが無いか、自分の深耕のためにも今後このような発信を行うつもりだ。
※今回の報道の中、気になった部分のみを抽出し、筆者の意見によるものがほとんどのため、偏った考え、認識間違いもあるかもしれないが意見の一つとして、見ていただければ幸いだ。
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