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国プロ一問一答 04_委託事業と補助事業における取得財産の考え方の違い

はじめに

国が行う事業には委託事業と補助事業(助成金)がありますが、いずれの事業においても取得した財産について厳格な管理が求められています。しかしながら、両者の管理のあり方は似て非なるものがあります。それは両者の法的性質の違いから由来するものですが、なかなか初心者にはわかりにくいところです。
今回は、それぞれの法的性質の違いを簡単に抑えたうえで、取得財産の管理のあり方の相違点について考えてみましょう。

委託事業と補助事業の法的性質の相違点

①委託事業というのは、個別契約を締結し、委託元である国が委託先の事業者に対し、特定の業務を遂行することを求める契約のことです。その業務の対価として事業者は国から報酬を受け取ることになります。これが委託費です。
この契約は、国が委託する業務が法律行為以外の業務(たとえば研究開発や実証事業など)であるため、民法上の「準委任契約」に分類されます。
準委任契約は、特定の業務の遂行が目的であり、仕事の結果や成果物に対して完成の義務を負いません。業務の結果に対して不備があったとしても、委任者は受任者に対して修正や保証を求めることができません。 したがって、公的研究開発のように期待した成果がでるか出ないか不明確なものに対して、この準委任契約の形式が採用されることが多いわけです。

したがって、本来は国が行う事業を、国の代わりに受託した事業者が実施するという意味で、究極的な事業の実施主体はあくまでも国であるわけです。そうであるがゆえに、この委託事業で取得した財産や知的財産権については原則として国に帰属することになるわけです(なお、知的財産権についてはいわゆる日本版バイドールの規程により取り扱いがことなることがあります。)

②一方、補助事業というのは、国が特定の事務、事業に対し、国家的見地から公益性があると認め、その事務事業の実施に資するため反対給付を求めることなく交付される金銭的給付ということになります。これは、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」を基礎とするものです(ただし、地方自治体が行う補助金の支出は、原則として、私法上の贈与に類するものとされます。)。
補助事業は、補助事業者が主体となって行う事業へ財政援助をするという助成的性格を有するものとされ、このため、補助事業を通じて取得した財産はあくまでも補助事業者のものとされるわけです。ここが委託事業との大きな違いです。

取得財産を管理する必要性

前述したように、委託事業と補助事業とではその法的性質が異なるにもかかわらず、取得した財産については同じく国の管理下におかれ、面倒な手続きをしなければいけないのだろうと感じるかたも多くいらっしゃるでしょう。

実は、同じ財産管理であっても、その制度の趣旨や目的とするところは大きく異なるのです。以下では両者の違いを見ていきましょう。

委託事業における取得財産の考え方

先ほど委託事業はあくまで国が主体となって行う事業だと述べました。要は、国が業者を使って事業を進めているということであり、一般的なビジネスにおいて外注業者を活用するのと同じ考え方です。このとき、外注業者が業務を遂行するにあたって取得した物品や、そこから得られたノウハウは当然外注業者のものにはならないですよね。
このように、委託事業で受託者である事業者が取得したものは原則として国のものになるわけです。この取得した財産の管理のための台帳として利用されるのが「取得財産管理台帳」と呼ばれるものです。これに取得した財産を記録し、そして該当の物品には管理票を添付して、国の財産と事業者固有の財産とを明確に区別して管理していくことになるわけです。また、台帳管理の対象となる物品の金額は法律により規定されています。

この場合の管理の方法や金額基準、手続きの基礎になるのは物品管理法及びそれぞれの省庁における物品管理省令になります。

補助事業における取得財産の考え方

補助事業の実施主体はあくまで補助事業者です。国はあくまでその事業にたいして助成、すなわち金銭的なサポートをしているにすぎません。したがって、普通に考えれば事業で取得した財産が国のものになるはずはありません。その発想は正しいです。
ではなせ、補助事業においても取得財産の管理台帳を作成させられるのでしょうか?それは、助成といえども国民の税金をもとにした資金により購入したものであるため、当該物品の保管や管理、廃棄等については慎重に取り扱うべきだから、なんです。このため、補助事業で管理対象となる財産は「処分制限財産」とよばれ、所有権は補助事業者のものであるけれども、その処分(使用、収益、処分)については一定の制限が加わるよ、という取り扱いになっているわけです。

まとめ

上述のとおり、同じ取得財産管理であっても法律や制度趣旨の違いによって、その内容も大きく異なることがわかりましたね。
この法律や制度趣旨の違いにより、台帳管理の対象に無形資産は含まれるのか、金額基準や対象範囲(消耗品としての取り扱い)について大きな差が出てくるわけです。こちらの話題はまた別の記事で詳解したいと思います。

ここまでお読みくださいましてありがとうございました。それではまた!


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